
1965年、英国のレーシングドライバー、ジム・クラークはチーム・ロータスとともにF1世界選手権を制し、米国のインディアナポリス500でも優勝を果たした。その偉業から60年を経て誕生したのが、世界限定60台の特別仕様車「エミーラ・クラークエディション」だ。往年のレーシングカーへのオマージュを随所に込めた希少な1台が、いま日本国内で購入できる最後の機会を迎えている。
文/竹井あきら 写真提供/ロータス・カーズ
ジム・クラークの偉業を称える特別なモデル
1960年代、軽量な車体と独創的な設計思想でモータースポーツの世界に存在感を示していた英国のスポーツカーブランド、ロータス。なかでも1965年は、ブランドの歴史に輝く1年となった。
チーム・ロータスのスコットランド出身ドライバー、ジム・クラークがF1世界選手権でチャンピオンに輝き、さらに米国の伝統あるレース、インディアナポリス500でも優勝。F1の年間王者とインディアナポリス500の勝者というふたつの栄冠を同じ年に手にしたドライバーは、モータースポーツ史上、クラークただひとりだ。
同じくスコットランド出身のレジェンド、ジャッキー・スチュワートは、「彼のドライビングはとても滑らかで、とてもきれいだった。まるで、クルマを優しく撫でるようにして、自分の思いどおりに動かしているかのようだった」とクラークを評したという。

インディアナポリス500でクラークがドライブしたのが、ロータス・タイプ38である。天才デザイナー、コリン・チャップマンとレン・テリーが手がけたこのマシンは、左回りのオーバルトラックに特化し、サスペンションなどを車体の左側にオフセットするという独創的な設計を採用したことでも知られる。ミッドシップされるのは、最高出力500馬力を発生するフォード製4.2L DOHC V8エンジン。さらに、フルアルミニウム製モノコックシャシーによって高剛性化と軽量化を図り、車両重量はわずか612kg。軽量化と革新的な設計を追求するロータスの思想を体現したレーシングカーといえる。

それから60年。ジム・クラークの功績を称え、ロータスのレーシングスピリットを現代のスポーツカーに受け継いだ特別仕様車が「エミーラ・クラークエディション」だ。生産台数は世界限定わずか60台。日本国内で購入できるのは、いよいよ最後の1台となったという。
ベースとなるのは、ロータスが内燃機関搭載スポーツカーの集大成として位置づける「エミーラ」。最大トルク420Nm、最高出力406馬力を発生するスーパーチャージャー付 3.5ℓV6エンジンをミッドに搭載し、6速マニュアルトランスミッションを介して後輪を駆動する、ピュアスポーツカーだ。
1948年に英国で設立されたロータスは、技術とデザインへの妥協のない姿勢を貫き、独自のスポーツカーづくりを続けてきた。「エミーラ・クラークエディション」は、その歴史を象徴するクラークへの敬意を込め、彼が活躍した時代のレーシングカーから着想を得て誕生したモデルである。
このモデルをひと目で特別な存在と感じさせるのが、専用色「クラーク・レーシング・グリーン」をまとったボディ。ブラックルーフとシルバーのドアミラーが組み合わされ、鮮やかなイエローのストライプが配されている。これは、1965年のインディアナポリス500を制したタイプ38へのオマージュだ。
モータースポーツに由来するカラーリングは、ブランドが歩んできた歴史や、クルマづくりに込めた思想を伝えるものでもある。「エミーラ・クラークエディション」のグリーンとイエローもまた、ロータスが積み重ねてきた挑戦の記憶をいまに伝える。


ブルーアルマイト仕上げが施されたアルミ削り出しのフューエルキャップや、イエローのエキゾーストパイプも特徴的だ。ドアにはクラークのレーシングカーに着想を得たという「クラークエディション」のロゴがあしらわれている。

インテリアにも、このモデルのために用意されたディテールが随所に盛り込まれている。
スポーツシートには左右非対称のカラーリングを採用。運転席側は当時のロータスのレーシングカーをオマージュしたレッド、助手席側はブラックでコーディネート。レザーとアルカンターラのコンビシートには、1965年のクラークの偉業を表すプレートがはめられている。
シフトノブはクラシックなウッド製、ダッシュボードにはジム・クラークのシグネチャーが刺繍で再現されている。



さらに、カーボンファイバー製のスカッフプレートには、世界限定60台のうちの1台であることを示す「1 OF 60」の文字が刻まれている。
また限定車の特別な仕様として、通常はオプションとなるスポーツサスペンションや、トラックモード付きドライブモードセレクターも装備される。

クルマの魅力は、数値化された性能や目に見えるデザインだけにとどまらない。どのような思想から生まれ、どんな歴史を背負っているのかを知ることで、目の前のクルマへの愛着がいっそう深まるにちがいない。
「エミーラ・クラークエディション」は、1965年のジム・クラークとロータスが成し遂げた偉業を、現代のスポーツカーを通じて味わうための1台だ。専用のグリーンとイエローのストライプ、コックピットに配された特別な装備。そのひとつひとつが、過去の輝かしい栄光を現在に繋いでいる。

「エミーラ・クラークエディション」の車両本体価格は、2359万5000円(税込)。日本国内で購入できる最後の1台は、「LOTUS東京 原宿ショールーム」に展示・販売されている。
伝説のドライバーが残した足跡と、ロータスが守り続けるレーシングスピリット。その両方を現代に受け継ぐ特別なエミーラに出会える機会は限られている。往年のモータースポーツに思いを馳せながら実車を眺めれば、カラーリングや細部の仕立てに込められた意味の深さを味わえることだろう。
LOTUS東京 原宿ショールーム
所在地:東京都渋谷区神宮前1-4-16
電話:03-6440-0838
公式サイト:https://www.lotus-cars.jp/tlc-harajuku/
※展示期間は予告なく変更となる場合があるため、来店前に問い合わせを。





