3月28日、高輪ゲートウェイ駅直結の「TAKANAWA GATEWAY CITY」に、新たな文化創造発信拠点となるミュージアム「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」がオープンしました。2026年に開館する文化施設としては間違いなく最大級となる注目のグランドオープン。そこでサライ.jpでは、まずはこの施設そのものの概要と魅力を紹介します。展示室や劇場だけでなく、畳の空間、ラボ、屋上庭園、足湯、カフェやレストランまでを含んだ全体が一つの“文化体験”として設計されており、従来のミュージアムのイメージを軽やかに更新する施設でした。

高輪ゲートウェイ駅側から見たMoN Takanawaの外観

「門」と「問」を重ねた、MoN Takanawaという名前

MoN Takanawaの「MoN」は、「Museum of Narratives」の頭文字です。ただしそれだけではありません。運営を担う一般財団法人 JR東日本文化創造財団の説明によれば、ここには新たな世界への「門」、そして未来を考えるための「問(問い)」という二つの意味が込められています。高輪ゲートウェイ駅の“ゲートウェイ”という言葉とも響き合いながら、訪れた人が新しい発見や問いと出会う場所でありたい、という意思表示になっているのです。

さらに館名末尾につけられた「Narratives」というキーワードも要注目です。日本人にはやや聞き慣れないこの言葉には、ものの背景や、人の営みがどう変化していくかという“物語の流れ”を重視したい、という考え方が託されています。作品や資料を静的に並べるのではなく、それらが生まれ、受け継がれ、更新されていく時間の流れまで含めて体験してほしい、そんな願いが込められているようです。

高輪ゲートウェイシティのなかで、文化面の核を担う施設

巨大なビルに挟まれた、ひときわ低層で個性的なかたちの建物がMoN Takanawa。高輪ゲートウェイ駅から直結。2Fデッキを伝って濡れずに入館することができる

MoN Takanawaは、高輪ゲートウェイシティの文化的中核を担う施設として整備されました。高輪ゲートウェイシティ全体は、オフィス、商業、レジデンス、コンベンション、先端的なサービス実験などを含む複合開発ですが、そのなかでMoNは、街に文化的な奥行きを与える役割を担っています。

江戸時代には海辺の玄関口であり、日本初の鉄道が走った土地でもある高輪は、交流と技術革新の記憶を宿した場所でもあります。そうした土地の履歴をふまえ、ここでは過去と未来、都市と自然、伝統とテクノロジー、展覧会とパフォーマンスといった、通常は別々に扱われがちな領域を接続することが目指されています。

隈研吾氏による建築が体現する「文化は螺旋で進む」という思想

Photo: Yasuyuki TAKAKI

この施設を語るうえで欠かせないのが、隈研吾建築都市設計事務所による外装デザインです。木をふんだんに用いたファサードは、ゆるやかな螺旋を描きながら大地から空へ立ち上がっていくような印象を与えます。文化とは直線的に積み重なるものではなく、過去・現在・未来が重なり合いながら続いていく“スパイラル”だと捉え、その考え方を、建築、ブランド、コンテンツのすべてに一貫させているという説明が印象的でした。

建物の内部中央は4Fまで巨大な吹き抜け構造となっている。階段やスロープが螺旋状につながっている構造がとても面白い

また、渦巻状の外装に負けず劣らず、内部空間もまた螺旋や回転を強くイメージさせる立体回廊構造となっており、各階層を歩いて回るだけでも、ちょっとした探検気分が味わえました。建物の内と外がシームレスにつながり、植栽が美しい外周のスロープを散策したり、建物の内側で階段を昇り降りしたり、自在に動き回れる楽しさは、この建物ならではの魅力です。

Box300、Box1000、Box1500――用途を固定しない3つの主要空間

MoN Takanawaの特徴の一つは、主要空間が「展示室」や「ホール」といった一般的な名称ではなく、「Box300」「Box1000」「Box1500」と呼ばれていることです。名前に平米数を組み込み、用途を過度に限定せず「箱」とシンプルな呼称にすることで、幅広い用途や企画を柔軟に受け入れる場所となりそうです。

まず、2階のBox300は、高輪ゲートウェイ駅からつながるエントランス脇にある実験空間です。壁が開閉し、企業や研究機関、アーティストによる共創的なプログラムに対応できる設計で、開館時には「ひらけ モン!展」がスタート。建築やロゴ、工事の過程で生まれた模型やスケッチ、図形などを通じて、この施設の“誕生譚”を見せる内容になっています。単なる完成披露ではなく、試行錯誤そのものを見せるところに、MoNの性格がよく表れています。

