大阪、東京、パリ。3つの街で画家としての短い生涯を燃焼した佐伯祐三。
1898年に大阪で生まれた佐伯は、25歳で東京美術学校を卒業し、同年パリへ。
パリで、フォーヴィスムの画家ヴラマンクに自分の作品を見せた時、「このアカデミック(保守的・形式的)!!」と怒声を浴びたことが彼を覚醒させました。
2年間の滞在中に、ユトリロやゴッホからも影響を受け、佐伯の作品は大きな変貌を遂げます。そんな中、結核に侵されて帰国。1年半後に再びパリに戻った彼は、何かに憑かれたかのように猛烈な勢いで制作を続けましたが、結核が悪化しパリ郊外の病院で亡くなりました。享年30歳。
30年の短い生涯で生み出した作品群から、その魅力を再認識し、新たな発見へと導く展覧会が開かれています。(4月2日まで)
本展の見どころを、東京ステーションギャラリー館長の冨田章さんにうかがいました。
「30歳でパリに散った伝説の洋画家、佐伯祐三。その作品の魅力はどこにあるのでしょうか。佐伯が好んで描いたのは都市風景、特にパリの街並みでした。とはいっても、有名な建物や観光名所はほとんど描かれず、街の片隅の小さな店や、ポスターが貼り重ねられた壁、細い裏通りなど、何の変哲もない風景がその大半を占めています。
こうしたふだん人が見過ごしてしまいがちな景色を、佐伯はヴラマンクやユトリロ、ゴッホなどから受けた影響を消化した独自のスタイルで描写しました。厚塗りの絵具で石造りの壁を重厚に表現する一方で、素早く引かれた軽やかな線描が、ポスターの文字やカフェの椅子の脚、木々の梢などをいきいきと描き出しています。
本展は東京では18年ぶり、大阪でも15年ぶりとなる佐伯祐三の本格的な回顧展です。大阪、東京、パリ、それぞれの地で制作された傑作群を通して、この不世出の画家の全貌に触れることのできる得難い機会となることでしょう」
風景画だけでなく人物画や静物画にも画家の心象風景が見て取れます。ぜひ会場でご鑑賞ください。
【開催要項】
佐伯祐三 自画像としての風景
会期:2023年1月21日(土)~4月2日(日)※会期中一部展示替えあり
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東京駅丸の内北口改札前
電話:03・3212・2485
公式サイト:https://www.ejrcf.or.jp/gallery/
展覧会公式サイト:https://saeki2023.jp/
開館時間:10時~18時、金曜日は~20時(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし3月27日は開館)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
巡回:大阪中之島美術館(4月15日~6月25日)
取材・文/池田充枝