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堀文子の仕事 『命というもの』原画展 開催記念

11月15日、東京・銀座の三笠会館で、俳優・檀ふみさんとサックス奏者・坂田明さんの特別対談が行われた。テーマは「日本画家・堀文子」。実は檀さんは、「堀文子、最後の弟子」。坂田さんは「ミジンコ研究仲間」であった。生前の堀さんをよく知る二人は、いったい何を語ったのか。特別対談の一部を紹介する。

対談イベントでの一風景。スクリーン手前、向かって右がサックス奏者の坂田明さん。向かって左が俳優の檀ふみさん。当日は満員御礼になった。

   *    *   

檀「堀先生の自画像じゃないかって思ってる絵があるんです」(と「オオカミウオ」の絵を見せる)

坂田「先生だよ、これは!」

檀「一度ね、この絵を見た若い方が、“わー、カワイイ”と口にしたんです。そしたら先生、烈火の如く怒って、“カワイイとは何事です!”って。それは威厳がありました。先生はカワイイも嫌いだし、笑うのも嫌い。“笑うのは嫌いでございます”って言ってましたからね」

坂田「先生らしいね」

坂田さんからは、堀さんの描いた「蜘蛛の巣」までもが、「先生に似ている」という指摘が飛び出した。

檀「蜘蛛の巣が先生? ははははは。私たち、堀さんという蜘蛛の巣に捕まっちゃったの?」

坂田「うん、捕まってるね」

檀「先生、お手伝いさんにも庭師の方にも“蜘蛛の巣を払わないでください”って厳命してましたからね。私が大磯のアトリエにお邪魔したときも、蜘蛛の巣に霧吹きで水を拭きかけて“綺麗でしょ?”って」

坂田「大磯のアトリエと言えば、庭に甕(かめ)があるでしょ? あの中に、ミジンコがいるんですけど、あれ、私が住まいをしつらえたんです。今も生きているはずですよ」

檀「先生、ヒマラヤに実際に赴いて、ブルーポピーを書きましたでしょ? 可憐な青い花ですが、刺がたくさんある。あの刺も先生(笑)。あんな素晴らしい絵でしょ? 欲しいという人はあとを絶たなかったんだけど、先生、“あの感動は易々と絵にできない”ってお描きにならなかった。ひどいと思いません?」

坂田「そりゃそうですよ。僕もヒマラヤにいったからわかるけど、あそこに81歳で行ったというのが信じられない。切り立った崖を馬に乗って行くんですけどね、前に大きな石があると、馬が突然、跳ぶんだよ。何度も死にかけたね」

   *    *   

この日、集まった聴衆は抽選に応募し当選した60人。同時にオンラインでの視聴もあり、多くの堀文子ファンが、二人の特別対談を堪能した。亡くなって3年経つが、日本画家・堀文子の魅力は、いまだに褪せない。

日本画家。大正7年、東京・麹町区(現・千代田区平河町)生まれ。女子美術専門学校(現・女子美術大学)卒業。昭和27年、上村松園賞受賞。海外を放浪し、帰国後に神奈川県大磯に居を構える。平成16年より亡くなる同31年まで、本誌にて「命といふもの」を連載。享年100。
檀ふみさん 俳優。堀さんに私淑。晩年の堀さんをよく知るひとり。
坂田明さん サックス奏者。堀さんとは生前、ミジンコ談義を繰り広げた。

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取材・文/角山祥道 

 

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