「息の絶えるまで感動していたい。それが“ 現在(いま)”という時間なのです」
堀文子(ほりふみこ)さん
堀文子さんが『サライ』で連載「命といふもの」を始めたのは、2004年のこと。86歳の時である。
今回、東京・銀座のナカジマアートでは、〈堀文子 サライ『命といふもの』原画展〉を開催する(11月30日まで)。連載「命といふもの」の原画の中から選(え)りすぐった作品を展示。最近発見された直筆原稿も公開し、原画に花を添える。
連載当時をよく知る、同画廊の中島良成さんは、「連載では新作をかき下ろす」と堀さんから聞いて驚いたという。
「すでに堀先生はたくさんの作品を残していました。それを連載に掲載しても、誰も不思議とは思いません。ところが先生は、“私には過去を振り返る時間はありません”とおっしゃるのです」
過去の作品を掲載することは、堀さんにとっては、「後ろを向く」ことだった。そこには新たな感動がない。「息が絶えるまで感動したい」という堀さんにとって、それは許しがたかった。
今まで、心にしみていながら絵にしなかったものが、私には山ほどある。それをこの小さな舞台(連載)に引き出すことにしよう。今まで誰も描かなかった絵。見る方にも、描く私にも新鮮な驚きがある筈はずだ(『命といふもの 堀文子画文集』)
前だけを向いて、新しい画題、テーマに挑む。これが堀さんの連載開始時の「覚悟」だった。
実際、扱ったテーマは多岐にわたる。他の画家が描かないようなもの──雑草や甲骨文、くらげまで作品にした。
身を削って描いた私の魂を吸い取ったもののけが、絵の中にひそんでいたのだろうか(『命といふもの 堀文子 画文集 第2集』)
堀さんは、一枚一枚の絵を、身を削って描いていたのだ。常に身を賭(と)した真剣勝負だった。
発見された直筆原稿
『サライ』に約10年にわたってかき下ろされた珠玉の作品の数々。
「堀先生は常に”現在(いま)”を描いていました。画(え)に添えた文章も次第に熱を帯び、時には自分の人生を見つめ直し、世相に辛口で斬り込んだりもしました。連載には、堀先生の生き方が刻まれていたんだと思います」
今の時代だからこそ、改めて「堀文子」に感じ入りたい。
※掲載の額装された絵は、〈堀文子 サライ「命といふもの」原画展〉で展示されます。
堀文子さんを深く知るために
【画廊】「堀文子の部屋」銀座・ナカジマアート
ナカジマアート
11月30日まで企画展〈堀文子 サライ『命といふもの』原画展〉を開催中。
東京都中央区銀座5-5-9 アベビル3階
電話:03・3574・6008
営業時間:11時~18時30分
入館料:無料
休日:会期中無休
交通:地下鉄銀座駅より徒歩約3分
堀文子さんの原画をもとに制作した高精細版画を
『サライ』オンラインサロン「Bar駱駝」内にて購入できます。
↓↓詳しくはこちら↓↓
https://bar-rakuda.serai.jp/items?page=1
【対談】檀ふみさんと坂田明さんの対談を配信
堀文子さんを師と仰ぐ檀ふみさんと、堀さんと「ミジンコ仲間」だった坂田明さん(77歳)。ふたりとも、生前の堀さんを敬愛し、かつ深く知る。
今回、個展に合わせて11月15日に対談イベントを実施予定。ライブ配信の視聴チケットが販売される。
堀さんが亡くなって3年経つが、今だからこそ必要とされている「堀文子という生き方」について、
ふたりが大いに語る。
ナカジマアート主催〈堀文子 サライ『命といふもの』原画展〉特別対談
11月15日(火)18時30分ライブ配信開始
視聴チケット1000円
eチケット購入はhttps://bar-rakuda.serai.jp/events/55b0fad67209
【本】『命といふもの 堀文子 画文集』のご案内
2004年から10年にわたり『サライ』で連載した「命といふもの」。画(え)も文もかき下ろしで、折々の思いを届けた。画の持つ力強さ、美しさ。訴えかける文章は私たちを揺さぶる。今こそゆっくり、味わいたい。画文集『命といふもの』全3巻(各縦257mm×横210mm)各3300円 小学館
『命といふもの 堀文子 画文集』
『命といふもの 堀文子 画文集 第2集 無心にして花を尋ね』
『命といふもの 堀文子 画文集 第3集 名もなきものの力』
取材・文/角山祥道 撮影/藤岡雅樹(小学館写真室、作品・原稿・画廊内観)
※この記事は『サライ』本誌2022年12月号より転載しました。