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【もう君はいない】今も目に焼き付く、若き日の赤い口紅とハイヒール……美しく賢い妻との消えた老後と贖罪の日々~その2~

取材・文/沢木文

結婚25年の銀婚式を迎えるころに、夫にとって妻は“自分の分身”になっている。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻と突然の別れを経験した男性にインタビューし、彼らの悲しみの本質をひも解いていく。

夫に仕事を辞めさせられ、家庭に入った妻

お話を伺った、北里重明さん(仮名・65歳・会社経営)の妻は1年前に若年性アルツハイマーを発症し、現在、介護施設で暮らしている。重明さんのことは全く覚えていないという。

【その1はこちら

気性が激しく美しい妻にベタぼれし、30歳で親の反対を押し切って結婚。彼女は結婚後も仕事を続けるつもりだったが、「家庭に入って欲しい」と重明さんは言ってしまう。

「当時の妻は27歳。一途な人だと知っていたから、仕事に集中して子供を産まない可能性があったし、仕事で失敗すると自殺するだのしないだの大騒ぎするから辞めてもらいたかった。それに、僕が家庭の大黒柱という“甲斐性”も見せたかった。やはり、多感な時期に両親が離婚し、家庭の味を知らない妻に、家庭の味を教えてやりたかった」

重明さんの妻は「仕事を続けたい」と言ったそうだが、譲らなかった。

「彼女には『これからの仕事は“経営者の妻”だよ』って言いました。パーティの仕切り、得意先の挨拶、盆暮れの付け届け、私が幼いころから知っている家との家族ぐるみの交際……いろいろあるんですよ。でも妻は頑固だから、半年間仕事を続けさせてあげたんだけど、やっぱり駄目だった。会社勤めをしていると、家のことが行き届かなくなるし、それに妊娠したこともあるよね」

最初に生まれたのは女の子だった。

「男の子を期待していたんだけど、女の子だった。嬉しかったんだけど、喜び切れなかった。翌年に生まれたのも女の子で、うちの母親が『なんだ、また女の子?』とうっかり言ってしまい、病室で母を叱責。僕も若かったから親子喧嘩しちゃってね。妻はあっけに取られていて、後から泣いていた」

【それから、2年後に待望の男の子が生まれる。次ページに続きます】

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