Box300入口と現在開催中の「ひらけ モン!展」展示風景

続くBox1000は、地下空間に大きく展開していきます。エスカレーターを下りると、ステージ前面に高精細LEDを備えた最新のパフォーマンス空間が広がります。着席1048席、スタンディングで最大2000人を収容でき、ライブ、演劇、インスタレーションなど多彩な使い方が可能。非常に見やすく、たとえば歌舞伎であれば前方席でしか味わえなかった表情や熱量まで、大型LEDによってどの席からもリアルに体感できそうです。

地下深くへ潜り込んでいくような長いエスカレーターが印象的だ
取材当日、スクリーンでは「MANGALOGUE(マンガローグ):火の鳥」の予告編が上映されていた

また、偶然かもしれませんが、どことなくシートの色やかたちが新幹線のシートを思わせる意匠になっていたのも面白かったです。ミュージアムの付属劇場というより、視覚体験そのものを更新する実験場というべき空間です。4月22日からは、このBox1000で「MANGALOGUE(マンガローグ):火の鳥」が始まります。

そして5階のBox1500は、約1500平米を誇る館内最大の展示空間。シーズンテーマを代表する大型プログラムが展開される場所で、現在は開館記念特別展「ぐるぐる展―進化しつづける人類の物語」が開催中です。本展については、後編であらためて詳しく紹介します。

畳、3つのラボ、アップサイクル家具――“滞在”そのものが文化体験になる

4階の「Tatami」は、約100畳の広さをもつ展示・上演空間です。靴を脱いで上がる場でありながら、和の伝統文化とテクノロジーを組み合わせたさまざまなプログラムを展開できるようになっており、大型プロジェクターも常設。内覧時には和楽器の生演奏が流れ、い草の香りと音の余韻が混ざる、静かに贅沢な空間が立ち上がっていました。しかも畳床には、伊藤園の製造工程で出る茶殻をリサイクルした素材が使われています。休むこと、座ること、香りを感じることまで含めて、ここでは文化体験として再定義されているようでした。

広々とした畳エリア。様々な用途で応用できる和の空間だ
伊藤園の製茶工場から出る茶殻を畳に混ぜることで、消臭効果を高めている

3階にはSun Lab、Sea Lab、Land Labという3つのラボもあります。小規模展示、イベント、ワークショップ、休憩などに使える多目的スペースで、Sea Labは靴を脱いでくつろげる仕様、Land Labには日本科学未来館から受け継いだ机と椅子が置かれています。

日本科学未来館から受け継いだ机と椅子。奥に進むにしたがって、サイズが少しずつ大きくなっていく

さらに館内には、高輪築堤に関わる松杭を再利用したベンチや、鉄道防災林の木材をアップサイクルしたベンチ、大阪・関西万博の日本政府館で使われた家具など、物語(Narrative)にあふれる家具が点在。歩いているだけで、素材それぞれの来歴に自然に目が向く、徹底した作り込みは好感が持てました。

屋上へ抜けると、庭園とテラスが街の印象を変える

テラスからは、品川駅へと続く巨大なターミナルの全貌が見下ろせる。日が落ちてからは夜景も楽しめそうだ

さらにMoN Takanawaでは、屋外空間にも豊富な見どころが広がります。眼前に品川駅の巨大なターミナルを臨む絶好の眺望を愉しみながら、足湯テラス、月見テラス、花見テラスなどさまざまな趣向を凝らしたスペースが用意されていました。

月見テラス。満月の夜に再訪してみたい

月見テラスは、水面への映り込みを意識して設計された空間で、昼間でも空の気配を静かに映し返し、夜にはその名の通り月を楽しむ場になりそう。足湯テラスでは、都市の中心にいながら肩の力を抜ける時間が用意され、さらに屋上の花見テラスでは、在来種を中心とした多様な植栽が施されています。桜は早咲きの種類が多く、来年からは、早ければ2月頃から都内ではどこよりも早いお花見が楽しめそうです。

開放感あふれる「花見テラス」。早咲きの桜にはすでに青々とした葉が茂っていた
肌寒い日にはありがたい、6Fの「足湯テラス」

飲食とショップまで含めて、統一された世界観

飲食施設とショップにも、この館の思想は行き届いています。2階には、青山のアートコンプレックス「スパイラル」が手がける「MoN Shop by Spiral」が入り、アートと雑貨を横断するキュレーションショップとして機能。今後はMoNオリジナルグッズの展開も予定されています。

