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取材・文/沢木文

親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970代~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。

* * *

向井則夫さん(仮名・70歳)は、元高校教師だ。公務員としてキャリアを全うしてからは、35歳になる娘の買い物依存に悩まされ続けている。則夫さんの妻は25年前、35歳の時に浮気相手と駆け落ちする。娘は常に「母親に捨てられた」という孤独を抱えていた。

【その1はこちら

中学生時代の小遣いは、月5万円以上

妻が家出した当時、則夫さんは45歳。働き盛りで家庭を顧みず、当時10歳の娘は、則夫さんの母親に任せっぱなしだった。

「今思えば、母親もいやいや面倒を見ていた。娘は察しがいいから、5年生の時に“おばあちゃん、一人でできるから”と言って自立した。それからは、最初はつたないながらも、家事全般をこなしていた。小学校6年生の時に、娘が“タダ働きは嫌なので、お金をください”と言った。娘に当時の最低賃金である“時給650円で雇うよ”と言うと、目を輝かせた」

中学生が、月に5~6万円のお小遣いを手にするようになる。

「こっちも便利だしね。そのほかに何でも買ってやった。食費と雑費の家計も任せていたんだよね。そのころからお金を使う喜びを知っちゃったのかな」

それまで、節約家の母親と祖母の影響下でひもじい思いをしていた娘は、堰を切ったように買い物を始める。

「大量の菓子、文房具、人形が溢れかえった。リビングの中にあらゆるキャラクターの商品が並び、ペンケースをとっかえひっかえして学校に行く。友達にもプレゼントしていたみたいで、相手の保護者が“こんなものをもらえません”と返しに来たことがある。問題を抱えた子には、ご飯を食べさせたりしていたみたい。ホントに娘は優しい子なんですよね」

高校時代にはブランド物と服に目覚めた。家族カードを勝手に作られて、毎月10万円以上買い物されたこともある。

「当時、家族カードはもっともらしい理由をつけて、申請すれば作れた。私はお金に無頓着というか……親からお金は汚らわしく、口に出すのははしたないと言われていた。恬淡としていることをよしとしていたから気が付かなかった」

娘は派手な私立高校に進学した。ヴィトンだプラダだと買わされることがあったという。

「不憫な思いをさせているので、贖罪の意味もあったと思う。短大に進学するときにすったもんだあって、ハリーなんとかっていう100万円くらいのネックレスを買わされた。社会人になってからも、ドコドコの時計が欲しいと言われたので買った。“買えない”というと、ものすごく悲しそうな顔をする。母親が出て行ったときの、娘のあの悲しそうな顔は見たくないので、ローンを組んで買った」

娘は買ったものを大切にしないどころか、開封すらしないことも次ページに続きます】

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