暮らしを豊かに、私らしく

日本における重要課題の一つ「高齢化」。各報道メディアでは関連ニュースなどが日々伝えられていますが、実際の高齢者(※)はどのような暮らしをしているのでしょうか。

住生活の領域に特化した日本最大級のソーシャルプラットフォーム「RoomClip」を運営するルームクリップ株式会社は、投稿写真や検索キーワードなどのデータを基に住まいや暮らしについて調査・研究をする「RoomClip住文化研究所」より、「シニアと暮らし」に関する投稿・検索データと実際の投稿の分析をまとめたレポートを発表。そのレポート結果をご報告していきます。

※国連の世界保健機関(WHO)の定義にならい、本レポートでは65歳以上の生活者を高齢者またはシニアと指します。

高齢化の現状|高齢者世帯の増加と伸び続ける寿命

まずは内閣府が発表した「令和3年版高齢社会白書 3家族と世帯」を見ていきます。令和元年時点、国内の全世帯数(5178万5千世帯)のうち、49.4%と約半分の世帯において65歳以上の方がいることがわかります。世帯構造としては「夫婦のみ」の世帯が最も多く3割以上を占め、単独世帯も合わせると6割を超える結果となっています。

さらに、高齢化が進む背景の一つとして挙げられる寿命の延伸についても、同じく内閣府の「令和4年版高齢社会白書(全体版)2 健康・福祉」によると、男女問わず、平均寿命・健康寿命ともに年々伸びていることがわかります。

次に、主な介護者の状況を見ていきましょう。要介護(要支援者)認定数も増加しています。厚生労働省による「令和2年度 介護保険事業状況報告(年報)」では、令和3年は前年比で13万人増となっていることが報告されています。

では、実際に介護を行なっているのは誰なのでしょうか? 少し前のデータになりますが、同じく厚生労働省が発表した「2019年 国民生活基礎調査の概況」によると、半数以上が同居している家族で、別居している家族も加えると、介護者の8割近くが何らかの親族であることがわかります。事業者が占めている割合は1割程度という結果です。

1日における介護時間の割合も、要介護度数の上昇に比例して増加しており、要介護3の時点で半日以上介護に費やす介護者が3割以上にのぼることがわかります。

“介護”を含むコメント率・検索率|5年で1.82倍に増加

ここからは、RoomClipのデータや投稿実例を掘り下げ、足元でどんなことが話題になっているのかを見ていきます。まず、「介護」というキーワードにおけるコメント率と検索率を調査。「コメント」とは、ユーザーが自身の投稿をアップする際に添えたコメントと、投稿に寄せられたフォロワーによるコメントの両方を含みます。上のグラフを見ると、コメント率・検索率ともに上昇傾向なのがわかります。コメント率の推移からは「介護」というキーワードに関する話題が増えていること、検索率の推移からはこれらのトピックへの関心度が高まっていることがうかがえます。

一方、いずれのキーワードにおいても、投稿率に関しては現時点で目立った動きは確認できませんでした。つまり、関連する投稿のボリュームはまだ小さい、という状況です。

インテリアと介護の両立に取り組む生活者の姿が浮き彫りに

実際に今介護に関する投稿を行なっているユーザーは、どういうことを伝えているのでしょうか。2022年9月にRoomClipで実施した「バリアフリーな暮らしの工夫」という投稿イベント(RoomClipが掲げたテーマに関する投稿を募る企画)に集まった写真に付与されたタグを場所別に計測してみました。すると、玄関の投稿がもっとも多く55.6%、次いで、バス・トイレが32.1%という結果でした。介護の場面において、立ったり座ったりの行動に補助が必要なことが多い場所と考えると、想定内の結果といえそうです。

さらに、集まった投稿に寄せられたコメントをテキストマイニングしてみると、場所以外では「引き戸」「手すり」「段差」「スロープ」や「バリアフリー」「diy」「リフォーム」というキーワードが頻出していることがわかります。実際の投稿を見てみると、普段活用している介護サポートアイテムの紹介や、どういうシチュエーションでどんな設備を利用しているかなどの詳細が伝えられています。

