取材・文/沢木文

親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970代~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。

* * *

息子は高校受験で失敗した

千葉県市川市に住む宮本益恵さん(仮名・75歳)は、45歳の息子が、ここ10年間家にいて、司法試験の勉強をしていることに気が付いたという。

「あっという間に10年って経っちゃうんですね。この前、震災で水を運んでいた少年が、20歳になったというニュースを見て、“え!? もう10年!?”って」

息子がブラック企業を辞めたのは震災の年。

「インターネット広告会社を転々としていたんだけれど、転職するたびに待遇が悪くなり、夜中まで働いて土日もイベントだ、何だって仕事に出ていく。缶のエナジードリンクが息子の部屋から山のように出てきて、体臭も臭くて、目の焦点も合わなくなっている。それで私が“そんな会社、やめなさい”って怒ったんです」

そのとき、益恵さんの夫は「あいつ(息子本人)に任せておけ」と言ったそうだ。

「でも、青白い顔して、満員電車に揺られて行って、ゾンビみたいな顔して、終電で帰ってくる。そんな生活していたら死んじゃいますよ。息子は不満だったみたいですけれど、35歳ですからね。大手企業に転職するならラストチャンスでしょ? だから一度やめさせて、再起してもらおうと思ったんです」

息子さんのプロフィールを伺うと、県立名門高校を目指したが、補欠になったものの不合格。都内の私立高校に通い、中堅の有名私立大学法学部に現役で合格した。本人は、父親と同じ早慶レベルの大学に行くものだと思っていたが、その下のランクの大学も不合格になったことで、自信を喪失。本人にとって不本意かもしれないが、入学した大学は、浪人して入学している人も多い人気校だ。大学はギリギリの成績で卒業したという。

「就職活動を頑張っても氷河期でしょ。最初は東証二部の食品メーカーの営業で入って、長野の営業所に配属になったんだけれど、体育会系のノリについて行けず、1年で退職。その後も5~6社転職したかな。いじめとかもあったみたいですよね。でも優秀でいい子なんですよ」

【母と祖母の愛情と世話を一身に受けて息子は育つ。次ページに続きます】

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