2025年末で創業家の手を離れ、BMW社に譲渡される「アルピナ」ブランド。創業家が手がける最後のモデルであり、創業者ブルカルト・ボーフェンジーペンへのオマージュとしてリリースされた至高のグランクーペを紹介する。

文/竹井あきら

世界限定99台はすでに完売

玄人好みの高性能車「アルピナ」を生み出してきたアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限/合資会社(以下アルピナ社)が、2025年末をもって「アルピナ」の商標をBMWに譲渡するという発表があったのは2022年3月のこと。運動性能においても、工芸品のような設えにおいても、高次元にラグジュアリーなクルマを作り続けてきた家族経営のメーカーがリリースする最後のモデルが、BMWアルピナB8 GTグランクーペだ。

搭載されるV8ビ・ターボ(ツインターボ)エンジンはB5GTのものと同型だが、9 kW(13 PS)の出力向上と、50 Nmのトルクアップが図られ、最終進化型にふさわしく、アルピナの歴史の中で最も高出力で強力な最高出力466 kW(634 PS)と最大トルク850 Nmを発生する。組み合わせられるZF 8速スポーツオートマチックトランスミッションは高トルクに最適化され、0から100 km/h の加速は3.3 秒、200 km/h までわずか10.5 秒という卓越したパフォーマンスを実現しているという。

加速は200 km/hを超えても途切れることなく、「巡航最高速度」は330 km/hを誇る。「巡航最高速度」とは、ドイツのアウトバーンにおいてその速度を実⽤域とし、どこまでも快適に⾛り続けることができることを意味する。いかにもアルピナらしい、アルピナのクルマづくり哲学を反映した独自の性能表記だ。

サスペンションのセットアップも徹底的に最適化され、ステアリングレスポンスの精度向上が図られた。ステアリングモードは「COMFORT」「SPORT」「SPORT+」という3つから選択することが可能で、スポーティでダイレクトなレスポンスか、または適度に抑えの効いた穏やかなフィードバックとするかは、ドライバーのお好み次第だ。

エクステリアデザインは「形態は機能に従う」という原則に基づき、スポーティなダイナミクスとラグジュアリーカーのエレガンスを融合させた慎みのある美しさをまとう。

新たにデザインされたディフューザーをはじめとする各所にはカーボンファイバーが用いられ、グランツーリズモとしてのエレガントな印象を損なうことなくスポーティネスを強調する。21インチのアルピナ・クラシック鍛造ホイールは、アルミニウムサテン仕上げとし、ホイールセンターキャップはアルミニウムの無垢材から削り出されているという。

サイドシルにはブルカルト・ボーフェンジーペンのサインが入ったB8 GT 専用ドアシルプレートが備わる。ボディカラーは、定番の伝統色であるアルピナ・ブルー(標準)とアルピナ・グリーン(標準)に加え、5つの専用カラーでの設定も可能だ。

熟練の手作業によって仕上げられるインテリアには、4種類のバリエーションから選べる専用のフルレザーシートを装備し、高品質なメリノレザーにアルカンターラのシートセンターの組み合わせが用意される。フロントシートバックレスト上部には、ブルカルト・ボーフェンジーペンのサインが刺繍される。

さらに、アルピナ・レザー工房が提供する特別なオファーも用意され、最高級の天然なめし革「ラヴァリナ」を使用したオーダーメイドのフルレザーインテリアでカスタマイズすることも可能だ。

シルバーのアルピナ製フルアルミニウム・シフトパドルや高品質なアルカンターラ製ヘッドライナーなど専用のディテールもまた、B8 GT のラグジュアリーなキャラクターを際立たせる。

希望小売価格(10%の消費税込み車両本体価格)は、左ハンドルが34,950,000円、右ハンドルが35,400,000円。納車の際には、最上級ラヴァリナレザー製専用ウィークエンダーバッグ2個とスイスの時計宝飾店「カール F. ブヘラ」との共同開発の限定クロノグラフが付属する。

世界で99台、日本国内では30台の限定だが、2月8日現在すでに予約台数完売とのアナウンスがされている。

2023年10月12日、ブルカルト・ボーフェンジーペンは惜しまれながら87歳の生涯を閉じたが、創業60周年に当たる年に、彼へのオマージュとして送り出されたこのモデルは、創業者の情熱と哲学がアルピナ社内で変わることなく受け継がれていることを証明している。

アルピナ社は、アルピナブランドを手放すこととなった背景を「電気自動車へのシフトと世界的な規制強化、特に排出ガスやソフトウェアの検証、ドライバーをアシストする安全装置の需要といった規制強化は、私たちのような少量生産メーカーに対する高い要求とリスクを生み出しました」と説明した。つまり、大企業であるBMWに想いを託したということだろう。BMWにアルピナ社の情熱と哲学が引き継がれていく未来を願いつつ、アルピナにゆかりの深いワイン—できることならサッシカイアで、ブルカルト・ボーフェンジーペンに献杯したい。

問い合わせは、アルピナ社日本総代理店ニコル・オートモビルズまで。ALPINA CALL TEL.0120-866-250
WWW.ALPINA.CO.JP

 

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