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「鉄分」といえば貧血対策をイメージしますが、大正製薬が発表した研究結果によると、鉄分が肌の「糖化」を抑制するということがわかりました。鉄分が肌に良い影響を及ぼすとは女性にとって朗報です。

コラーゲンが糖化すると、肌のハリが失われ、肌が黄色く見えてしまう

鉄分は私たちの体内に存在する微量元素であり、酸素の運搬等を始めとした多岐にわたる重要な生物学的役割を果たしていることが知られています。

一方、「糖化」はタンパク質を構成するアミノ酸と糖とが相互作用することよって色が褐変し、その構造や機能に悪影響を及ぼす反応のことを言います。

糖化は私たちの体内においてストレスや老化等により増加し、糖化反応により変性したタンパク質(終末糖化産物質:AGE)は動脈硬化や骨質低下など私たちの健康に様々な悪影響を及ぼすことが知られています。また、肌において真皮を構成するタンパク質であるコラーゲンが糖化することで、肌の弾力(ハリ)が失われたり、黄色く見えたりすること(図1参照)から、糖化を抑制することは肌にとって重要です。

図 1. コラーゲンの糖化
コラーゲンの糖化が起こると、コラーゲン繊維の間に糖化による異常な橋渡し構造
が作られることにより、劣化して柔軟性が失われて固くなることで肌のハリが失わ
れたり、肌が黄色く見えたりします。

鉄が肌の糖化を抑制する

コラーゲンや肌の細胞を用いて、「肌の糖化」に対する鉄分の有用性について検討された結果、次のことがわかりました。

真皮を構成するタンパク質であるコラーゲンに対し、糖化促進剤であるグリセルアルデヒド溶液を添加することにより糖化反応が認められました(図 2:Control 群)。これに対し、鉄剤として用いられるクエン酸鉄アンモニウムを添加することにより、コラーゲンの糖化反応が濃度依存的に(低濃度:0.08%、中濃度:0.4%、高濃度:2%)抑制されることが見出されました(図 2:クエン酸鉄アンモニウム群)。つまり、鉄が肌において糖化を抑制する可能性が明らかになったのです。


図 2 鉄分濃度と糖化反応の関係

鉄が線維芽細胞における糖化産物の生成を抑制

肌の真皮でコラーゲンを産生する線維芽細胞において、鉄の糖化反応に対する影響はどうでしょうか。

線維芽細胞に鉄と結合することによりその働きを妨害する薬剤(鉄キレート剤)を添加し、鉄欠乏状態を模した条件にしたところ、細胞増殖が抑制され(図3 (a):鉄欠乏群)、AGEの産生が促進される(図3 (b):鉄欠乏群)ことが見出されました。

これに対し、鉄剤として用いられるクエン酸鉄アンモニウムを添加して不足した分と同じ量の鉄を補充することで、鉄キレート剤による細胞増殖の抑制とAGE産生の促進の両方から回復することが見出され(図3 (a) 鉄補充群、図3 (b) 鉄補充群)、コラーゲンを産生する繊維芽細胞において、鉄が充足した環境下では、細胞が活性化し糖化は抑制されることが示唆されました。

図 3. 線維芽細胞における鉄の細胞増殖率及び AGE 産生率に対する影響
線維芽細胞に鉄キレート剤を添加して鉄欠乏を模した条件にし、それに対し、鉄の
補充をおこなった。
(a) 細胞増殖率の比較(鉄を補充すると細胞増殖の低下を抑制)
(b) AGE 産生率の比較(鉄を補充すると AGE 産生を抑制)

まとめ

鉄がコラーゲンや肌の線維芽細胞において糖化を抑制することが明らかとなりました。
貧血対策だけでなく、肌にも良い効果が期待できる鉄分。健康のためにも、美容のためにも、鉄分を積極的に摂っていきたいものです。

 

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