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取材・文/沢木文

仕事、そして男としての引退を意識する“アラウンド還暦”の男性。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻も子供もいる彼らの、秘めた恋を紹介する。

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結婚はお見合い、出会って30秒で決めた

今回、お話を伺ったのは斎藤紘一さん(仮名・62歳)。静岡県静岡市で生まれ育ち、高校3年の時に父親の転勤で東京に引っ越す。その後、有名な私立大学に進学。卒業後は商社に勤務し、台湾と日本の往復生活を送る。60歳で定年退職した後、再雇用され今も忙しい生活を送っている。

「2人の息子がいて、下の子には孫も生まれたけれど、やはり家族と私の間には距離があるよね。だって、子供たちが一番父親を必要としていた時に、アジアの国を飛び回っていて、家にはほとんど帰らなかったんだから」

斎藤さんの仕事が乗りに乗っていたのは、バブル前夜から平成にかけて。“モーレツ社員”と言われる時期に就職し、“企業戦士”として活躍することに誇りを持っていた。

「特にウチは半導体を扱っていたので、『“日本株式会社”を支えるのは俺たちだ』という自負があった。会社に入ったら、粉骨砕身し奮闘努力を重ね、滅私奉公し、長く働くことが当たり前だと思っていた。息子が生まれた時には台湾にいて、1週間経ってやっと対面したんだ。あの時、女房はあきれていたよね。でもそんなもんだと思っていた。私が働けば、給料が増えるし、さまざまな手当てもつく。都心の社宅に住んで、かなりの利息が付く財形貯蓄をして、残業すると近くのレストランから出前が来た。今の若い人が聞いたら、驚いてひっくり返るんじゃないかな。会社も頑張りに答えてくれたから、ひたすら働いたよ」

斎藤さんは見合い結婚だった。恋愛結婚が主流になっていた当時にしては珍しい。

「上司が持ってきた縁談で、『斎藤、身を固めないといつか体を壊すぞ』と言われて、自分の遠縁にあたる娘を連れてきた。帝国ホテルのラウンジだったよ。それで、すぐに結婚を決めた。私はあまり物事にこだわらないタチで、『よく見ればかわいいし、健康そうだし、まあいいか』って。女房も『斎藤は出世するから、いい暮らしができるぞ』と言われたらしい。結婚ってそんなもんじゃないかな。お互い期待しないから、うまくいく。それに、この結婚があったから、上司に引き上げられて出世もできた」

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