縁もゆかりもない場所に、頻繁に行く母

心配になった里美さんは、母親のところに行き、交通系ICカードを、「チャージしてくるから」などと理由をつけて借りることに成功。カードの使用履歴を調べてみると、都内の大型団地のあたりに頻繁に行っていることがわかったのだとか。

「母は、父が亡くなってから、運動をしなくなり、足腰が弱っています。それなのに、片道2時間はかかる縁もゆかりもない団地に、週に1回は行っている。これについて聞くと、また凄まじい剣幕で怒るので、ちょっと聞けません」

通帳の出金履歴と、目的不明の外出の時期が重なっていることも気になったといいます。

「シニア層を狙った特殊詐欺が多く、暴力を振るわれることもあるといいます。母は私にとって大切な人なのです。今のところ、引き出された100万円がどのように使われたかわかりません。母は現金で買い物をするし、レシートなども取っていない。いったい何があるのか、気になっているのです」

単刀直入に聞きたくても、お母様は本心を子供達には明かさない。

「この多額の現金引き出しを兄が知ったら、母に対してどんな暴言を吐くか……。私が、半年前に母にスマホを買ってあげたんですけれど、それを知った兄が“年寄りにはそんなのムダだろう”と一喝。私も兄をなだめて、表面上は兄に同調していたら、母がまたへそを曲げてしまったんです」

お母様はスマホを手に入れてから、映画を観たり、好きな俳優のSNSを見たり短大時代の友達とつながったりして、楽しそうにしているのだとか。

「私、高校時代に夫に出会って駆け落ちして、両親に本当に心配と迷惑をかけたんです。母は陰日向に私を守ってくれました。まだ親孝行をし足りないし、コロナが落ち着いたら一緒に海外旅行もしたい。まだ元気で生きていてほしいんです」

【母はバスと電車とタクシーを乗り継いで、見知らぬ住宅街をうろついていた……その2に続きます】

探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/

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