MoN Shop by Spiralの外観。選りすぐられた、洗練された雑貨類が販売されている

飲食施設は充実の3か所。まず1階の「MoN Park Cafe by Spiral」では、MoNのファサードの螺旋形状に着想を得たオリジナルメニュー「スパイラルコロネ」が来館者を迎えます。

MoN Park Cafe by Spiral。屋外を含め、たっぷり全79席用意されている
MoN Park Cafeで提供されるスパイラルコロネ。デリサンドタイプとデザートタイプあわせて3種類用意されている

続いて3階の食事や軽食が楽しめる「MoN Kitchen by Spiral」は、電車を眺められるテラス席が特徴で、北欧家具に囲まれながらゆったりと食事を楽しめそうです。

全面ガラス張りで見晴らしの良いMoN Kitchen by Spiralの店内。テラス席も用意されている

さらに6階では、京都市京セラ美術館や大阪市立美術館で人気のミュージアムカフェを展開するパートナーによる「MoN Garden Restaurant “LAUBE”」が開業。LAUBEとは、ドイツ語で“草陰の小屋”という意味で、まさに都心の喧騒を離れた隠れ家的なレストランという趣です。提供されるのはオーガニックで彩り豊かな創作料理の数々。週末の夜は「クラフトナイトテラス」として、都心の夜風とともにクラフトドリンクとライトミールを提供。夜景にふれながら味わうmitosaya 薬草園蒸留所とのコラボレーションによる季節限定カクテルも非常に楽しみです。

MoN Garden Restaurant “LAUBE”の店内風景。テラスからは、巨大な鉄道ターミナルを見下ろす絶景が広がる
上:LAUBEデリプレート、下:ガーデンサラダプレート
LAUBEのオリジナルモクテル「季節のシュラブ/いちご」

取材を終えて実感したのは、MoN Takanawaは、ただの“展覧会の入れ物”ではなく、一つの巨大な文化体験装置であるということです。見る、歩く、休む、食べる、買うという一連の行為が切れ目なくつながり、既存の美術館・博物館の枠を越え、「文化」を多様な「Narratives(物語)」で伝えようとする意気込みが伝わってきました。百聞は一見に如かず。この、美術館でも劇場でも、あるいは公園でもカフェでもあるような、不思議な重なりをもつ場所をぜひ一度訪問してみてはいかがでしょうか。

後編では、その思想がもっとも鮮やかに可視化された開館記念特別展「ぐるぐる展」と、施設の誕生過程を見せる「ひらけ モン!展」、さらに4月22日から始まる「MANGALOGUE(マンガローグ):火の鳥」について紹介します。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives 基本情報

施設名称:MoN Takanawa: The Museum of Narratives
所在地 :東京都港区三田3-16-1
開館日 :2026年3月28日(土)
営業時間:10:00~21:00(プログラム・イベントごとに異なる)
入場料 :プログラム・イベントごとに異なる
公式HP:https://montakanawa.jp/

開館記念特別展「ぐるぐる展―進化しつづける人類の物語」
開催期間:2026年3月28日(土)~9月23日(水・祝)
営業時間:10:00~19:00、金・土曜日は10:00~21:00
会  場:Box1500
入場料 :一般 2,500円、U25 1,500円、小中高生 800円
     ※未就学児無料
     ※料金はすべて税込
公式HP:https://montakanawa.jp/programs/spiral/

「ひらけ モン!展」
開催期間:2026年3月28日(土)~6月6日(土)
営業時間:10:00~19:00、金・土は21:00閉館
     ※最終入場は閉館の30分前まで
会  場:Box300
入場料 :無料
公式HP:https://montakanawa.jp/programs/open_mon/

「MANGALOGUE(マンガローグ):火の鳥」
開催期間:2026年4月22日(水)~5月16日(土)
営業時間:開演時間は公演により異なる
会  場:Box1000
チケット:一般 4,500円・5,500円、U25 4,500円、小学生以下 3,000円
     ※料金はすべて税込、公演スケジュールによって料金が異なる
     ※4歳未満は入場不可
     ※公演スケジュール、チケット購入方法の詳細については公式HPを参照
公式HP:https://montakanawa.jp/programs/mangalogue_hinotori/

 

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