文・写真/坪井由美子(海外書き人クラブ/海外プチ移住ライター)
50代で思いきって始めたマルタでの新生活。前回の自炊編に続いて今回は外食編。ヨーロッパの他の国々の料理とは違ってあまり知られていない「マルタ料理」ですが、食い意地と探求心を燃やしてあちこち食べ歩きました。絶品ストリートフードから豪華グルメまで、マルタで出会ったおいしい名物をご紹介します。
マルタのソウルフード「パスティッチ」に夢中
マルタ生活が始まって間もない頃、近所を散歩していたらなんとも香ばしい匂いが漂ってきました。鼻をくんくんさせて行ってみると、小さなお店で焼きあがったパイが出されているところ。これがマルタのソウルフード「パスティッチ」との出会いでした。
パリッパリのパイ生地の中には優しい味わいのリコッタのペーストがたっぷり。いっぺんで大好きになった私は、それから毎日のように食べ歩くようになりました。散歩の途中や出かけた町で、ある時は豆のペースト、ある日はチキンのパイを。どこに行ってもパスティッチはそこらじゅうで売られ、朝食やおやつにスナック感覚で食べられています。そして何といっても1つ50セント(約78円)からという安さが素晴らしい! 今の時代のヨーロッパで、この値段で買えるものがどれだけあるでしょうか。
そんなわけでマルタじゅうを食べ歩き、お気に入りのお店にはバスを乗り継いでまでも通うように。詳しく書いていたらそれだけで1記事使ってしまいそうなので、今回は1店だけ紹介させてください。旅行者も行きやすい首都ヴァレッタのとっておきです。チェーン店も多いなか、ここ「Manuela」では毎日手作り。売り切れ仕舞いなので早目の来店がおすすめです。
●Manuela
住所:57 Triq Il-Merkanti, Il-Belt Valletta, Malta
ウサギ料理のフルコースを堪能
マルタでよく食べられる肉といえば、ウサギです。これまでにドイツやフランス、ベルギーなどでもうさぎのローストを食べたことがありましたが、マルタのウサギ料理は実にバラエティ豊富。色々と試してみたい! と思い、マルタで出会った人たちを誘って「ウサギを食べる会」を企画しました。会場に選んだのは、ヴァレッタ旧市街にあるレストラン「NENU」。元々はパン屋さんだったという当時の造りを活かした店内は、モダンでおしゃれな雰囲気です。
メニューにはマルタの郷土料理がひととおり揃いますが、今回はウサギしばりの会。レバー煮込みにはじまり、ウサギ肉をつめたラビオリ、骨付きウサギ肉のロースト、同店のスペシャリテであるフティーラの生地を使ったピザまで、すべてウサギが主役です。ワインやトマトをふんだんに使ったコクのあるソースは、鶏肉にも似たたんぱくな味の肉にぴったり。地元産の軽やかな赤ワインと一緒においしくいただきました。
●NENU
https://nenuthebaker.com/
新鮮なシーフードを求めて漁村マルサシュロックへ
島国マルタのグルメといえば、シーフードは欠かせません。ヴァレッタやスリーマ、サント・ジュリアンといった大きな街にもレストランが豊富にありますが、やはり新鮮な魚介類が集まるのは漁港の近く。なかでも有名なのが前回(https://serai.jp/kajin/1147458)もご紹介した漁港、マルサシュロック。港沿いにはレストランがずらりと軒を連ね、テラス席はシーフードを楽しむ人たちで大賑わい。
名物のたこ料理、フィッシュスープ「アリオッタ」、旧通貨の絵柄にも使われていたシイラ科の魚「ランプーキ」、シーフードたっぷりのパスタ、豪快な魚介類の盛り合わせ……メニューを見ながら迷う時間も楽しみです。目の前に広がる、カラフルな漁船「ルッツ」が浮かぶ真っ青な海の景色もごちそう。マルタならではの贅沢でおいしい時間です。
※1ユーロ 約155円で計算(2023年8月原稿執筆時点)
【50代でプチ移住&大人留学】
第1回 移住の準備 (https://serai.jp/kajin/1130064)
第2回 語学学校の様子(https://serai.jp/kajin/1140334)
第3回 マルタのグルメ・自炊編(https://serai.jp/kajin/1147458)
文・写真/坪井由美子
ライター&リポーター。ドイツ在住10数年を経て、世界各地でプチ移住しながら現地のライフスタイルや文化、グルメについて様々なメディアで発信中。著書『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。