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最後の恋

【最後の恋】偶然入った昼間のカラオケスナック。「いい声ね」と言われ、人生初のモテ期が始まり……~その1~

取材・文/沢木文

仕事、そして男としての引退を意識する“アラウンド還暦”の男性。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻も子供もいる彼らの、秘めた恋を紹介する。

* * *

晩婚、40歳で授かった息子のために再就職

今回、お話を伺った、名和匡仁さん(65歳)は、東京在住の元公務員だ。60歳で定年を迎えた後、嘱託職員として再雇用される。

「給料は半額以下だったけれど、家でゴロゴロして、5歳年下の妻に『粗大ごみ』などと言われることを思うと、まだ働いた方がいいかなと思ったんですよ。

最初の1年間はプライドを捨てて、かつての部下たちに使われることに慣れるようにしました。家にいても1円にもならないけれど、ここにいる限りは、20万円近くの給料が得られる。

それに、老後資金も必要でした。というのも定年当時、まだ息子は大学生だったんですよ。私はずっとモテなくて、結婚が38歳で、40歳で授かったひとり息子でした。彼に学費の面で苦労させたくなくて、お金を稼ぐことに必死でした」

しかし、長男は成績優秀で、学費の一部が免除され、大学在学中からIT企業で半ば社員のように仕事を始めたと言います。

「息子はアプリの開発に携わっているようなんです。いろいろ話をしてくれるのですが、私にはさっぱり訳がわからない。それに、仕事のスタイルも面白い。家族旅行中だろうが食事中だろうが、メールが来ると、パッと思考を切り替えて、チャチャチャっと仕事をして、終わったら昼寝をしている。我が息子ながら、いい子に育ったと思っています」

名和さん自身も、埼玉県の名門県立高校から、有名な私立大学に進学。卒業後は大手ゼネコンに勤務するも、社風が合わず地方公務員に転職。

「終身雇用制が当たり前の時代だったので、転職するなんて変人扱いでしたよ。でも私は公務員が合っていた。父親も公務員だったので、カエルの子はカエルってやつですね」

名和さんは背も低く、頭髪が寂しい。ただ歯がとてもキレイで、爪を短く切りそろえており清潔感がある。ファッションもアメリカのトラッドカジュアルブランドの青いポロシャツに、深緑のカーゴパンツを合わせていて、とてもオシャレ。靴はテニスシューズブランドのシンプルなデザインの人気モデルだ。

【次ページに続きます】

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