コンプレックスだらけの娘の恋愛

嘉之さんが語る娘は、引っ込み思案で自分に自信がないタイプのようにも感じる。どのようにして外国人男性と知り合ったのだろうか。

「だから最初に言ったように、SNSとかアプリですよ。向こうからメッセージが来て、それに応えた娘を沼に引きずり込んでいく。娘はその相手の男性に会ったことがないんですよ。すべてメッセージのやり取りだけ。相手はプロですから、娘のようにコンプレックスだらけで恋愛経験が少ない女性の心の動きを把握し、自分のいいように支配していくんです」

会ったことがない人に、多額のお金を渡してしまう。それは詐欺師が「あなたと結婚したい」「あなたと死ぬまで一緒にいたい」「あなたはとても美しい」「あなたのメッセージが楽しみです」などの甘い言葉をささやくからではないか。

「娘はいつまでも、白馬の王子様が自分を迎えに来てくれると思っている。幼いころから、シンデレラとか美女と野獣、白雪姫とかの童話もアニメも大好きでしたからね。他人から愛の言葉を言われ慣れていないから、コロッと夢中になってしまう。今の白馬の王子様は職場にいるんですよ。かつての部下を見ていると、優秀な人同士が結婚している。そうでもない人はそれなりの人と結婚する。優秀な人同士が結婚して、優れた能力の子供が生まれる。またその子供は、自分と同じ能力の人と交際し、その子供が……と続いていく。少なくとも私がいる世界は、そのような連鎖が起こっている」

官僚の息子(35歳)の妻(38歳)も驚くほど優秀だという。

「“お嫁さん”なんて軽々しく言えないくらい。息子はモテるから、それなりの女の子と付き合っていたけれど、最終的に選んだのは、自分の上司だった。孫(4歳)も優秀で、小学校受験をする。まあ問題ないでしょう」

嘉之さんの亡き妻は、「デキない子ほどかわいい」と、娘をかわいがっていた。

「だからダメだったんですよね。おそらく妻は私にわからないように、娘に金を渡していた。不憫な人に何かしたい女性でしたから。“2度あることは3度ある”で、娘はこれからも悪い男に引っかかって行く。私も娘だから、結局見捨てられないのだと思う。娘は私の妻に顔が似ているんですよ。この世にいないから言えるのですが、私は妻のことだけを信頼していた」

今、嘉之さんが恐れているのは、息子夫婦に迷惑をかけること。

「これだけはどうしても避けたい。そこで今、私は都内でマンション投資を始めたんです。これは子供たちには言っていないのですが、家賃収入で老後資金を補填できるのだという。信頼できる元部下にすすめられたんですよ」 そのマンション投資は信頼できる企業が運営しているから間違いがないという。しかし、その物件に入居者がいなければ、かなり厳しい運用になると推測される。嘉之さんの老後は、どのようになって行くのか。それは本人にもわからない。

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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