文・写真/角谷剛(海外書き人クラブ/米国在住ライター)
「カリフォルニア・ロール」という食べ物をご存知でしょうか。巻き寿司に似ていますが、日本人の目には別のモノに映るかもしれません。海苔は外側ではなく、丸めたお米の中に巻き込んであります。巻き込んでいないこともあります。外側にはゴマがまぶしてあることが多いようです。
中央に入っている具の種類もまちまちです。カニカマやマグロなどが入ったり入らなかったりします。しかし、必ず入っている食品がアボカドです。カリフォルニア・ロールとは「丸めた米の中にアボカドとその他の食品が入った巻き寿司風の食べ物」と定義した方が現実に即しているかもしれません。
カリフォルニアにとってのアボカドはハワイにとってのパイナップル?
巻き寿司だけではなく、サンドウィッチ、ピザ、サラダなど、どのような形態の食べ物であっても、メニュー名に「カリフォルニア風」とあれば、そこにはアボカドが含まれているはずです。なかでも、カリフォルニアで人気のメキシコ料理にはアボカドが入っていないメニューを探す方が難しいでしょう。
似た例は他にもあります。ハワイアン・ピザにはパイナップルが必ずトッピングされているように、ハワイの果物と言えばパイナップルが連想されます。しかし、実はパイナップルの原産地は南米です。ハワイの『パイナップル王』と呼ばれる故ジェームズ・ドラモンド・ドール氏がオアフ島でパイナップル農園を始めたのは20世紀初頭になってからのことでした(*1)。
*1. ドール・プランテーション公式ウェブサイト資料ページ(日本語) https://doleplantation.com/jp/resources/
アボカドという果物も本来ならカリフォルニア州由来ではありません。原産地はメキシコなどの中南米であり、その歴史は紀元前500年頃にまで遡るそうです。カリフォルニアでは19世紀後半にメキシコ経由で栽培が始まりましたが、気候に合っていたらしく、今では州を象徴するような食物になっています。
昭和の日本人家庭には縁が遠かった果物
私がアボカドを初めて知ったのは15歳のときでした。1980年代、まだ昭和の時代に家族で日本からカリフォルニア州に引っ越したのですが、最初に住んだ借家の庭にアボカドの木が植えられていたのです。
もっとも、私たち家族はだれもそのことに気がつきませんでした。今から思うと嘘のようですが、ずっと日本に住んでいた私たちはアボカドという果物を見たことも食べたこともなかったのです。
近所に住む子どもがアボカドを取らせてほしいと頼みに来て、初めてこのぱっとしない緑色の木の実が食べられるのだと知りました。どうやら私たちの前にその家に住んでいた人たちがご近所さんに配っていたようです。
今ではアボカドは日本でも珍しくないとは思いますが、その頃の私たちにとっては未知の果物だったわけです。前述のカリフォルニア・ロールが世間で知られるようになったのも、やはり1980年代頃だったように記憶しています。
糖質制限ダイエットの強い味方
日本でも糖質制限ダイエットの人気が高まり、糖質ゼロを謳った食べ物や飲み物をよく目にするようになりました。その意味ではアボカドは理想的な果物です。
なぜなら、アボカドの栄養成分(*2)を見ると、糖質がほとんど含まれていないのです。その代わり、脂肪分、ビタミン、ミネラル、植物繊維などの多様な栄養素を豊富に含んでいます。
*2. 出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂) https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=7_07006_7
一般的に果物は糖質を多く含んでいて、糖質制限ダイエットには向いていないのですが、アボカドはほぼ唯一の例外と呼ぶことができるでしょう。
上で紹介しましたように、アボカドは色々な食べ物に混ぜることもできますが、2つに割ってスプーンですくって食べる単純な方法を私は好んでいます。
文・角谷剛
日本生まれ米国在住。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。