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【最後の恋】「まさか、妻以外の女性とこういう関係になれるなんて……」妻の病没後に開いた恋の花

取材・文/沢木文

仕事、そして男としての引退を意識する“アラウンド還暦”の男性。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻も子供もいる彼らの、秘めた恋を紹介する。

今回、お話を伺ったのは高橋健司さん(仮名・63歳)。現在、大手企業の専務をしている。出身は鳥取県で大学進学と同時に上京した。子供のころから神童と言われるほど頭がよく、県立のトップの進学校から、現役で東京の有名私立大学に進学した。

家庭は安らぐ場所ではなかった

「でも、同級生の間では肩身が狭いんだよね。ウチの高校って、旧帝国大学系じゃないと、同窓会で大きな顔ができないんだ」

学年でトップクラスの成績だったのに、進学したのは私立大学……若いときにその挫折経験があるからか、高橋さんは女性に対してフラットだ。時代背景もあるのだろうが、高橋さんと同じ世代の男性は、女性に対して高圧的な感じを受け取ることが多い。しかし、高橋さんとの3年間に渡る付き合いの中からそれを感じたことはない。

筆者が高橋さんと知り合ったのは、日本酒の蔵元が主宰する美食の会だ。2年前に奥様を子宮がんで亡くされてから気落ちしていた時だった。その当時と比べると、今は姿勢がグッとよくなり、目が輝いている。若くなったことを指摘すると「仕事が忙しくなってね」と言っていたが、酔いが進むにつれて「自分の人生を生きるようにしたんだ」と話し始めた。

高橋さんにとって、家庭は安らぐ場所ではなかった。

「女房が見栄っ張りでやかましい人で、娘2人を名門私立に進学させたり、俺の給料が少ないとなじったりして、ホントに大変だったんだよ。ウチの会社に入って来た短大卒の女の子を口説き落として結婚したから、別れるという選択肢はないし、そもそも今みたいに簡単に離婚できるような時代じゃなかった。女房からは、給料が少ないこと、出世が遅かったこと、家事や育児を手伝わないことの文句を30年間言われ続けていた。でも男って不思議なんだよね。強いものに巻かれてしまうんだ。女房にガミガミ言われても思考停止して乗り切るという」

そんな高橋さんは、妻の影響が強烈だったから、娘たちとは仲がいいという。

「亡くなって2年、娘たちもママには感謝しているものの、結婚生活にはあまりいいイメージがないのかもしれない。結婚する気もないみたいだよね。上の娘は28歳で大手商社に勤務し台湾に赴任。3つ下の妹の方は契約社員とかしているみたいで、家に1円もお金を入れないけれど、結構楽しそうだよね。あんなに頑張って名門学校に入れたのに“楽しいことだけして生きていく”と宣言されちゃったらね、もう男親は何も言えない」

下のお嬢さんと暮らし、その姿を見ているうちに、高橋さん自身の“楽しいこと”って何だろうか、と思うようになったという。

「ふと冷静に考えてみると、これまでの人生で好きなことをしていないんだよ。親に言われて剣道をやり、友達に誘われてバスケットボールをやり、大学時代は麻雀をしてジャズ喫茶に行っていたけど、どれも好きではなかった。俺たちの時代は、修行僧みたいに音楽を聴いて、苦いコーヒー飲みながらハイライト吸って蘊蓄を語る時代だから、そもそも楽しくないんだよ。もちろん、仕事や勉強は好きだけどそれも受け身だったことが多い。だから、悩んじゃったんだよね」

そんな思いがあったから、前出の日本酒の会に参加した。高橋さんはお酒に強く酒好きだ。

【次ページに続きます】

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