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取材・文/沢木文

結婚25年の銀婚式を迎えるころに、夫にとって妻は“自分の分身”になっている。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻と突然の別れを経験した男性にインタビューし、彼らの悲しみの本質をひも解いていく。

不平不満を言ったことがない妻に起こった変化

お話を伺った、花岡哲司さん(仮名・65歳・会社役員)の1歳年上の妻が、乳がんで64歳の生涯を閉じたのは2年前のこと。

「いつも一緒にいて、隣で励ましてくれていた人が、どんどん弱っていくんだよ。大金をかけて治療しても、一向に良くならない。宗教のお世話にもなったし、怪しげな治療法に数百万円支払いましたが、治らないものは治らない。ああいうものも、早めにやらないと意味がないんだろうね。本人のエネルギーが消えているところに、気を送り込んだって、意味がないんだ」

哲司さんの妻は、62歳のときに乳がんだと気が付く。ステージ3だったそうだ。

「妻は定年まで会社員をしており、毎年、健康診断も受けて、『異常なし』という診断をもらってはホッとしていた。でも、何かのテレビ番組で、自己診断の方法をやっていた。番組を見ながら、妻が自分の胸を触ったら『しこりがあるかも』と言う。そこで、翌日、病院に行ってもらうと、『問題なかったわよ~』と朗らかに帰ってきた。そこで私はホッとしてしまった。それがバカなところだと思う。妻の変化に全く気づけなかった」

妻は辛ければ辛いほど、明るく振舞うところがあった。そして、自分のことは後回しにする性格だったという。

「妻が亡くなった後、遺体を清めているときに、妻の妹が来て、『お義兄さん、姉さんはしこりが見つかった日から、毎日電話くれたんだ。すごく苦しかったんだよ。病気の不安や悩みを、お義兄さんに言いたくなかったんだね』ってしみじみ言う。私も子供たちも妻の口から、辛いとか苦しいとか聞いたことがない。こまごまと動いて、笑っている印象しかない」

【一度も夫婦喧嘩をしたことがなかった。次ページに続きます】

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