妻のがん治療に2000万円

息子が奔放になってしまった原因を聞くと「考えられない」という。

「性的なことはシャットダウンしていたし、家でもそういう話は一切しなかった。恥ずかしく、汚いことだと教えていたので、なぜ、息子が今のようになってしまったのかは、わからない」

今は性教育を親が行うことは、自己肯定感を高めるという考え方が主流だ。そのことを聡志さんに伝えると「寝た子を起こしてどうする。学校が教えるのではないか」と返事が来た。

「その後、妻のがんが発症し、4年間で最先端の治療を行い、2000万円くらいかかったが、亡くなってしまった。妻が亡くなってから、息子が一緒に住みたいと言ってきたので、“俺のことは心配するな”と断ったら、“金がないので住ませて欲しいんだ”という。息子の勤務先は、高給で知られる企業で、息子はそれなりに出世をしている。いったい何があったのかと聞くと、“手取りが2万しかないんだよね”と笑ったという」

聞けば、給料を慰謝料として差し押さえられていたり、支払わねばならないお金が多数あるからだという。息子は3回結婚しており、それぞれに子供がいる。

「あれこれ払ってしまうと、給料日に2万円しか手元に残らない。もう限界だという。一番驚いたのは、息子が結婚していたこと。2人の娘がいるシングルマザーと入籍し、その時に都内にマンションを購入。自分は住んでいないのに、そのローンを払い、結婚生活を維持するための金をその女に振り込んでいたこと」

息子は「交渉はめんどくさいから、払った方が楽だ」と言った。

「今更こんなことを言うのはよくないかもしれないけれど、あれは妻がなにもかも片付けていたから、こんなことになったんだと思う。カーリングみたいに、息子が進む方向のゴミや塵をすべて掃除していた。そして僕も、息子が困ると、ヘリコプターで救援物資を送っていた。そんなことをしていたら、自分で何もできない人になってしまった」

勉強や仕事は、努力の結果が明確に出て、ゴールまでのセオリーがある。しかし、男女関係はそうはいかない。

「そうか……そのことは気付かなかった。息子は関係を持ちたいのだか、相手の女性を愛しているのかさっぱりわからない。自分でもよくわからないから、やみくもに関係を結んでいるのかもしれない。また、息子がもう1回結婚したら、もし誰かを妊娠させてしまったら、私の老後は完全に破滅する。息子の避妊手術でもしたい気持ちですよ。でもそれでも、息子はかわいいんです。あの中学受験合格の日、あの日のうれしかった思いを時々思い出しています」

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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