速水御舟「黄菊」、藤田嗣治「聖母子」【「美術品入札会 廻 -MEGURU-」注目作品～その３～】

サライプレミアムで、２記事にわたって特集した日本美術のオークション「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE（以下、「廻」）ですが、出品される全178点のうち、注目の６作品をピックアップして詳しくご紹介。作品の魅力や見どころを掘り下げて解説します。

「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE が８月24日から開催 ｜珠玉の178点と出会える年に１度の特別なオークションの記事はこちら（https://serai.jp/premium/1196071）

加島美術でこの道25年の凄腕目利きに聞く「美術作品購入の基本」と「審美眼を養う方法」の記事はこちら（https://serai.jp/premium/1196133）

注目作品５：速水御舟「黄菊」

作品情報
速水御舟「黄菊」　絹本　着色　1920年代後半～30年代
サイズ（本紙寸法）：35×27cm ／サイズ（全体寸法）：124×39cm
最低落札価格：￥10,000,000

「黄菊」は、「廻」Vol.19に登場する全178作品中、もっとも最低落札価格が高額に設定された注目作品です。本作品を描いた速水御舟は、大正から昭和初期にかけて活躍した日本画家で、わずか40年に満たない短い生涯でありながら、近代日本画の発展に大きな影響を与えた夭折の天才画家として知られます。

本作品は横山大観、下村観山、川合玉堂、松林桂月、小林古径、前田青邨、鏑木清方ら錚々たる巨匠の作とともに伝わったもの。画帖に収められ、長らく非公開の状態にあったことから、描かれて約１世紀が経過する現在でも状態は良好です。抑えた墨色に黄が冴える画面は緻密でありながら幻想的な気風をたたえ、小品とはいえ見所に富んだ逸品となっています。

「翠苔緑芝」「炎舞」「名樹散椿」など、複数の作品が国の重要文化財に指定される御舟は、生前から現在に至るまで一貫して高評価を受け続けている一方、他の画家に比べると遺された作品数も稀少であり、美術市場で取引される作品はほぼ枯渇しているともいわれます。今回のように、彩色された掛け軸が売りに出される機会は滅多にありません。下見会に来場する機会があれば、ぜひ目に焼き付けておきたい作品のひとつです。

注目作品６：藤田嗣治「聖母子」

作品情報
藤田嗣治「聖母子」　紙本　鉛筆　額装　東美鑑定証書　戦後（1945～1959年）
サイズ（本紙寸法）：23×16cm ／サイズ（全体寸法）：48×40cm
最低落札価格：￥2,800,000

「廻」には日本画だけでなく、日本人作家による洋画や現代アート作品なども出品されますが、なかでも毎回安定した人気を誇るのが、戦前にもっとも西欧画壇で評価の高かった藤田嗣治です。

藤田嗣治の本格的な油絵を購入する……となると、数千万円から億単位の出費となり、大多数のコレクターにとって簡単に手が出せるものではありません。しかし今回の「廻」Vol.19に出品されたような素描作品であれば、最低落札価格も280万円と、手頃な価格で入札が可能。「世界のフジタ」が近い存在として感じられます。

藤田は西洋と東洋の美学を巧みに融合させた画風を確立し、独特な乳白色の絵肌で描く肖像画などが高く評価されています。特に彼がこだわったのが、西洋の解剖学的な正確さと、東洋の伝統的な日本画のエッセンスを継承した美しい線描でした。静けさの中に張り詰めた緊張感が漂う「聖母子」では、藤田が探求した「線」の魅力が見事に表現されています。

良い意味で季節感のない作品なので、年間を通して気軽に飾ることができるのも嬉しいところ。「世界のフジタ」を身近な生活空間で愛でることができる、またとない好機かもしれません。

白隠慧鶴「百壽」、棟方志功「二菩薩釈迦十大弟子」【「美術品入札会 廻 -MEGURU-」注目作品～その１～】へのリンクはこちら（https://serai.jp/premium/1196204）

円山應挙「藤花狗子図」、加山又造「牡丹」【「美術品入札会 廻 -MEGURU-」注目作品～その２～】へのリンクはこちら（https://serai.jp/premium/1196205）

「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE 基本情報

■全体スケジュール
下見会： 2024年８月24日（土）〜 ９月１日（日）（来場予約不要、入場無料）
入札締切日：2024年９月１日（日）18時
開札日： 2024年９月３日（火）15時
時間：10:00〜18:00
下見会会場：加島美術（東京都中央区京橋3-3-2）
出品数： 178点
公式サイト：https://meguru-auction.jp

■下見会詳細
会期：2024年８月24日（土）〜 ９月１日（日）
時間：10:00〜18:00 入場無料/会期中無休
会場：加島美術（東京都中央区京橋3-3-2）
出品数：178点

■オリジナルカタログも無料配布中
全出品作品が掲載されたオリジナルカタログを希望者に無料配布中。
カタログ申し込みフォーム：https://www.meguru-auction.jp/Inquiry/

取材・文／齋藤 久嗣　写真／五十嵐 美弥