IWCによる３つの複雑機構を搭載した「ポルトギーゼ・トゥールビヨン・レトログラード・クロノグラフ」

時計愛好家の心を揺さぶる逸品が、スイスの名門IWCシャフハウゼンから登場しました。「ポルトギーゼ・トゥールビヨン・レトログラード・クロノグラフ」（Ref. IW394009）は、100本のみの限定生産という希少性と、3つの複雑機構を融合させた技術的な完成度で、現代の機械式時計の魅力を存分に示しています。

文／土田貴史

文字盤の神秘的な美しさ。オブシディアンカラーの魅力

この時計の特徴は、「オブシディアンカラー」と名付けられた文字盤です。オブシディアンとは、火山活動によって生成される天然ガラスのことで、日本では黒曜石として親しまれています。その名が示すとおり、単なる黒ではなく、ガラスのような神秘的な輝きを持つのが特徴です。

IWCの職人たちは、この自然の美しさを時計の文字盤に再現するため、60もの工程を経た複雑な製造プロセスを採用しています。透明ラッカーを15層にも重ねることで、驚くほどの奥行きと立体感を実現。まるで3Dのような視覚効果が生まれ、見る角度によって表情を変える魅惑的な仕上がりとなっています。

３つの複雑機構が織りなす技術の饗宴

さらに、この時計の真価は、3つの複雑機構の絶妙な融合にあります。

まず注目すべきは、6時位置に配されたフライング・ミニッツ・トゥールビヨンです。総重量わずか0.675グラム、56個のパーツで構成されるこの機構は、1分間に1回転することで重力の影響を軽減し、より正確な歩度を実現します。アンクルとガンギ車にはシリコン素材を採用し、IWC独自のダイヤモンド・シェル・テクノロジーによるコーティングが施されています。これにより摩擦が低減され、68時間というロングパワーリザーブを可能にしています。

9時位置には、レトログラード式の日付表示が配されています。小さな針がアーチ型の目盛りで現在の日付を指し示し、月末に達すると、針はスタート位置にジャンプして戻ります。この機構の動きは、まさに時計愛好家の心を躍らせる瞬間です。

そして12時位置には、フライバック・クロノグラフの積算計が設けられています。フライバック機能により、クロノグラフ作動中でも瞬時にリセットと再スタートが可能です。この機能は、正確な時間計測を求める場面で威力を発揮します。

この時計に搭載されるキャリバー89900は、375個もの部品から構成される精巧な自社製自動巻きムーブメントです。サファイアガラスの裏蓋からは、コート・ド・ジュネーブ装飾とペルラージュ装飾が施されたムーブメントの美しい仕上げを眺めることができます。ゴールド製ローターが静かに回転する様子を眺めることは、時計愛好家にとって至福の時間となるでしょう。

43.5mmのケースには、IWC独自の18ct Armor Gold(R)を採用しています。改良された微細な構造により、従来のゴールド合金よりも格段に高い硬度を実現。日常使いでも安心して着用できる耐久性を備えています。そしてストラップには、イタリアの高級レザーブランド、サントーニ社製のブラックアリゲーターストラップが組み合わされ、18ct Armor Gold(R)フォールディング・クラスプで仕上げられています。

100本限定という希少性、3つの複雑機構が織りなす技術の粋、そしてオブシディアンカラーの神秘的な美しさ。「ポルトギーゼ・トゥールビヨン・レトログラード・クロノグラフ」は、IWCが長年培ってきた時計製造の神髄を現代に蘇らせた逸品といえます。手首に巻いた瞬間から、その重厚感と精密な機構の鼓動が伝わってきます。真の時計愛好家にとって、この一本は生涯の宝物となることでしょう。