夫は自分と同じキャリアを子供たちにも求めた

夫と陽子さんは見合いで結婚した。

「お互いに恋愛結婚できるタイプではなかった。主人にしてみれば、自分は企業戦士であり、恋愛とか結婚とか考えている余白がなかった。それは私も同じ。私はとにかく25歳までに結婚がしたかった。実家もそこそこの家で、短大まで出ている私は、主人にとっていい結婚相手だったと思いますよ。それに、息子が生れるまで私のことは大切にしてくれました。特に利発的な長女のことはかわいがっていて、4年前にガンが見つかり余命宣告されたときも、私と長女にかなり多額の財産を残した。“あとの2人は味噌っかすだ”って」

夫は、自分と同じようなキャリアを歩む長女を信頼し、深く愛していた。

「いわゆる“育メン”ではないですよ。でも、長女にはかなり心の中を打ち明けていた。だから、下の2人は視界に入ってもいなかったんじゃないかな」

陽子さんの話を聞いていると、夫にとって家族は優秀な長女だけであり、そうではない次女と長男は夫自身とは無関係な“陽子さんの子供”という扱いなのではないかと推測する。

「まさにそうです。幼い頃長男が夜泣きすると、会社の研修所に何日も行ってしまったり、次女と長男がはなしかけても“うるさい”と。長女と2人で博物館や美術館に行くのに、下の2人は“バカはどこに連れて行っても無駄だ”と。夫の中では全員が利発な子に育つ予定だったんでしょうね。父親から無視されれば、そりゃ歪みますよ。問題があると“陽子のせいだ”と言われ、泣いたこともありました」

次女は我が身を削って相手に与えてしまう。

「次女は過度に献身をしてしまうんです。かわいそうな人を見ると、いてもたってもいられなくなる。中学生のときに阪神淡路大震災があり、“助けに行きたい”と生理ナプキンを10袋持って被災地に飛んで行った子ですから。そこで知り合った大学生と同棲して、やっとのことで連れ戻したんです」

その後“国連で働きたい”“海外青年協力隊になりたい”などと言い出す。

「高校で進路を決めるときに、動物愛護団体の活動を始めて、せっかく進学した短大を数カ月で中退。動物愛護って、本当にお金がかかるんです。寄付が少ないから、ほぼ持ち出し。42歳の今も独身で保護猫活動をしています」

【次女と10年以上同棲している彼に、生活費を渡す理由は……後編に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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