妻に魅力を感じたのは、結婚願望がなかったから

康夫さんの妻は、出会った当時、「おせっかいな先輩が変な男を連れてきた」という表情を隠さなかった。

「最初はムッとしましたが、話すうちに彼女がとても温かく思慮深いことがわかったんです。そして絶対にウソをつかない。言いたいことはハッキリ言います。それがとてもラクで、私の方からアタックしました。彼女は気が進まないようでしたが、押して押して、押しまくった。それと同時に、ウチの両親が見合いを進めてきた。そこで『結婚したい人がいる』と言ったんです。すると、ウチの親も興信所を使って調べたらしく、父が『もっと美人で若いコがいるだろう』と言ってきたのです」

それに対し、カッとなり親子げんかに発展。親に彼女を会わせないことには、おさまりが付かなくなり、康夫さんは交際1年で、実家に彼女を紹介しに行く。

「ウチの両親は、彼女とちょっと話して、彼女が思慮深い女性とわかって、諸手を上げて賛成してきたんです。帰りがけに母はとっておきのアンティークビーズのバッグを妻にプレゼントしていました。『康夫を見捨てないであげてね』と言ったとか。でも妻は最後まで結婚に乗り気ではなかった。仕事をずっと続けたいと思っていたようだし、向田邦子さんに憧れてもいたので」

当時の女性として、キャリア志向は珍しい。それには、奥様が育った環境も影響している。

「妻の祖父は、大学教授で、彼女は母親や祖母から、祖父が戦前に弾圧されて大変な目に遭った話を聞いていたそうです。寡黙な祖父はいつも穏やかに笑っていたそうですが、体には拷問の跡が残っていた。やがて、戦後になり、世の中がガラリと変わった。周囲の大人の話を聞きながら、常識がひっくり返っても、生きるにはどうしたらいいだろうかと、少女ながら模索していたみたいですね」

当時の康夫さんの周囲には、結婚願望が強い女性が群がっていた。

「ニコニコ笑い、おだてのことば、料理上手や気が利くアピール、育ちの良さの強調……25歳くらいまではそれも楽しかったけれど、だんだん仕事が面白くなってくると、恋愛は二の次になり、女性を欲望のはけ口にしていた時期もありました。そんなときに出会ったのが妻です。妻は私に対してお世辞を言わないし、へりくだらない。僕は下手に出てくる女性にイライラするんです」

【妻の交通事故死、悲しみをどのように乗り越えていったのか……~その2~に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。

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