冬は、外の空気が乾燥している上に、部屋では暖房を使用するので、屋内外問わず乾燥を感じる季節です。そんな冬の中でも、乾燥のピークを迎えるのは1月、2月と言われています。
一般的に、冬の乾燥というと肌をイメージされる方が多いですが、乾燥の悩みは口(ドライマウス)や目(ドライアイ)など、多岐にわたります。近年では、こうした全身の複合的な乾燥を一つの症候群として捉えて「ドライシンドローム」と呼ばれています。
今回はそのドライシンドロームをテーマに、クラシエ薬品株式会社が行った実態調査(※1)の結果や、予防方法をお伝えします。
ドライシンドロームは風邪や感染症のきっかけに
ドライシンドロームは、ドライマウス、ドライアイ、ドライスキン、ドライバジャイナ(膣の乾燥)などカラダの乾燥のことで、唾液や涙といった乾燥を防ぐ外分泌線の働きが弱くなっている状態を指します。
肌、口、目、膣などの乾燥により、粘膜など本来潤っているべき部分まで乾燥すると、皮膜が薄くなるため柔軟性が失われ、粘液の分泌量が減り、乾燥の連鎖が始まってしまいます。外分泌線の働きは自律神経によって調整されているため、ストレスの多い現代社会で自律神経が乱れてしまい、その結果ドライシンドロームを引き起こすということもあります。
粘膜の乾燥は抵抗力の低下を招き、風邪や感染症のきっかけにもなるため注意が必要です。
また、空気の乾燥以外にも、スマホやパソコンによる目の酷使、睡眠不足、マスクによる口呼吸など生活習慣や、更年期による女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌低下も乾燥の原因となります。
具体的な症状
体のどこかに乾燥を感じている人は、実はさまざまな場所が乾燥しているかもしれません。ドライシンドロームの可能性もあるので、乾燥が気になっていない部位も以下の項目に当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
ドライシンドロームの認知度はわずか12.5%
感染症のきっかけにもなるドライシンドロームですが、クラシエが行なった調査では、「ドライシンドローム』の認知度はわずか12.5%でした。
肌の乾燥に続き、口、のど・目が上位 特に中高年層の乾燥が目立つ結果に
乾燥を感じる方に具体的にどの部位に乾燥を感じるか尋ねたところ、52%の方が「肌」と回答しました。次いで「口、のど」(41.5%)、「目」(33%)が続き、一部位の乾燥のみならず、乾燥の悩みは多岐にわたる様子がうかがえます。
また、乾燥症状を1つ以上感じたことがある割合を年代別で見ると、年齢を重ねるほど乾燥を実感している割合が高くなる結果となりました。60代以上は92.5%にものぼり、中高年層が特に乾燥を感じていることがわかりました。
ドライシンドロームを予防するためには
乾燥は潤いの不足といっても、ただ水分を摂取するだけでは、水分を保持する力がないため改善されません。ドライシンドロームの予防には、食品で体の内側から潤すことや、生活習慣の改善が有効です。さまざまな部位が乾燥して更なる乾燥を招く前に、体に乾燥を感じたら早めに下記のようなケアを心がけてください。
・潤いを与える食材で体の内側から潤す
β-グルカンという食物繊維の一種には、粘液の素の生成を高め、カラダの中から潤いを与えると言われています。椎茸や舞茸などのキノコ類、海藻、大麦などに多く含まれます。
・生活習慣を改善して、自律神経を整える
前述の通り、外分泌線の働きは自律神経が関係しています。寝る2時間前からはなるべく照明の光量を落とすことや、寝る直前のスマホやパソコンの使用は控えるなど意識して、副交感神経を優位な状態にしましょう。
漢方の視点からドライシンドロームを見る
漢方では、人の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つで構成されていると考えられています。この3つは、お互いに影響しあっています。大切なのは、この3つがバランス良くめぐっていることです。
ドライシンドロームは、3つの構成のうち「血」や「水」の不足が原因と考えられています。また、漢方を体質で分けた場合、陰虚(いんきょ)にあたります。陰虚は血や体液を含む、体内の血液以外の必要な水分である「水」が不足している状態を指し、潤わせて冷やす水の不足により、体のほてりを感じやすくなります。水が不足すると、特定の場所のみならず、肌や口、目といったあらゆる場所で乾燥を引き起こす要因となるので、水分を保つ「陰」そのものを補いましょう。
ドライシンドロームにおすすめの漢方薬
<乾燥肌や皮膚のかゆみに悩む方におすすめの漢方薬>
当帰飲子(とうきいんし)
「当帰飲子(とうきいんし)」は、「血(けつ)」を補給する「四物湯(しもつとう)」をベースにした処方です。加齢と共に肌の栄養が不足すると、肌は乾燥しやすくなります。白い粉をふくような乾燥肌で、お風呂に入ると特に痒くなる方に効果的です。
<コンコンと乾いたせきが出る、せきこむ方におすすめの漢方薬>
麦門冬湯(ばくもんどうとう)
「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」は、粘膜や気道を潤し、身体に栄養を届ける機能を高める働きがある処方です。加齢によって体内の水分保持量が減少すると、粘膜や気道が乾燥し、咳が出やすくなります。からぜきが続く、のどにたんがひっかかるような感じがして不快、といった症状の方におすすめの漢方薬です。
<のどの渇きを感じる方におすすめの漢方薬>
白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
「白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)」は、体の熱を冷まし、潤いを与える生薬を配合した処方です。のぼせ体質や激しい発熱によって体内の水分を失うと、口やのどの渇きを強く感じるようになります。体がほてり、咽の渇きを感じる方におすすめの漢方薬です。
※1:調査概要
○調査対象:全国の20代~70代の男女200名(有効回答数)
○調査期間:2023年1月6日 ~ 2023年1月10日
○調査方法:インターネットアンケート/クラシエ調べ(株式会社ドゥ・ハウスmyアンケートlight利用)
文/ふじのあやこ