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取材・文/坂口鈴香

警察庁の統計によると、認知症またはその疑いによる行方不明者は全国で15,863人(2017年)。年々増加傾向にある。そのうち99%は1週間以内に発見されているが、2017年の行方不明者のうち227人が発見されていないという。

家族にとっては、行方がわからないもの心配だが、事故に遭ったりケガをしたりしていないか気が気ではないはずだ。

前編では、行方がわからなくなった認知症の人を捜索したり、身元を特定したりできるツールや地域の取り組みを紹介した。後編では、地域住民として何ができるのかを考えてみたい。

【前編はこちら

地域住民として捜索に協力しよう

前編で紹介した「高齢者の見守り・SOSネットワーク」のように、行方不明になった認知症の人の捜索に、地域住民の力を活用する取り組みがある。

緊急連絡ステッカーと捜索協力支援アプリとを組み合わせて、行方不明者を捜索する「みまもりあいプロジェクト」だ。

行方がわからなくなると、捜索協力支援アプリをインストールしている地域住民に、捜索依頼と行方不明者の特徴などの情報が通知される。

発見者は、その人の衣類や持ち物に貼り付けられている緊急連絡ステッカーに記載されたフリーダイヤルに電話すれば、発見者も家族も個人情報を出さずにやり取りできる。行方不明者の家族も、警察などに相談する手間がいらず、アプリ利用者に捜索依頼をダイレクトに発信できる。

緊急連絡ステッカーを身につけている認知症の人の捜索や早期発見には、捜索協力支援アプリをインストールする協力者が欠かせない。

認知症高齢者は462万人(2012年)。団塊の世代が75歳以上になる2025年には約700万人が認知症になると言われており、一人歩きによる行方不明は決して他人事ではないはずだ。まずは捜索協力支援アプリインストールしてみてはどうだろう。

この人は家に帰れなくなっているのではないかと思ったら

「もしかすると、この人は認知症で、道がわからなくて困っているのではないだろうか?」と思った経験のある人はいないだろうか。そう思っても、なかなか声をかけるのはむずかしい。間違っていると失礼だし、相手を怒らせてしまうかもしれないと、躊躇する人も少なくないだろう。

特別養護老人ホームに勤務する介護福祉士は、「この人は認知症で今どこにいるのかわからなくなっているのではないか」と思ったときに、どう声をかけたらよいのか、このようなアドバイスをしてくれた。

「認知症の方は視界が狭くなっていることがあるので、後ろから急に声をかけると驚かせてしまいます。必ず相手の視界に入ってから、まず挨拶をし、何かお困りではないかを尋ねてください。認知症ではないかと思ったら、当たり障りのない話をしながら一緒に安全な場所に移動し、目を離さないようにして警察に連絡するか、交番にお連れしましょう。お名前や連絡先がわかるようでしたら伺い、また注意をして見ていただくと、衣類やバッグなどにお名前や連絡先が書かれている場合があるので、そちらに連絡されるとよいかと思います」

◆声かけのポイント

・驚かせないよう、相手の視界に入ってから声をかける
・挨拶をしてから、「何かお困りではないですか?」と聞く
・ゆっくり、穏やかな口調で話す

『どうせ治らないのなら、死んだほうがマシかな』46歳で若年性アルツハイマー型認知症になった下坂厚さんに聞く」、「不便だけど、不幸じゃない」に登場いただいた若年性アルツハイマー型認知症当事者の下坂厚さん(47)は、一人歩きして家に戻れなくなる認知症の人の気持ちについて、自身の体験も交え語ってくれた。

「本人は迷っていることに気がついていなくて、『何でたどりつかないんだろう?』と思っているかもしれません。あるいはただ行きたいところのイメージだけが頭にあって、私もそうなんですが、どれだけ歩いてきたかといった、距離や時間の認識はたぶんないと思います。ですので、『迷っているんですか?』と聞くより、『何かお手伝いしましょうか』『もしかしたら迷っておられるかもしれないですね』のような感じで聞いてもらえるとありがたいです。もっとも私の場合は若いので、迷っていても気づかれにくいと思いますが(笑)」

それから、「あくまでも自分の感覚ではあるが」と前置きをしたうえで、家族へのアドバイスもしてくれた。

「認知症が進んだとはいえ、まったく知らないところへは行こうとしないでしょう。若いころに住んでいたなどと、その方の記憶を頼りに行動すると思うので、家族や介護者はあらかじめその方の歴史とか好きなものなどの情報を知っておくことは重要だと思います」

「みまもりあいプロジェクト」に取り組む一般社団法人セーフティネットリンケージは、商店街や自治体などと連携して「見守り訓練」を行っている。前編で紹介した「高齢者の見守り・SOSネットワーク」活動の一環として、捜索の模擬訓練を行っている自治体もあるので、そういう機会を利用して声かけの体験をしておくこともおすすめしたい。

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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