取材・文/沢木文

親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970代~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。

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千葉県市川市に住む宮本益恵さん(仮名・75歳)の息子(45歳)は、この10年間、司法試験の勉強を理由に家にいる。「あっという間に時間が経っていた」と語る。

【その1はこちら

ロースクールに通ったが、途中で行かなくなる

当時35歳の息子は、都内の社会人向けロースクールに通い始める。しかし、意気揚々と通ったのは3か月くらいまで。そのうち「行きたくない」と言い出して、自宅での勉強に切り替えるようになる。

「主人が叱ったのですが、“僕はパパみたいにできない”と言って、部屋にこもるようになってしまったんですよね。さすがに主人もまずいと思ったのか、2人で山登りに行ったりしていましたけれど、息子は運動がてんでダメで。主人も私もゴルフとテニスが好きなのですが、息子はからっきし。スキーもやりませんからね」

その後、息子は、“なんとなく”家の手伝いをしつつ、歴史の勉強をしたり、宅建の資格取得を目指したりしつつ、司法試験の勉強を続けていた。

「その頃に、なんでロースクールに行かなくなったのかと話を聞いたら、周囲の人が圧倒的に優秀で恥ずかしくなったんだそうです。それこそ、企業の法務部に勤務しながら通学していたり、死刑廃止を目指し、社会を変えるために弁護士を目指したり、議員秘書の経験がある人もいたそうです。そんな人たちがわき目も振らずに勉強していて、無理だと思ったとのことなんですよ。あの子らしいといえば、そうなんですけれどね。自分はモノを覚えるのに時間がかかるから、ゆっくり勉強するって」

それに対して、益恵さんの夫は「甘ったれるな」と一喝するも、息子の心には届かなかった。息子にしてみれば、母の庇護下にあり、祖母の遺産は口座に潤沢にある。友達も少なく、何かが欲しいとか、華やかな世界に行くタイプではない。

趣味は歴史を調べることで、恋人がいるわけでもない。それに、ネットゲームに課金しないし、生まれつきアルコールに弱く、酒も飲まないし、タバコも吸わない。

「お風呂が好きみたいで、1日朝と夜の2回入っています。またこれが長いの。食事は私たちと一緒に、1日3回食べて、午前中は勉強していて、午後になるとパソコンをやっているみたい」

息子は、この10年間、家族以外の人と話をしたことがないのか?

「一度、息子が40歳の時に、主人がものすごく怒って、主人の兄と息子……つまり、息子にとっては伯父と従兄が経営している電設会社に頼み込んで引き取ってもらったんだけれど、本人にやる気がなさ過ぎて、連れて行ったものの帰ってきてしまったのよ。主人は“中年になった息子と、老人のオレと、無意味な小旅行だ”って笑っていたけれどね」

【社会と数年間隔絶すると、復帰に恐怖があるのではないか~次ページに続きます】

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