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現在日本では、シニア世代の就業者数が年々増加しています。今後さらに高齢化が進む日本において特に課題となってくるであろう、シニア世代の仕事探しやセカンドキャリア(※1)、アンコールキャリア(※2)の構築が急務になってきています。

そんな中、現在のシニア世代はどのくらい働く意欲があるのでしょうか。そこで、求人検索エンジン「Indeed(インディード)」の日本法人であるIndeed Japan株式会社が50歳~79歳の1,800名(世代、男女で均等割付各300名)を対象に実施した「シニア世代の就業」に関する意識調査をご紹介していきます。また、最後には、法政大学経営大学院の藤村博之教授より、シニア期のキャリアを考える上で大切になってくることについて伺いました。

(※1)本記事内におけるセカンドキャリアは、60代・70代以降のシニア期における働き方や仕事を指しています。
(※2)アンコールキャリアは、人生の後半のキャリアを指し、一般的に60代以降に始める仕事ともいえます。定年退職後に個人的な関心ややりがいを重視して始めることが多く、個人の情熱やスキル、経験を役立てられる仕事で、社会貢献を目的にしている場合もあります。教育関連やヘルスケア、環境、社会サービス、NPOや行政機関でのサービスに関連した仕事が多いことも特徴です。

50代〜70代の58.3%がシニア期も「働きたい」もしくは「働く必要がある」と感じている

まず始めに、50代から70代の人(1,800名)に、シニア期に働きたいかどうかを尋ねたところ、全体の58.3%が「働きたい」もしくは「働く必要がある」と回答しました。
年代別にみると、50代は75.5%と非常に高く、60代で58.3%、70代で41.0%と、年代が上がるほど働きたいという意欲は下がります。

さらに、上の質問を現在就業している人(802名)を対象にみると、シニア期も「働きたい」もしくは「働く必要がある」と回答した人は、全体の89.7%にのぼりました。
雇用形態別に確認すると、正社員等では88.4%、非正規社員等では90.6%、自営業等では90.3%と、いずれの層においても非常に大きな割合となっています。特に自営業等で「働きたいし、働く必要もある」と答えた人は53.9%と半数を超え、意欲も必要性も高い傾向が見られました。

シニア期に働く意欲や必要性を感じている人の約6割が、収入よりもやりがいや社会貢献を重視

シニア期に働くときの価値観を尋ねたところ、「収入よりもやりがいや社会貢献を重視した仕事をした方が良い」と考える人は全体の58.0%にのぼりました。働く意欲や必要性を感じている人(1,049名)においてはさらに上昇して60.2%にのぼることがわかりました。

さらに、収入よりもやりがいや社会貢献を重視した仕事への興味を年代別に見てみると50代で49.5%、60代で56.8%、70代で67.7%と、年代が上がるほど高まることもわかりました。シニア期の働き方において、やりがいや社会貢献といった観点が今後ますます重要になってくるといえそうです。

シニア期も働く意欲・必要性を感じている人の92.7%が働くことについて不安や課題を抱えている

シニア期に働くことに対して不安や課題を感じている50代から70代の人は非常に多いことが明らかとなりましたが、その働く意欲や必要性がある人の中で、何らかの不安や課題がある人の割合は92.7%にのぼりました。

不安や課題の内容を尋ねたところ、上位に挙がったものは「健康状態が維持できるか」(59.6%)、「働くための気力を維持できるか」(38.5%)、「肉体労働に耐えられるか」(28.1%)でした。精神的・肉体的な健康や意欲の維持に不安を感じる方が多いようです。

50代から70代の55.9%が、シニア期の働き方について具体的に検討・行動を始めている

50代から70代で、既にシニア期に働くことを見据えて検討や行動を開始している人は、全体の55.9%にのぼりました。

いつからシニア期の働き方の検討や行動を始めたのかを尋ねたところ、60代に入ってから検討を始めた人が33.0%という結果に。3人に1人は実際に自身がシニア期に入ってから、働き方の検討を始めていることがわかります。
結果を5歳刻みで見てみると、最も多かったのは「55歳~59歳」(31.0%)、次いで「50歳~54歳」(23.9%)、「60歳~64歳」(22.9%)となっています。

シニア期も働く意欲・必要性がある人のうち、22.6%は働き方について具体的に検討していない

一方で、シニア期も働く意欲・必要性がありながらも、その働き方について具体的に検討していない人が22.6%もいるという結果も。

その理由として最も多く挙げられたのは「年齢が理由で仕事が見つからなさそうだから」(35.9%)でした。次いで「考えてもどうなるものでもないから」(21.1%)、「考える必要がない(現在の状況で問題がない)」(16.0%)でした。約4割が自分自身の年齢を理由に、シニア期の働き方を考えることに前向きになれていないといえます。
また、年代別に見ると同様に「年齢が理由で仕事が見つからなさそうだから」が最も多く、年代が上がるにつれて割合も大きくなりました。50代のみ「まだ先のこと/今考えることでもないから」が上位3位以内に挙がりましたが、検討していない理由は概ね共通していることがうかがえます。

