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取材・文/沢木文

仕事、そして男としての引退を意識する“アラウンド還暦”の男性。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻も子供もいる彼らの、秘めた恋を紹介する。

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役職定年で仕事の喜び、給料も半減し東京と決別

今回、お話を伺った、近藤光伸さん(仮名・60歳)は、5年前に有名電子機器メーカーの部長として、55歳で役職定年を迎える。その2年後に東京に見切りをつけ、故郷の中越地方に戻り、アウトドアガイドのアルバイトをしている。

「同期がみんな子会社に出向させられる中で、最後まで本社にいられたからよかったと思う。200人以上入社した同期のうち役員になったのはたった一人。私は営業職で“若手のホープ”と言われていたけれど、出世は部長止まりでした」

役職定年になると、仕事の喜びや楽しみも、給料も半減した。

「会社から“とっとと出ていけ”と言われるのに等しいくらいの冷待遇だった。かわいがっていた部下も、取引先も手のひらを返したように距離を置いてきた。覚悟はしていたけれど、決裁権がないと、みんなは冷たいね。よく行っていたお店のママや大将も、営業メールや電話をほとんどしてこなくなった」

光伸さんは地元では成績優秀で、都内の名門私立大学の理系の学部に進学。18歳から東京都に住んでいる。

「5歳年上の兄が、地元の国立大学に進学して、親父がやっていた製造業を継いで、まあまあの規模の仕事をしていて、3歳年上の姉夫婦と共同経営している。まあ、末っ子の私はもともと構われなかったから、大学ではろくに勉強せず、山ばかり登っていたし、年に1回地元に帰る程度だった」

登山が趣味なだけあり、光伸さんは精悍な表情をしている。服の上からも筋肉質なことがわかる。人気のアウトドアブランドパーカーを着こなし、小柄ながら背筋がスッと伸びている。短髪に白い歯、刻まれたシワも魅力的だ。

【55歳のときに熟年離婚。妻はすでに自分用のマンションを購入していた。次ページに続きます】

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