
2025年10月8日、アストンマーティンの基幹モデル「DB12」に高性能バージョン「DB12 S」が誕生した。英国の美意識と圧倒的なパフォーマンスを融合した、スーパーツアラーを紹介する。
文/竹井あきら
その性能もウルトララグジュアリー
アストンマーティンという名を耳にして、映画『007』シリーズを思い浮かべる人は多いだろう。シリーズ第3作『ゴールドフィンガー』で登場した初代ボンドカー「DB5」を筆頭に、アストンマーティンはジェームズ・ボンドが生きるタフでエレガントな世界観を表現するクルマとしてスクリーンに輝き続けてきた。
「DB5」の直系となる最新のスーパーツアラーが、2023年にデビューした「DB12」。この度追加された「DB12 S」は、アストンマーティンの伝統に則って既存モデル名の末尾に「S」が付けられた「DB12」のハイパフォーマンス仕様であり、1953年のレーシングカー「DB3 S」から連なるパフォーマンスラインの最新章だ。

心臓部には、4.0リッターV8ツインターボエンジンを搭載。「DB12」比20PSアップの最高出力700PS、最大トルク800Nmを発生し、最高速度は325km/hに達する。0-60mph加速は「DB12」より0.1秒短縮され、わずか3.4秒を実現した。
新設計のクアッドテールパイプから奏でられるエキゾーストサウンドは、深く、力強い。ステンレススチール製のスポーツエキゾーストシステムは、全回転域を通じてエンジン周波数を際立たせるようにチューニングが施されている。さらにオプションとして、11.7kgの軽量化を可能とし、音質がよりシャープになり、サウンドレベルは1.5dBアップする、チタニウム製エキゾーストシステムも用意される。

ドライバーとの一体感を追求し、シャシーも強化された。ソフトウェアを最適化されたビルシュタインDTXダンパー、強化されたリアアンチロールバー、そして改良されたステアリングとリア電子制御ディファレンシャルによって、敏捷性と操作性の完璧なバランスを達成しているという。
ブレーキも大幅にアップグレードされている。カーボンセラミックブレーキを標準装備し、制動力と熱耐性を飛躍的に高め、バネ下重量を27kg軽量化。これにより乗り心地とハンドリングの両立を果たしている。
最新のコーナーブレーキコントロール(CBC)システムも搭載され、ドライバーがより遅い時点でより高い安定性を保ちながらブレーキをかけることを可能とした。またCBC に搭載された予測機能により、コーナー進入時に荷重移動を促すトレイルブレーキングの際にも最適な安定性が維持されるという。

そのスポーティネスは、外観にも存分に表現される。
フロントでは、リフトを抑制するフロントスプリッターと、エンジンの熱気排出を助けるボンネットルーバーが生み出す大胆な造形が印象的だ。リアには固定式スポイラーと新設計のディフューザーを装備し、空力性能を高めながら力強さを演出している。
グロスブラックのサイドシルが追加されたサイドビューは、新たにフロントスプリッターが備わり、低く構えた姿勢と伸びやかなラインが静止していてもスピードを感じさせる。そしてフロントフェンダーには、レッドエナメル仕上げの鍛造「S」バッジが輝く。この伝統の「S」バッジこそ、高性能バージョンの証であり、アストンマーティンが誇るハンドクラフトの象徴でもある。

スポーティかつ気品に満ちた室内には、最高峰モデル専用のこだわりのディテールがちりばめられている。ローレット加工の上、赤くアノダイズ処理された金属製ドライブモード用ロータリーダイヤルはその代表格で、独特の存在感を放つ。アルカンターラのヒーテッド・スポーツステアリングホイールや、ヘッドレストのアストンマーティン・ウィングロゴをはじめとするオプションも用意される。

インテリアトリムは「アクセレレート・レザーとアルカンターラ・トリム」「インスパイアSセミアニリンレザーとアルカンターラ」「インスパイアSフルセミアニリンレザー」の3種をラインナップ。16方向調整可能スポーツプラス電動フロントシートを標準装備し、オプションでカーボンファイバー製パフォーマンスシートも選択できる。

高級ホテルの車寄せで輝き、高速道路をグランドツーリングし、曲がりくねった山岳路を駆け、サーキット走行をもこなす。ウルトララグジュアリーな「DB12 S」に魅了されるのは、タキシードを着こなすスパイだけではないだろう。

「DB12 S」の価格は、クーペが3290万円、オープンモデルのヴォランテが3490万円。納車は2026年第1四半期に開始される予定だ。
アストンマーティンジャパン
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