次に、RoomClip全体で「介護」というキーワードを含む、投稿数の多いタグに注目してみました。すると「インテリアとの両立」という視点があることがわかりました。暮らしのコミュニティにおいて「◯◯と暮らす」や「◯◯のいる(ある)暮らし」などの「暮らし系タグ」は、多くのユーザーが自らのライフスタイルを表現する手段の一つとして活用しています。中でも多くの人によってタグ付けされている「子どもと暮らす」や「猫(あるいは犬)のいる暮らし」などは「ハードルに対してポジティブに立ち向かう」という性質も含みます。「シニアと暮らし」はまだ数値的には目立っていないものの、本質としては同類のタグとして表現するユーザーが登場し始めているようです。

実際の投稿を見ても「オーダーメイド」「こだわり」「ホテルライク」といったキーワードがコメントに登場しており「暮らしの中の介護」に対して前向きに試行錯誤する様子が伺えます。

“老後”を含む検索率|5年で2.53倍に増加

「高齢者」や「介護」にまつわる投稿を調査していくと、介護目的ではなく、まだ見ぬ自身の「老後」について言及している投稿も見られました。そこで「老後」を含むコメント率と検索率を見てみると、いずれも増加傾向にあることがわかり、注目が高まっているといえそうです。

「老後」を含むキーワードにおける、投稿数の多いタグは上の通りです。冒頭でも伝えた、我が国における健康寿命が年々伸びているという事実と照らし合わせてみると、リフォームや新築などの場面で自身の老後を考慮した家づくりを行なっている生活者たちの姿が浮かび上がってきます。

アクティブシニアの関心事|子育て以前の趣味や好きなこと

ここまで、現在介護に取り組んでいたり、将来の不自由を見据えて準備をしているユーザーたちの動向をご紹介してきました。前述した様に、健康寿命が伸びている我が国において今後ボリュームアップしていくであろうと予想されるのが、健康で元気な高齢者、すなわち「アクティブシニア」たちです。

まずは、高齢者の余暇時間の実態を把握するために、総務省が公開している「令和3年 社会生活基本調査 生活時間」を見てみましょう。

毎日の活動を1次(睡眠や食事などの生理的に必要な活動)・2次(仕事・家事・育児などの義務的な活動)・3次(余暇活動)の3種類に分け、年齢別の各活動に費やす時間を表したのが上のグラフです。

60代以降、1次活動と3次活動が増え、2次活動が著しく低下しているのがわかります。60代中頃の生活時間は10〜14歳の子供とほぼ同じで、60代後半以降は子供よりも余暇活動が増えていくことがわかります。

シニアの余暇活動の内容を探る中で、「孫」との関わりがあるユーザーが多いのではと想像し、タグの付与率とコメント率を見てみました。すると、いずれも上昇傾向でした。

実際の投稿を見てみると、孫のために季節の飾りつけやDIYでおもちゃを制作している様子などが伺えました。また、子どもが独立したことで余った寝室を、孫と一緒に里帰りしたとき用のゲストルームとしてリフォームする実例も見られました。

ここで、暮らしのコミュニティ内のアクティブシニアが、どんなことに関心を寄せているかの示唆を得られるデータをご紹介します。上の表は、RoomClipに登録されているユーザーのプロフィール情報を元に、年代別「暮らし系タグ」の付与数を、10位までのランキング形式で表したものです。どの年代においても植物や花関連のタグが最も高い割合を占めていて、人気の高さを伺わせます。

次に、植物や花関連のタグは除き、それら以外に注目してみましょう。すると、30〜40代は子供や赤ちゃん関連のタグが多く、50代以上になると子供関連のタグは消え、ペット・アート・コーヒー関連のタグが上位に上がっていることがわかります。ちなみにこれらのタグは、50代以下の年代ではどれも10位以下です。

興味深いのは、「コーヒーのある暮らし」を除くと、50代以降の暮らし系タグは20代のそれとほぼ同じだということです。何か新しいことを始めるのではなく「これまで子育てなどで中断してきた、趣味や好きなことを再開する」ことが、充実したアクティブシニアの暮らしを送るためのカギなのかもしれません。

文/ふじのあやこ

 

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