
マクラーレンが日本市場だけのために、22台限定でリリースしたモデル「マクラーレンGTS Signature Collection」。特別なカラーコーディネートに加え、多くのビスポークデザインを採用したこのモデルは、マクラーレンの本拠地である「マクラーレンテクノロジーセンター」の設計コンセプトとデザインから着想を得ているという。
文/竹井あきら
その本質はバランスと調和
マクラーレンは、F1で鍛え上げられた空力技術やカーボンモノコックを採用するスーパースポーツメーカーだ。彼らが送り出すラインナップの多くはサーキットが主戦場だが、そんな中でいわば普段使いできる稀有なモデルが「GTS」。最高出力635PSを発生するハイパワーな4ℓV8ツインターボエンジンを搭載し、圧倒的な運動性能を誇るスーパースポーツでありながら、キャディバッグが積める荷室と快適な乗り心地を持つ高性能グランドツアラーとして高い支持を得ている。
そのGTSをベースに、日本市場のために仕立てられた22台限定の特別モデル「GTS Signature Collection」が用意された。
マクラーレンの国別販売台数では2024年に世界2位を記録するなど、日本は世界的に見てもスーパースポーツを愛するお国柄だそう。その愛に応えて用意された限定車は、英国ウォーキングにあるマクラーレンの本拠地「マクラーレンテクノロジーセンター(MTC)」をテーマにしたビスポークモデルだ。

2004年に完成したMTCは、映画『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』などのロケ地としても使用されているので、近未来的な外観に見覚えがあるかもしれない。設計は、アップルの社屋「アップル・パーク」やロンドン市庁舎「シティ・ホール」、近くは東京・御茶ノ水のセンチュリータワーなどを手掛けたマンチェスター出身の世界的建築家、ノーマン・フォスター卿によるもの。建物と人工湖が陰陽を描くように配置された独特のデザインは、「バランス」と「調和」を表している。
同時に、人工湖の大量の水は熱交換器を介して社屋のエアコンディショニングや風洞実験が発する大量の熱の放出に寄与するなど、デザインと機能性を兼ね備えている。これは「すべてのデザインは意味と機能を持つ」というマクラーレンの思想を色濃く反映するものだ。

GTS Signature Collection は、MTC に込められたユニークな設計概念と、マクラーレンのヒストリーから得たインスピレーションを反映しているという。なるほど、パフォーマンスと日常性を調和させたGTSは、「バランス」と「調和」を表現するにはうってつけのベースモデルといえるだろう。
GTS Signature Collectionには、「ホーソーン」「パラゴン」「ロトンダ」「リフレクション」という4つのテーマが用意される。エクステリアは意図的に控え目な仕立てとしながら、ボディカラーはこの限定モデルのために開発されたものだ。

「ホーソーン」は、MTCを囲む自然の象徴であるサンザシの木から名を取り、深みのあるグリーンメタリック。サテン仕上げの GT シルバー10 スポークタービン鍛造アロイホイールとグラファイトグレーのブレーキキャリパーを組み合わせ、インテリアには特注のアーモンドホワイトセミアニリンレザーを採用している。
MTC建設時のプロジェクト名を冠した「パラゴン」は、MTCブルバードに敷き詰められたタイルの煌めきをメタリックフレークで表現したブラックカラー。サテン仕上げのGTシルバータービン鍛造ホイールとグラファイトグレーのキャリパーを組み合わせ、インテリアはアーモンドホワイトセミアニリンレザーとすることで、光と影のコントラストを表現している。

「ロトンダ」は、地下へと続く白い廊下と円形のエントランス(ロトンダ)をテーマにしたオフホワイトの佇まいが印象的だ。ダークパラジウム仕上げのタービンホイールとグラファイトグレーのキャリパーで建物内部のグレーのタイルを表現し、インテリアはトーナルステッチを施したスコリアグレーセミアニリンレザーを組み合わせ光と影の調和を表現している。

そして「リフレクション」は、シルバーメタリックフレークを含む独特の下地を仕込んだグリーンで、人工湖の水面に輝く陽光が建物のガラスファサードに反射する様を再現。ホイールにはダークパラジウム仕上げを採用し、インテリアは、スコリアグレーセミアニリンレザーのシートにトーナルステッチを施した上質な仕立てとした。

いずれもミラーハウジングにはMTCの設計図をモチーフにした繊細なパターンを配し、ヘッドレストには、すべてのマクラーレンモデルのインフォテイメントシステムのホームボタンとしても採用される “陰陽の円”をモダンに解釈したMTCロゴを刺繍。助手席前のフェイシアプレートには、MTCの側面シルエットがバックライトによって浮かび上がる。そしてドア内張のフェイシアプレートには、設計図面をトーナルステッチで縫い込むという手の込んだ仕様となっている。

GTS Signature Collectionは、ただ高性能であるだけでなく、背景にある思想やデザインの深みを味わえる人にこそふさわしい。そんな特別なモデルを託すだけ、日本の自動車文化は成熟しているとマクラーレンが受け止めているのだとしたら、なんとも誇らしいではないか。
マクラーレン・オートモーティブ
オフィシャルウェブサイト:https://cars.mclaren.com/jp-ja
オフィシャルフェイスブック:https://www.facebook.com/mclarenautomotivejpn/
オフィシャルインスタグラム:https://www.instagram.com/mclarenautojapan/
オフィシャルTikTok : https://www.tiktok.com/@mclarenautojapan
マクラーレンGTS試乗記:https://serai.jp/premium/1215079





