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なぜ夫と別れても妻は変わらず健康なのか?

文/鈴木拓也

「長寿につながるライフスタイルはなんであろうか?」――この長年の疑問を解くヒントが、アカデミズムの現場から続々と出ている。その中でも代表的な論文”Social Relationships and Mortality Risk: A Meta-analytic Review”によると、なんと、酒やたばこを控えるとか運動をするといった「健康的なライフスタイル」をしのいで「社会とのつながりの種類や量が多いライフスタイル」が、長寿をもたらす要因としてトップに君臨している。この結果には研究者らも驚いたという。

こうした研究結果をもとに、日本人の社会とのつながりと健康との関係を論じた読み物が5月に刊行されている。書名は、『なぜ夫と別れても妻は変わらず健康なのか』(ポプラ社)。

書名からして惹き込まれるが、これはシニア層の婚姻状況(未婚、既婚、死別、離婚)がその後の総死亡リスクにどう影響するかの調査結果を、一言で言い表したもの。

男性の場合、死別や離婚によって独身状態にあると、既婚者に比べて約1.3倍、約1.5倍に総死亡リスクが跳ね上がるが、女性は相手と死別・離婚しても総死亡リスクに変化は見られない。これは、男性は定年退職を機に社会的なつながりが一気に薄まって、妻を頼る傾向があるのに対し、女性は友人や地縁が比較的あり、夫との別れによる精神的ダメージを軽減できていることを示している。

本書の内容は、そうした夫婦の離別が健康リスクに与える影響にとどまらない。弱いつながりが、若手世代の就活の成功率とどう関係するか、フェイスブックによるつながりで健康になれるかなど、「つながり」と「健康」の相関関係を解きほぐす良書である。

もちろん、シニア層が直面するつながりの減少と対策についても、多くのページが割かれている。

周知のように日本は、WHOが「超高齢化社会」と定義するカテゴリの中でも世界一の高齢化率(約28%)。そして、社会的に孤立した高齢者の増加が社会問題となっている。

東京大学高齢社会総合研究機構で講師を務める著者の提示する処方箋は、「社会参加活動」に「自分から飛び込む」ことだという。社会参加活動の定義は、「家庭を超えた地域社会を基礎にして、同一の目的を有する人々が自主的に参加し、集団で行っている活動」とされ、著者は具体的に以下の活動を挙げている。

町内会・自治会、婦人会のように地域で活動するものもあれば、老人会のように全国に存在する組織、あるいは、商工会や同業者団体など仕事ベースの活動もあります。

俳句や写真などの趣味・教養のグループ、ウォーキングやヨガなどのスポーツや運動のグループ。旅行サークルのような活動をしているところもありますし、カルチャーセンターのような所で活動しているものもあります。

福祉や環境問題などに取り組むボランティア団体やNPO、政治団体や宗教団体、同窓会なども社会参加活動に含まれます。
(本書188~189pより引用)

「こうした多種多様な活動に参画することは高齢期の健康の維持・増進に大きなメリットを与えてくれます」と著者は力説する。それには、認知症発症や要介護のリスク抑制も含まれる。そして、かけがえのない生きがいを得られる可能性もある。

しかし、社会参加の機会は、今までどおりの日々を送っていて向こうからやってくるものではない。一歩踏み出して中に入る勇気は必要だ。これを億劫に思うかどうかで、シニアライフの充実度に雲泥の差が出るとも。

本書では、女性は60代から次第に幸福度が低下する点についても触れているが、その原因は、家でなにもせずにゴロゴロしている夫にあるという。こうなると、「老後をどう暮らそうが勝手」などと開き直ってはいられない。もしも、社会との接点がほとんどない生活を送っているなら、自分のためにも、奥さんのためにも、積極的に社会参加に打ってみるべきだろう。

【今日の健康に良い1冊】
『なぜ夫と別れても妻は変わらず健康なのか』
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8201150.html
(村山洋史著、本体800円+税、ポプラ社)

文/鈴木拓也
2016年に札幌の翻訳会社役員を退任後、函館へ移住しフリーライター兼翻訳者となる。江戸時代の随筆と現代ミステリ小説をこよなく愛する、健康オタクにして旅好き。

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