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【もう君はいない】がんで亡くなった妻への深い愛、死後につむいだ3年の歳月~その2~

取材・文/沢木文

結婚当初は他人だった。しかし、25年の銀婚式を迎えるころに、夫にとって妻は“自分の分身”になっている。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、死や離婚など、妻と突然の別れを経験した男性にインタビューし、彼らの悲しみの本質をひも解いていく。

お話を伺った、光岡則夫さん(仮名・60歳・店舗設計会社役員)は、3年前に結婚28年の妻を胃がんで亡くした。

【その1はこちら

腰痛をずっと我慢していた妻

「体調が悪いと言い出したのは、娘の結婚式前後でした。娘もデキちゃった婚なのですが、嫁ぎ先はきちんとした家。老舗ホテルで結納を行い、そこで式も挙げました。相手は娘と同じ商社に勤務する先輩社員で、相手側のテーブルには、見たことがある有名人がズラリと並んでいるのに、こっちは庶民的なオジサンとオバサンばかり。妻も『なんだかヘンな式ね』と言いながら、相手の列席者に対してヘンテコなあだ名をつけて私を笑わせようとする。あれだけ食べることが大好きなのに、食べ物には一切の箸をつけていなかった」

家に帰ってきて着物を脱いだ妻に則夫さんは「お茶漬けでも食べる?」と言う。すると、「食欲がない」と言ってベッドに入ってしまった。夜中に「脚がぞわぞわして、つってくる」と訴える妻に対して、隣のベッドに眠る則夫さんは「気のせいだよ。もう寝なよ」とあしらってしまった。これを今でも後悔している。

「それから一週間、体調不良で妻は仕事を休んだんです。もともと病院が大嫌いで、名前の付く病気をしたことがないのを自慢にしていた。日ごろから健康に気を付けているから会社の健康診断も、ほとんどがA判定でしたし、私も娘も『ママは不死身だ』などと言っていた。そんな妻が『苦しいから病院に行く』と自ら言い出した時は、嫌な感じがしたんです」

妻と一緒に近所のクリニックを受診したら、すぐに「もっと大きい病院に行ってください」と総合病院の紹介状を渡され、すぐに、専門医の診察と検査を受けた。

「検査後、私だけが呼ばれました。ドラマみたいでした。内科の医師は、『胃の上部に腫瘍があり、手術で胃の全摘出が必要です』と言う。予断を許さないらしく、手術は3日後だという。外科の医師が説明に来るまで、妻とベンチで待っていたのですが、彼女の性格を考えると、がんだと伝えた方がほうがいいと思った。その後、『あ~、やっぱり』と言う。聞けば、ここ1年くらい腰痛に悩まされていたのだそう」

則夫さんは、「結婚前の私なら『どうして言わなかったんだ』と激怒していたでしょう」と続ける。

【手術は大成功したが、がんの進行のほうが早かった。次ページに続きます】

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