セイコーウオッチが2024年10月25日(金)に発売する<クレドール>ブランド50周年記念の限定モデルは、日本の伝統工芸と最先端の時計技術が見事に融合した逸品です。「ゴールドフェザー U.T.D. スケルトン」と名付けられたこのモデルは、漆芸と彫金の技を現代の高級機械式時計に調和させ、日本のものづくりの真髄を体現しています。
文/土田貴史
稀有な職人技がふたつも。もたらされたのは永遠の価値
静寂の中で、職人の手が繊細に動きます。漆黒の表面に、金粉とプラチナ粉が一粒ずつ丁寧に落とされていくのです。そのすぐ脇には、極薄の金属に精緻な彫刻が見て取れます――。それは、最先端の時計技術と日本が誇る伝統工芸が融合する瞬間です。
このモデルの特筆すべき点は、クレドールの彫金工房が培ってきた技法と、加賀蒔絵の名匠・田村一舟氏による漆芸との協奏にあります。大鷲をデザインイメージとし、その羽根をモチーフにした全体のカラーリングは、見る者を魅了します。
漆黒の漆の中を舞う羽根の姿は、田村氏の卓越した技術によって描かれています。金粉とプラチナ粉の形状や大きさの違いを見極めながら、一粒ずつ丁寧に手作業でちりばめることで、羽毛の微妙なニュアンスまでもが表現されています。さらに、クレストマークには高蒔絵(※)と呼ばれる高度な技法が用いられ、立体的な美しさを醸し出しています。
※蒔絵技法のひとつで、漆で絵柄を描いて盛り上げた上に金粉を蒔き、立体的に仕上げる技。
一方、スケルトンムーブメントの両面には、美しく艶やかな羽根文様が彫金されています。「筋目」と「鏡面」という二種類の彫りを組み合わせることで、柔らかさとシャープさを共存させた独特の質感を生み出し、さらにはシルバーグレーのルテニウム仕上げにより、周囲の漆や蒔絵と見事に調和する落ち着いた光沢を放っています。
この芸術的な外観を支えているのが、高度な時計技術です。搭載されているのは、厚さわずか1.98mmの極薄メカニカルムーブメント「キャリバー6899」。この68系ムーブメントは、単なる時間計測装置としてだけでなく、工芸的価値と美しさを追求して開発されました。加えて注目すべきは、この腕時計が雫石高級時計工房で製作されていることです。ここでは高度な技能を持つ時計師たちが、部品製造から組立、調整、ケーシングまでを一貫して手掛けています。
大量生産とは無縁の、まさに一点物の芸術品として仕上げられているのです。
日本の美意識の頂点に立つ、<クレドール>ブランド
<クレドール>ブランドは、その名が示す「黄金の頂き」にふさわしく、日本の美意識と匠の技を体現してきました。1974年の誕生以来、貴金属を素材とした特選腕時計として、最高級の品質と究極の美しさを追求し続けています。
今回の50周年記念モデルは、<クレドール>の歴史と哲学の集大成と言えるでしょう。漆芸、蒔絵、彫金といった日本の伝統工芸と、世界最高峰の時計技術が融合することで、単なる時を刻む道具を超えた存在となっています。
限定12本、価格660万円(税込)という希少価値は、この時計が単なる贅沢品ではなく、日本の美と技術の結晶であることを物語っています。所有する人の人生に彩りを与えるだけでなく、日本の伝統工芸と精密技術の未来を示す道標としての役割も果たすでしょう。
時代を超えて受け継がれてきた職人の技と、絶え間ない技術革新。それらが見事に調和したこの時計は、まさに現代における日本のものづくりの真髄を体現していると言えるのではないでしょうか。