新国立劇場「ドン・ジョヴァンニ」 2022年公演より
撮影:堀田力丸

今年1月に生誕270周年を迎えたモーツァルト(1756年1月27日ザルツブルク生まれ)。その神童ぶりは広く知られるところで、オペラとミサ曲の作曲は12歳のときからだとか。時代を超えて人々に愛され続けるモーツァルトのオペラの中でもとびきりの人気作である『ドン・ジョヴァンニ』が、3月5日から新国立劇場オペラパレスで上演されます。

同劇場では2022年12月以来の上演とあって、「待ってました!」というモーツァルト・ファンも多いはず。主要キャストにはイタリア注目の若手モーツァルト歌いが勢揃いということで、オペラ好きはもとより、オペラ初心者の方々にとっても、イタリア・オペラの“旬”を体感できる絶好の機会にもなるでしょう。

スリリングな幕開けから衝撃的な最後まで目を離すことができないストーリー展開

主人公ドン・ジョヴァンニは、若い貴族で無類の色男。女性を見たら誘惑せずにはいられません。ある明け方も騎士長の箱入り娘ドンナ・アンナを目当てに邸宅に忍び込みます。ところが、アンナの叫び声を聞いて駆け付けた騎士長と決闘をすることになり、刺殺してしまいます。ジョヴァンニは従者のレポレッロと共に逃走しますが、その途中にも、かつて捨てた女ドンナ・エルヴィーラに迫られたり、村娘ツェルリーナを口説いたりと、放蕩の限りを尽くしていきます。

新国立劇場「ドン・ジョヴァンニ」 2022年公演より
撮影:堀田力丸
新国立劇場「ドン・ジョヴァンニ」 2022年公演より
撮影:堀田力丸

逃避行の末たどり着いた先は、騎士長が眠る墓地。そこにある騎士長の石像が突然ジョヴァンニに向かって口を開き、悔い改めるようにうながします。従者のレポレッロは震え上がりますが、ジョヴァンニは動ぜず、不敵にも騎士長の石像を晩餐に招きます。

その夜、屋敷で晩餐をとるジョヴァンニのもとに石像が現れ、悔悛しない彼を地獄の深淵へと引きずり込んでいく‥……。ジョヴァンニが姿を消した後、登場人物たちが勢揃いして、悪者の慣れの果てはこのようになると歌い上げ、幕となります。

新国立劇場「ドン・ジョヴァンニ」 2022年公演より
撮影:堀田力丸

贔屓にしたくなる歌手との出会いがあるかもしれない

地獄落ちの圧巻のクライマックスに到るまでストーリーは疾走感にあふれていますが、それを彩る数々の美しいアリアがオペラとしての聴きどころ。心を揺さぶられる最高のモーツァルト歌いが揃うキャスティングも話題です。

タイトルロールのドン・ジョヴァンニを演じるのは、モーツァルトを得意とする世界的バリトン、ヴィート・プリアンテ。ドンナ・アンナには圧倒的な美声で観客を魅了するスター・ソプラノのイリーナ・ルング。

ヴィート・プリアンテ。
イリーナ・ルング。

従者レポレッロは美声の若手バス、フランチェスコ・レオーネ。ドンナ・エルヴィーラはイタリアで大躍進中のソプラノ、サラ・コルトレツィス。アンナの許嫁のドン・オッターヴィオには、高音が絶賛される若手テノール、デイヴ・モナコが扮します。

フランチェスコ・レオーネ。
サラ・コルトレツィス。
デイヴ・モナコ。

 指揮は、国内外で数多くのオーケストラと共演しクラシック音楽界を牽引するマエストロ、飯森範親。イタリア注目の若手歌手と共に繰り広げられる極上のモーツァルトに、大きな期待が寄せられています。

「ドン・ジョバンニ」と伝説のプレイボーイの「ドン・ファン」、そして実存した稀代の色男「カサノヴァ」

『ドン・ジョバンニ』の初演は1787年のプラハでした。17世紀のスペインで広く流布していたドンファン(Don Juan)伝説を元に、詩人ロレンツォ・ダ・ポンテがイタリア語で台本を書いています。ちなみに、スペイン語でのドン・ファンがイタリア語ではドン・ジョヴァンニという呼び名に。好色奔放なプレイボーイの代名詞となっている人物と同じなのです。

 ところで、ドン・ファンと聞くと「紀州のドン・ファン」を思いうかべる方もいるでしょう。事件が話題になった2018年当時にはテレビのワイドショーの記者から新国立劇場に問い合わせがあったそうです。「ドン・ファン伝説とは何か」「ドン・ジョヴァンニとは何者か教えて欲しい」と(笑)……。さて、ドン・ジョバンニの舞台に話をもどしましょう。

演出はドイツ出身のグリシャ・アサガロフ。新国立劇場では『カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師』や『イドメネオ』などを手がけ、2008年に新演出の『ドン・ジョヴァンニ』を発表。大きな話題となりました。今回は、同じプロダクトによる6度目の舞台となります。

グリシャ・アサガロフ演出による『ドン・ジョヴァンニ』には、ドンファンとは別の、もうひとりの稀代の色男の存在が秘められています。それが18世紀に実存したジャコモ・カサノヴァです。

アサガロフ氏によれば、「台本を書いたダ・ポンテは当時、カサノヴァと親交があったと思われます。そして、彼が描いたドン・ジョヴァンニとカサノヴァの人物像には、多くの共通点があると私は考えています。それゆえ、今回のオペラの舞台をスペインから、カサノヴァの生まれ育った街、ヴェネツィアに移しています」(※)とのこと。それに伴って時代設定をカサノヴァのいた18世紀末に合わせて衣裳や舞台美術も美しく優雅なものになっています。それも見どころのひとつです。

※新国立劇場2022ー2023シーズンオペラ『ドン・ジョヴァンニ』公式パンフレットより

グリシャ・アサガロフ。
新国立劇場「ドン・ジョヴァンニ」 2022年公演より
撮影:堀田力丸

オペラは日本語で歌劇と訳されますが、音楽を軸として、ドラマ、舞台芸術、衣裳、照明など、ありとあらゆる芸術の要素が集結した総合舞台芸術です。さまざまな要素から楽しめる『ドン・ジョヴァンニ』にはオペラの醍醐味が凝縮されています。ぜひとも会場で堪能したいものです。

新国立劇場 2025/2026 シーズンオペラ
モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』[全2幕/イタリア語上演/日本語及び英語字幕付]
公演日程 2026年3月5日(木)〜3月12日(木)
■新国立劇場オペラサイト
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/dongiovanni/
■問い合わせ 電話:03・5352・9999(ボックスオフィス)

取材 堀けいこ

 

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