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【夫婦の距離】遺品整理で出てきた1冊のノート。そこには初めて知る亡き妻の気持ちが綴られていた~その2~

取材・文/大津恭子

恐ろしくも愛しい、亡き妻の“悪口ノート” ~その2

定年退職を間近に控えた世代、リタイア後の新生活を始めた世代の夫婦が直面する、環境や生活リズムの変化。ライフスタイルが変わると、どんな問題が起こるのか。また、夫婦の距離感やバランスをどのように保ち、過ごしているのかを語ってもらいます。

[お話を伺った人]

横井 仁さん(仮名・64歳) 脱サラ後32年にわたってコンサルタント会社を営んできたが、62歳の誕生日にリタイア。その半年後、最愛の妻・久美子さんが他界した。

~その1~はコチラ】

愛妻が急逝し、1冊のノートの存在が明らかになった。ノートの題名は“悪口ノート”

愛妻が急逝し、1冊のノートの存在が明らかになった。
ノートの題名は“悪口ノート”。見るべきではないと思いつつ、ページをめくると、そこには見慣れた筆跡で、自分への不満が書かれていた。

亡き妻・久美子さんは、誰もが認める明るいキャラクターだった。喜怒哀楽が顔に出ることもあったが、大きな声を出したり、人を責めるような発言をするタイプではなく、家庭では笑顔の絶えない女性だったという。

「1ページ目に書いてあったのが、“宣言”でした。『このノートは、2回我慢したけど3回目に同じことが起きたとき、我慢せずに書きます』みたいな(笑)。それで、最初に書いてあったのが、僕が子供の面倒を見ない、という内容でした。もう30年以上前のことなんですが、確かに数回赤ん坊を風呂に入れた記憶があるくらいですね」

横井さんが会社を興した年の年末に長男が誕生したが、その頃の横井さんは新規顧客を獲得することに必死で、1日18時間は会社にいるような状況だったそうだ。

一方の久美子さんも、出産後2か月目には電話応対や書類作成など、裏方として夫の仕事に携わっていた。夫の実家が近くにあったが、義母には甘えることができない。不慣れな育児はほぼワンオペ状態だった。自営業のため勤務態勢に融通がきいたとはいえ、久美子さんが不安を抱えつつ多忙を極めていたことは想像に難くない。

「ノートには夜泣きに悩んでいるとか、自分が泣きたいとか、そんな私を気遣いもせず夫はいびきをかいて寝ている……とか、僕に対する不満がいろいろ書き殴ってありましたよ。悪口と言うより愚痴に近いものですね。でも不思議なことに、いくら自分への不満を書かれていても、腹が立たないんですよ。もし直接言われていたら、大喧嘩していたと思いますが、よく言わずにいてくれたものだと感心しているくらいです」

【次ページに続きます】

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