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【夫婦の距離】駅ナカでシャンパンを飲み干す妻を見た。なぜか声をかけられなかった~その1~

取材・文/大津恭子

駅ナカでシャンパンを飲み干す妻を見た。なぜか声をかけられなかった ~その1

定年退職を間近に控えた世代、リタイア後の新生活を始めた世代の夫婦が直面する、環境や生活リズムの変化。ライフスタイルが変わると、どんな問題が起こるのか。また、夫婦の距離感やバランスをどのように保ち、過ごしているのかを語ってもらいます。

[お話を伺った人]

大西一成さん(仮名・56歳)大手建設会社に勤務し、長年プランナーとして都市開発事業に携わってきた。2年前から関連企業の建築会社に出向し、現在は現場監督の育成が主な仕事。

偶然見かけた、自分の知らない妻の一面。真相を聞くべきか聞かざるべきか

ある日の夕方、仕事途中の大西さんが永田町の駅ナカにあるオープンカフェで遅い昼食をかきこんでいると、見慣れたジャケットを着た女性が視界の片隅に飛びこんできた。壁に向かうカウンター席に座っているため顔はよく見えないが、後ろ姿は間違いなく妻の有美子さんだ。

「『お、こんな時間に何食ってんのかな』くらいで、そんなに驚きはしなかったんです。彼女の会社は永田町近辺にありますから。僕はその日、取引先と長い打ち合わせがあって小腹が空いていて、たまたま乗り換えの駅構内に店があったから入っただけ。本当は会社に戻ってやることがあったんですけど、このまま妻と一緒に帰ろうかなぁ……なんて思いましてね」

ほぼ満席の店内で、大西さんは、7~8メートルほど離れて座る有美子さんの背中を見つめながら、蕎麦を平らげた。そして、驚かしてやろうと思ってそっと近づいたのだが、数歩進んだ地点から足を踏み出せなくなってしまった。

「シャンパングラスが見えたんですよ。そして突然読んでいた本をバンと閉じて、半分以上残っていたシャンパンを飲み干したんです。ちょっと驚きましたね。『シャンパンかよ!』っていうのと(笑)、そのあと、フーッと長いため息をついたんですよね。その横顔が別人みたいで、なんとなく見入っちゃった。僕の感覚は変ですかね?」

大西さんと有美子さんが出会ったのは、約20年前。大西さんが手がけていた都市開発プロジェクトに加わった新人が、有美子さんだった。9歳の年齢差があるもののふたりは意気投合し、結婚に至る時間は短かった。

やがて、プロジェクトリーダーとして多忙を極めた大西さんを支えるべく、有美子さんは退職。一人娘が小学生になると、食品メーカーで経理のパート勤めを始めた。熱心な仕事ぶりが認められ、3年ほどで正社員となって現在に至る。

【次ページに続きます】

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