息子はとにかく、プライドが高い

益恵さんの夫は「働かなくては死ぬという思いもないし、家族もいない。向上心もないし、プライドだけが高い。おばあちゃん子はだからダメなんだ」と言った。

「カチンとくるでしょ! 自分は、仕事、仕事って子供に向き合わなかったくせに、問題が起こると私のせいにする。この一言で大ゲンカですよ。主人もちょっと心が痛んだのか、息子と少しずつ話すようにしているけれど、“あいつはプライドばかりが高くて、卒業大学や保有資格のランクで人間を判断している。あまりにも未熟で驚いた”と言っていました」

聞けば、息子はとてもプライドが高い。祖母と母親から「かわいいね」「優秀だね」と言われて育ってきた。辛いことがあると、逃げかえる家があり、肯定してくれる母と祖母がいた。

体育会系の部活で、苦行のような練習を行い、勝ち負けに涙したこともない。20代前半の人間成長の機会に、所属していた組織からも、自分自身からも逃げてしまった。仕事から離れて10年、家族以外の社会と繋がらなくなって数年……。

「コロナ禍になって、死を考えるようになったでしょ。息子に“これからどうする?”と聞いたら、“考えていない”って言うんです。でも聞かれるのがイヤみたい。怖いんでしょうね。でも、それでもいいかなって。息子と同級生の女の子は、アメリカ留学までしたのに、ずーっと派遣社員。海外旅行で知り合った男性との間に子供を作って、しかも年子ちゃんで、小さなご実家に6人がすし詰めになって生活しているんですって。お婿さんも仕事をしないし、お金が出ていく一方だって、お友達はボヤいていた。しかも刺青を入れているから、ギョッとするそうよ。それに比べれば、ウチの息子はまだマシ。いざとなれば、お姉ちゃんという血を分けた姉弟がいますから、孤独にはならないと思うんですけれどね」

10年間、先送りにしていた問題は、また10年先送りにするのか。今のところ、潤沢な貯金と、厚生年金、ローンはなくリフォームしたばかりの一戸建てはある。しかし、不動産などの“金を産む”資産はない。

「いざとなったら、何とかするでしょ。資格でも取れれば、食べて行けるし」と益恵さんは言うが、その日は果たしてくるのだろうか。

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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