第一次世界大戦終結後、都市の消費文化が花開いた1920年代のフランス。

のちに「アール・デコ」と呼ばれるこの時代、新しいライフスタイルを楽しむようになった女性のモード(流行の服飾)は新たな局面を迎えます。それは前世紀に比べると格段に活動的になった女性に適応した現代的な装いの誕生でした。

ジャクリーヌ・マルヴァル《ヴァーツラフ・ニジンスキーとタマラ・カルサヴィナ》
1910年頃
個人蔵/ジャクリーヌ・マルヴァル委員会(パリ)協力

三菱一号館美術館で開催の「アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に」展は、アール・デコ様式に彩られたモードの諸相を紹介する展覧会です。(10月11日~2026年1月25日)

本展の見どころについて、三菱一号館美術館の主任学芸員、阿佐美淑子さんに寄せていただきました。

「1925年、いまから100年前、フランスの首都パリで、「現代産業装飾芸術国際博覧会(Exposition internationale des arts décoratifs et industriels modernes)」、通称アール・デコ博覧会が開催されました。

ロベール・ボンフィス《ポスター「現代産業装飾芸術国際博覧会」》
1925年
京都工芸繊維大学美術工芸資料館蔵

当時のフランスでは高級産業品の輸出が拡大し、なかでも服飾品の輸出が急増していました。こうした社会状況を背景に開催されたアール・デコ博覧会では、服飾が芸術性の高い産業のひとつに位置づけられていました。

ジャンヌ・ランバン イヴニング・ドレス 1920年代前半
京都服飾文化研究財団蔵 撮影:畠山崇

当時活躍していたポール・ポワレやジャンヌ・ランバン、またはシャネルなどパリ屈指のメゾンが生み出すドレスには、アール・デコ特有の幾何学的で直線的なデザインや細やかな装飾が散りばめられ、服の形状はウエストを絞らない簡潔なシルエットになり、長かったスカート丈はひざ下にまで上がりました。それらは古い慣習から解放され、活動的で自由な女性たちが好む新しく現代的なスタイルでした。

シャネル イヴニング・ドレス 1928年
京都服飾文化研究財団蔵 撮影:畠山崇

本展は、アール・デコ博覧会から100年目にあたる記念の年に、京都服飾文化研究財団(KCI)が誇る世界的な服飾コレクションから、この時代を表す選りすぐりのドレスや資料類約200点を紹介します。加えて国内外の美術館・博物館、また個人が所蔵する同時代の絵画、版画、工芸品などを展示し、合計約310点で、現代にも影響を与え続ける100 年前の「モード」を紐解きます」

ルネ・ラリック アトマイザー「サン・アデュー(さよならは言わない)」
ウォルト社 1929年 箱根ラリック美術館蔵

ドレスだけでなく、宝飾品や化粧品のコンパクトなど、100年前の女性の暮らしが分かる作品がたくさん出品されています。ぜひ会場に足をお運びください。

【開催要項】
アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に
会期:2025年10月11日(土)~2026年1月25日(日)
会場:三菱一号館美術館
住所:東京都千代田区丸の内2-6-2
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://mimt.jp/ex/artdeco2025/
開館時間:10時~18時、1月2日を除く金曜日及び会期最終週平日と第2水曜日は~20時
     (入館は各閉館の30分前まで)
休館日:祝日・振替休日を除く月曜日、年末年始(12月31日~1月1日)
    ※トークフリーデーの10月27日、11月24日、12月29日と会期最終週の1月19日は開館
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

ランキング

サライ最新号
2025年
11月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店

SNS

公式SNSで最新情報を配信中!