ザ・キタノホテル東京の2階、東南の角に位置する新レストラン「L’Orangerie 光庵(オランジュリー こうあん)」。その空間に一歩足を踏み入れると、目に飛び込んでくるのは、大きな窓から差し込む燦々とした陽光です。2024年7月17日にオープンしたばかりのこちらは、名前の通り、光に満ちた庵(いおり)のような心地良さを醸し出しています。

文/土田貴史

光と芸術が織りなす雰囲気に、心をほどく

ぬくもりのある黄色と、浅葱色がアクセントとして効いた明るいカラーパレット。和の色彩が柔和な雰囲気を演出し、訪れた人々はおのずと笑顔になる……。ここでは、洗練された美食体験はもちろん、心身ともに癒される時間を堪能することができます。

空間を彩るのは、創業家が所有する各種アート。フランスの風景を描いた日本画家・石躍達哉氏の作品をはじめ、随所に配された絵画の数々が、エスプリを添えています。それは「L’Orangerie 光庵」の真骨頂。格調高さと心穏やかな雰囲気が高次元で同居していることが奇跡です。70室のスモールラグジュアリーホテルらしい、きめ細やかなおもてなしの心からでしょう。

レストランの名称も、空間の雰囲気を物語っています。“オランジュリー”とは、かつて貴族の邸宅にあった温室を指し、この場所が朝陽が明るく差し込む「最も気の良い場所」であることにちなんでいます。そこに日本語の「光(ひかり)の庵(いおり)」を組み合わせ、西洋と日本の架け橋を担ってきたホテルの歴史を表現しているのです。

「L’Orangerie 光庵」は、全46席(6席の個室含む)。ベーゼンドルファー製のピアノの生音が穏やかなBGMとなり、空間全体を優しく包み込んでいます。
こちらが6席の個室。日本画家・石躍達哉氏の作品を中心にシノワズリ風の花鳥風月の壁紙が囲み、まさに温室に招かれたような印象を抱かせます。

新スタイル「ビストロノミー」は、身体に優しい本格フレンチ

「L’Orangerie 光庵」のコンセプトは、「旅でお疲れのお客様の胃腸も癒す、身体にやさしいフレンチ」です。具体的には、正統派フランス料理の技術を基礎に、季節感を表現する日本の食材を組み合わせた、オリジナルかつ軽やかな料理を提供します。

注目すべきは、このレストランが「ビストロノミー」スタイルを採用している点です。ビストロノミーとは、高級レストラン(ガストロノミー)のような質の高い料理でありながら、ビストロのような気軽さも兼ね備えた新しい形式のレストランを指します。

料理長を務めるのは、フランス農事功労章シュバリエを叙勲したシェフ・加茂健氏。スイスやカンボジアで21年にわたる海外経験を積んだ実力派です。加茂氏は「医食同源」の考えに基づき、自然に身体に溶け込むような料理を心がけています。

ホテル総料理⻑兼「LʼOrangerie 光庵」料理⻑の加茂 健(かも・たけし)氏。正統かつイノベーティヴ、⽇本のテロワールを⽣かした⾝体にやさしいフランス料理で評価を集めています。

そしてメニュー構成も特徴的です。ランチこそコース形式のみですが、ディナーは基本のコースに加え、アラカルトメニューも用意。その日の体調に合わせて、調節できる構成となっています。

一品だけ食べたい、あるいはアペリティフだけをつまみたいといったリクエストも、「L’Orangerie 光庵」ならOK。肩肘張らず、店側の押し付けがありません。さらにノンアルコールのペアリングや、予約制でビーガンメニューにも対応するなど、幅広いニーズに応えるとのことです。

アミューズ・ブーシュ(前菜)例。ライムときゅうりのジュース、オニオンのタルトレット(左皿)。トマトのフォカッチャ(右皿)。小さなポーションに酸味や旨味が凝縮され、胃腸を心地よく刺激。
アントレ(温前菜)例。岩本牛のカルパッチョ ひよこ豆のヴィネグレット。絢爛豪華な色彩で目を楽しませ、口中でお肉がとろけていく上質な味わいを幾度も楽しめます。
加茂シェフのスペシャリテは、爽やかな瀬戸内塩レモンのリゾット。こちらは、コースではなく、ディナーのアラカルトで提供。

ルレ・エ・シャトーとともに目指す、新たなホスピタリティの形

「L’Orangerie 光庵」の誕生は、ザ・キタノホテル東京にとっても大きな転換点となりそうです。それには、キタノホテル東京が2023年5月に、東京のホテルとして唯一ルレ・エ・シャトーへの加盟を認められたことが大きく関係しています。

ルレ・エ・シャトーとは、1954年にフランスで設立された、厳選されたホテルとレストランが加盟する創立70周年の協会です。現在、全世界で580のホテルとレストランが加盟。ミシュランガイドのような格付け制度とは異なり、ルレ・エ・シャトーは、強い信念を持ち、ゲストと心のこもった関係を築きたいと願う個人経営のホテルオーナーやシェフによって支えられている点が特徴です。

加盟には厳しい基準があり、ホスピタリティの質、料理の独創性、地域文化や環境への貢献などが総合的に評価されます。つまり、ルレ・エ・シャトーは、高級サービスの背景にある、ゲストに真摯に向き合う姿勢を重要視しているのです。

キタノホテル東京エントランス。現在はルレ・エ・シャトーの旗が目印となっています。(C) Nacasa&Partners

キタノホテル東京がルレ・エ・シャトーに加盟したことは、同ホテルが提供するホスピタリティの質の高さが国際的に認められたことを示しています。

その哲学を体現する場が「L’Orangerie 光庵」。したがって、ここでは料理を味わうだけでなく、心身ともに癒され、文化的な刺激を受け、そして何より、ゲスト一人一人が大切にされていることを実感できる格別な体験が約束されています。

ホテル総料理長兼「L’Orangerie 光庵」料理長の加茂健氏は、「東京唯一のルレ・エ・シャトー加盟ホテルとして上質なホスピタリティーをご提供いたします」と、語ります。「L’Orangerie 光庵」の誕生は、コンフォート&ラグジュアリーという最新の美食スタイルの幕開けとも言えそうです。

ランチはコースのみ。4品6000円。5品8000円。ペアリングは1杯1600円から。ディナーは基本のコース5品1万5000円のほか、アラカルト注文可能。

LʼOrangerie 光庵(オランジュリー こうあん)
住所:東京都千代⽥区平河町 2-16-15 ザ・キタノホテル東京 2F 
席数:15 卓 46 席(個室 1 室 6 席含む)
⾯積:153 ㎡ 
定休⽇:⽇・⽉曜休み(⽕曜⽇はランチのみ営業)
営業時間:朝⾷ 7:00〜10:00 (L.O.9:30) ※ご宿泊ゲストのみ ランチ 12:00〜15:00(L.O.13:30) ディナー 18:00〜22:00(L.O.21:00) 
予約受付:お電話TEL03-6261-7096(受付時間:11:00〜20:00)または予約サイト(:https://www.tablecheck.com/ja/lorangerie/reserve/)にて

 

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