
オーデマ ピゲが、新作「ネオ フレーム ジャンピングアワー」を発表いたしました。1929年のプレモデル1271へのオマージュを現代的な解釈で昇華させた本作は、マニュファクチュール初となる自動巻きジャンピングアワームーブメント、キャリバー7122を搭載した一本です。
文/土田貴史
ブラックとゴールドが織り成す、緊張感のある美しさ
本作の核心にあるのは、18Kピンクゴールドのケースとブラックに染めたサファイアクリスタルの対話です。ウォームカラーのゴールドとクールな漆黒の組み合わせは、アールデコ後期のストリームライン・モダン様式が持つ、速度感と静謐さの共存をそのまま体現しているかのようです。
34.6mm × 34mmのレクタンギュラーケースの両サイドには、CNC(コンピューター数値制御マシン)加工による縦方向のゴドロン装飾が施されています。先端に向かって絞られたラグへと滑らかに連なるそのラインは、1930年代に大西洋を渡った遠洋定期船の船体を想起させます。フランス語で「パクボ(Paquebot=遠洋定期船)」と呼ばれたこの様式は、バウハウスの機能美とアールデコの装飾性が融合した稀有なデザイン哲学であり、ネオ フレーム ジャンピングアワーはその精神を忠実に受け継いでいます。

文字盤には、時と分それぞれに設けられたゴールドフレームのアパーチャー(表示窓)があり、黒地に白抜きの数字がプリントされています。12時方向と6時方向のベゼルを排し、サファイアクリスタルのエッジをそのまま露出させるという大胆な構造を採用。この設計を実現するために、ダイヤルプレートをサファイアクリスタルに接着してからケースにネジ止めするという、このモデルのためだけに開発された独自技術が投入されました。2気圧防水という実用的な機能を確保しながら、視覚的なピュアさを損なわないための、職人たちの執念が感じられます。
エレガントなブラックのレザーストラップにはテキスタイル調のモチーフが施され、ラグの間でサファイアと滑らかに接合する設計となっています。ヴィンテージの香りを漂わせながらも、現代のスタイルに馴染む一本に仕上がっています。

150年、創業家が守り続けてきた時計作りの哲学
1875年にスイス・ジュラ山脈のル・ブラッシュで産声を上げたオーデマ ピゲは、今日に至るまでオーデマ家とピゲ家、創業家両家によって経営され続けている、世界でも稀な高級時計ブランドです。上場企業の論理に左右されることなく、世代を超えて職人技と革新の精神を受け継いできたこのブランドの姿勢は、ネオ フレーム ジャンピングアワーのような作品にこそ、はっきりと刻まれています。1929年のデザインを単なる懐古趣味として蘇らせるのではなく、現代のクラフツマンシップと新技術を纏わせて新たな命を吹き込む。それは、時間をかけて積み重ねてきた信頼と技術的蓄積がなければ成し得ない仕事です。
創業から150年を超えた今なお、ジュウ渓谷のマニュファクチュールで生み出されるオーデマ ピゲの時計は、「所有する喜び」のみならず、時計作りという人類の知恵が凝縮された文化的遺産そのものでもあります。ネオ フレーム ジャンピングアワーは、そのことを静かに、しかし力強く語りかける一本と言えるでしょう。