セカンドキャリア実践者は19.1%。セカンドキャリア実践者の10.8%は「今の仕事にやりがいを感じている」

シニア期に働くことを見据えて行動し、現在就業している人(セカンドキャリア実践者)は、全体の19.1%でした。
年代別では50代が15.3%、60代が29.8%、70代が12.0%と、セカンドキャリアを実践している人の割合は60代が最も大きい結果となりました。

また、セカンドキャリア実践者に「今の仕事にやりがいを感じているかどうか」を聞いたところ、56.8%が「そう思う」もしくは「ややそう思う」と回答しました。これは全体の10.8%にあたります。セカンドキャリア実践者の6割弱(50代から70代の約1割)が現在の仕事にやりがいを感じており、アンコールキャリアを歩んでいる傾向がうかがえます。

これからシニア期の働き方を考える人は「自分のスキル・能力を整理しておいた方が良い」

最後に、セカンドキャリア実践者に、これからシニア期の働き方を考える人へのアドバイスを聞きました。上位3位に挙がったのは「自分のスキル・能力を整理しておいた方が良い」(32.7%)、「60歳以降のお金の問題について詳しく知っておいた方が良い」(31.5%)、「早いうちから考え始めた方が良い」(28.9%)でした。
この結果から、シニア期の働き方を考える上では、まず早いうちから考え始めること、そして自分のスキル・能力を整理することが大切であるとわかりました。

調査結果に関する有識者コメント:法政大学経営大学院 藤村博之教授

シニア期のキャリアを考える上で大切になってくることは、まず考えるタイミングです。本調査では3人に1人は60歳以降に考えているという結果となりましたが、その先も働く年数が長くなってきている中で、もっと早くから考えることが望ましいでしょう。タイミングとして推奨したいのは50歳。55歳だと定年までにできることの選択肢が限られやすく、45歳だとまだ自分のこととして捉えにくいといえます。50歳のタイミングであれば、65歳まで働くと考えてもまだ15年あるため、転職も含めて選択肢を広く考えることができ、新しいことに挑戦するエネルギーもあります。一方で老いを自覚し始めたり老後に不安を感じたりするタイミングでもあるため、実感をもってこれからのキャリアプランを考えることができることから、50歳がおすすめの年齢といえます。

また、これまでの経験の棚卸しも大切です。多くの方が会社・組織の辞令で仕事内容などが決められる環境で働いているため、自分のスキルや能力、経験を整理することがないまま定年を迎えてしまいます。企業で50歳の社員を対象にした研修を担当することがありますが、自分にあまりスキルや能力がないと感じている人が非常に多いです。これまで社会人経験を積み重ねる中で、スキルや能力がないことはありません。自分のキャリアを棚卸しして、言葉で表現できるようにしておくことが大事であると考えています。例えばキャリアアドバイザーのような第三者の力を借りたり、会社外での「他流試合」で違う世界の人と議論したりすることが、自分のスキルや能力を整理して、どう活かせるのかを考えるきっかけになると思います。

そして、年齢を理由に選択肢を狭くしたり諦めたりしないでほしいと思います。シニア期を迎えるまでに、新しいことに触れること、頼まれたことを引き受けること、わからないことを調べることを習慣化させると良いかと思います。毎日の行動の中で意識し続けることで、新しいものへの抵抗感をもたなくなったり、仲間からの信頼も得られたり、新しい知識を獲得することにつながります。

仕事内容については、本調査ではシニア世代は、収入よりもやりがいや社会貢献を重視する傾向がみられました。これは世代問わず大切な要素ですが、シニア世代の特に年金などで一定の収入を確保できている人は、働く主な目的が収入ではなく、社会とのつながりの維持を求めているのではないかと考えます。自分の経験をもとに誰かの役に立ち感謝されることは、生きるために大切な自己肯定感につながります。

大切なのは雇用者の心がまえだけではありません。これからは雇用主側の意識の変化も求められていくと考えています。これからシニアになる社員に向けて、今後のキャリアのためにまず何を考え、行動すればよいのかを示すことも大切になっていくでしょう。例えば研修を通して、自分の強みや弱みを整理して、それをどのように活かせるかを考える機会を提供することもひとつの方法です。また世の中全体が人手不足の中で、体力的な問題もでてくるシニア世代であっても活躍できるような仕事やフレキシブルな働き方ができるような環境整備が求められていくと思います。

藤村 博之(ふじむら ひろゆき)
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授

京都大学助手、滋賀大学助教授、教授を経て、1997年に法政大学経営学部教授、2004年4月から現職。専門は労使関係論、人材育成論。著書に、『人材獲得競争―世界の頭脳をどう生かすか』(竹内、末廣と共著、学生社、2010年)、『新しい人事労務管理[第6版]』(共著、2019年)、『考える力を高めるキャリアデザイン入門』(編著、2021年)などがある。

「シニア世代の就業」に関する意識調査概要
調査主体:Indeed Japan株式会社
調査対象:50代~70代、各世代の男女各300名(計1,800名)※世代、男女で均等割付
調査方法:インターネット調査
調査期間:2022年9月7日~9月8日

文/ふじのあやこ

 

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