見た目もスッキリして、掃除もしやすいIHヒーター。直火を使わないので安全性も高く、最近は炊飯などのオートメニューまであってとても便利です。上手に使いこなしている人がいる一方、見た目では火加減がわかりにくい、強火を使った料理ができない、ガスコンロの時はおいしく作れた料理がうまく作れないなど、悩みを抱えている人も多くいます。
20年以上にわたってIHヒーターを使用し、商品開発にも携わってきた料理家の脇雅世さんは「IHとガスでは料理のレシピが変わります」と言います。ガスコンロとIHヒーターではそもそも加熱の仕組みが違うからです。その仕組みを知らずにガスコンロと同じように調理してもおいしくできないのは当たり前なのです。
今回は、脇雅世さんの著書でIHヒーターのための料理本『IHクッキング・レシピ』から、定番の焼き餃子、炒飯のレシピをご紹介。火加減や調味のコツなどもご紹介します。
文/脇雅世
焼き餃子
炎がなくても、焼き餃子はおいしく、きれいに焼けます。IHならではの安定の温度設定に、ちょっとした調理テクニックで補います。
【材料】(25個分)
豚ひき肉 150g
キャベツ 150g(2~3枚)
塩 小さじ1/2
にら 1/2束(50g)
ねぎ 15cm長さ(25g)
a 生姜(すりおろし) 1かけ分
aにんにく(すりおろし) 1/2かけ分
a味噌 大さじ1/2
a塩 小さじ1/4
ごま油 大さじ1/2
餃子の皮 25枚
油 大さじ1~2
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25cmフライパン
【作り方】
餃子を作る
1.キャベツはみじん切りにし、塩を加えてもみ、しんなりしたら水気を軽く絞る。にらとねぎは細かく切る。
2.ボウルに豚ひき肉、aを入れて、手でよく混ぜる。ごま油、1を加えてよく混ぜる。
3.餃子の皮の中央に25等分にした具をのせ、皮の縁2/3に水をつけてこの部分にひだを寄せながら残り1/3の部分にはりつける。
IH調理(フライパンの位置を変えながら焼き色が同じになるように焼く)
4.フライパンの底にまわるくらいの水を入れ、蓋をして中火強にかける。1分ほど沸騰したら湯を捨て水気をサッと拭いて大さじ1と1/2の油をひき、餃子を並べる。湯を沸かすことでフライパン全体にまんべんなく予熱をかけるのが餃子にむらなく焼き色をつけたい時のテクニック。
5.中火で、焼き色がつくようにフライパンの位置を変えながら焼く。リング内の中心部と縁部分とでは火力が異なるので、焼き色を均等にするため動かしましょう。
6.全体に焼き色がついたら水70mlを加え、蓋をして中火強で、3~ 4分蒸し焼きにする。
7.蓋をはずし、残りの油を足し、完全に水分が飛ぶまで焼き、器に盛る。盛る時は、フライパンに皿をかぶせて上下を返して、フライパンを取り除く。失敗のないように皿をかぶせる前にフライパンを前後左右にゆすって餃子がフライパンに貼りついていないかを確認しましょう。
炒飯
IHは強い火力で一気に炒められるからシャキッと仕上がります。フライパンを振らなくてもおいしくできますよ。
【材料】(2人分)
ねぎ 1/3本(30g)
卵 2個
チャーシュー 80g
油(*) 大さじ3
ご飯 400g
塩 小さじ2/3
こしょう 少々
醤油 小さじ1
(*)油はピーナッツ油、太白ごま油などがおすすめ
・
28cm中華鍋
【作り方】
下ごしらえ
1.ねぎはみじん切りにする。卵は割りほぐす。チャーシューは1cmの角切りにする。
IH調理(鍋で具材を炒め、ご飯を入れてシリコンべら2本で混ぜ合わせる)
2.鍋に油を入れて中火で予熱をかける。温まったら卵を流し入れ、半熟になるようにシリコンべらなどで手早く大きく混ぜる。
3.2にご飯、ねぎ、チャーシューを加え強火で炒める。シリコンべら2本を使ってご飯をほぐしながら持ち上げるように混ぜ、塩、こしょうを加えて炒め合わせる。炒飯は弱火でゆっくり炒めるとご飯が粘ってくるので、強めの火加減で一気に仕上げるといいですが、混ぜる速度と火加減の具合で焦げるようなら温度を少し下げる必要があります。
4.ご飯がパラパラになるまで炒めたら、中火強にして鍋中央に底が見える空間を作り、そこに醤油を入れる。醤油が沸き立ち、よい香りがしてきたら全体によく混ぜ合わせて、器に盛る。IHではリング中央が一番火力が強いので、醤油を仕上げに入れる時は鍋中央を空けて鍋底に注いでジュッとさせ香ばしさを加えます。IHは炎で手が熱くならないので鍋の上でも作業しやすいのも特徴です。
今回は、鍋底がフラットなIH用中華鍋を使用しましたが、深さのある大型フライパンでも可能です。IH調理では鍋を上下に振ったりする炒め方は難しいです( IHヒーターから鍋底が離れると通電しないため)。そこで鍋をIHリングの上に置いたまま、へら2本を使ってご飯を持ち上げるように混ぜながら炒め合わせました。へらは持ち上げた時ご飯の粒がつぶれない耐熱性シリコンべら(スパチュラ)がおすすめです。
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脇雅世(わき・まさよ)
料理家。東京生まれ。1977年に渡仏し、ル・コルドン・ブルーやマキシム・ド・パリなどで学ぶ。1981年より10年間、24時間耐久カー・レース「ル・マン」にマツダ・レーシングチームの料理長として参加。1984年に帰国、服部栄養専門学校国際部ディレクターに。1991年より「脇雅世料理教室」を主宰。雑誌やテレビなどのメディアで和洋中、幅広いレシピを紹介する一方、IHクッキングヒーターや低温調理器の使いこなしを分かりやすく提案し、家庭料理にも調理科学に基づく考え方の必要性を提唱する。そのバックボーンからIH用調理器具を貝印株式会社と共同開発し、2008年よりo.e.c.シリーズを展開している。2014年、フランス農事功労章を受章。著書多数。近著に『いちばん親切でおいしい 低温調理器レシピ』(世界文化社)がある。
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『IHクッキング・レシピ』(脇雅世 著)
世界文化社