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【最後の恋】「女子大生と恋がしたかった」大手家電メーカーの元社員。人生の折り返しで足を踏み入れてしまった禁断の道

取材・文/沢木文

【最後の恋】「女子大生と恋がしたかった」元学生運動闘士の熱い思い。64歳で出会った音大ピアノ女子の思惑は……

仕事、そして男としての引退を意識する“アラウンド還暦”の男性。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻も子供もいる彼らの、秘めた恋を紹介する。

今回、お話を伺ったのは小野健一さん(仮名・71歳)。名門私立大学法学部卒業後、大手の家電メーカーに勤務し、60歳で定年退職した。それから友人と一緒に不動産関係のコンサルティングを行う会社を立ち上げ、同世代の遺産相続問題や事業継承問題のサポートをしている。

中肉中背、がっしりした体型、柔和な顔立ち、人当たりはいいのだが、鋭い発言と眼光が印象に残る。いつもサイズが合ったブルー系のシャツにジャケットを着ており、清潔なハンカチを持っている。小野さんの奥さんは、どこか少女の面影が残るほがらかな美人だ。きっと彼女が身の回りの世話をしているから、小野さんは好感度が高いルックスを維持できているのだろう。

「俺は遊んでいる方だと思うよ。30歳で結婚し、80歳で死ぬまでの50年間、女房1人だけってことはありえないだろう。これはどこかの俳優も言っていたよね」

そこそこ自由になるお金があり、女性の話を聞くのが上手な小野さんはモテる。その理由は、この世代の男性にしては、女性を見下している発言をしないからだろう。団塊の世代が育った時代の風潮を言葉にすると「女子供なんて」「俺達が社会を作ってきた」「黙って俺についてこい」などだろう。

小野さんは相手の話を最後まで聞き、相手の意見を肯定する。筆者はワインパーティーで小野さんと知り合ったのだが、会場のエレベーターで、相手を先に乗せ自分は最後に降りたところに非常に驚いた。それも相手にそのことを悟らせていないのだ。その理由を聞くと「姉が3人いて、女性を尊重しないと怒られていたからだろうね」と笑顔で語っていた。

そんなモテる小野さんが妻以外の女性に興味を持ったのは52歳のとき。

「息子が大学を、娘が高校を卒業した時に、ホッとしたんだよね。そんなときに、行きつけの飲み屋さんの顔なじみの女性にフラフラッときちゃった。3歳年下で、明るい所で見たら、そんなに好みじゃないかもしれない。でも、心を動かされた。あれは不思議な感じだったな」

その女性は、華やかな顔立ちをしている元女優だったという。どこかの経営者の愛人をしていたときに、新宿にマンションを買ってもらい、そこに住んでいた。ロングヘア、ぱっちりとしたアーモンドアイ、豊満な肉体、はすっぱな物言い……妻とは全く真逆だったという。

「当時は会社員だったから、これは危険だと思ったんだよね。基本的に憶病なほうだから、『これが安全』という確約がないと、前には進めない。でも恋心と言うか、ふわっとした気持ちを味わえたのはよかった。これがいわゆる“ときめき”なんだろうな、と思っています」

そこから弾みがついた小野さんは、何人かの女性と食事に行くようになる。もちろん、2人きりで。

「高校の同級生関連が多いかな。仕事関連の女とは絶対に行かなかった。ある種の女性は、“食事に誘われた=セクハラ”と思うじゃない。そういう目で見られるのは嫌だったから。それに、店や支払う金で値踏みされるしね。大学時代にそういう女性とデートに行ったら、『小野君と付き合っている』とみんなに言いふらされ嫌な思いをした。だから食事の相手はなるべく結婚していて、聡明であり、恋愛に進まなそうだけれど、ちょっとした色気を楽しめるような女性を選んでいた。ある程度の年になると、そういうことはわかるようになってくるよね」

食事でふわっとしたときめきを楽しめたのは、仕事が忙しく家庭があったから。

「仕事という接点がない中年男女が月に1回、忙しい時間の合間を縫って、食事を楽しむのは1~2か月に1回くらいでしょ。女性から誘われそうな雰囲気になったこともあったけれど、社会的責任があるじゃない。やはり、不倫のハードルは高いよ。でも、63歳の時に、定年後の仕事も落ち着いてきて、会社員時代の2/3程度の収入を得られるようになったときに、『俺は自由になった』と思ったんだ。会社にとらわれることもない。社会的責任もない。自分の責任を全うしたという感じがあった。そこで、今までとは違うことをしようと思ったんだ」

【小野さんが本当に恋愛したい相手は、40歳以上年下の女性だった……後編へ続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。

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