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夏目漱石、翻訳依頼で『坊っちゃん』推しと発覚。【日めくり漱石/5月18日】

3 夏目漱石 2

今から100 年前の今日、すなわち大正5年(1916)5月18日、漱石は小樽高等商業学校(現・小樽商科大学)の英語教師ジョーンズに宛てて手紙をしたためていた。

何日か前に、漱石の小説『二百十日』を英訳出版したいので許可してほしいという内容のジョーンズの手紙が、漱石のもとに届いていた。その返書なのである。

漱石の返答は、おおむね、以下のようなものだった。

「その翻訳出版が教育のため、もしくは他の公共の目的のため、または単なる個人的な楽しみのためならば、無条件に出版を承諾するのみならず、そうした尽力に謝意を表したい。またもしそれが、相当の物質上の収入を目的とする事業としての出版ならば、著作権者として応分の取得を請求したい。これは利得の問題というより理非の問題として申し上げるものである。」

翻訳出版に関する著作権の扱いがまだ日本では未整備な中で、将来を見据えて、個人の利害を超えた正当な対応をしておかねばならない、という漱石の高い意識が窺える。

その後のジョーンズとのやりとりの中で漱石は、『二百十日』が選ばれたのは、以前「ローマ字ひろめ会」でローマ字訳したものが出版されていて翻訳に便利だからと推察されるが、大した実質のある作物ではないので、まだ『坊っちゃん』の方が翻訳に価するかもしれない、とも述べている。

それでもあえて『二百十日』を選ぶなら、こんな断り書きを入れてほしいとまで付言した。

「作者を代表するに足る好(よ)い作品ではないが、ローマ字で出版されているので、英訳上便宜があるから、著者の意向如何(いかん)にかかわらず、とくにこれを翻訳した」

漱石本人の自作への評価の一端がうかがえる逸話である。漱石先生自身、『坊っちゃん』は好きな作品のひとつだったのだろう。

また後に、『草枕』のドイツ語訳の書物を刊行したいという連絡があった時は、漱石は、

「『草枕』は劣作なるゆえ、御免こうむりたい。『倫敦塔』は『草枕』よりはまだましかも知れず」

と返答している。これも、作者の評価なのか。あるいは、読者たるドイツの人々の趣味嗜好を意識した言い方なのか。

明治40年に春陽堂から刊行された漱石の作品集『鶉籠(うずらかご)』。『二百十日』と『坊っちゃん』と『草枕』の3篇が収められている。写真/神奈川近代文学館所蔵

明治40年に春陽堂から刊行された漱石の作品集『鶉籠(うずらかご)』。『二百十日』と『坊っちゃん』と『草枕』の3篇が収められている。写真/神奈川近代文学館所蔵

漱石の思いとは別に、結局、このときジョーンズの手によって翻訳されたのは『二百十日』だった。後日、雑誌『英語青年』に、対訳・注釈つきの形で発表されることになる。

なお、ジョーンズは大正11年(1922)に東京商科大(現・一橋大学)に転じるまで、小樽高商で英語教師をつとめた。小説『蟹工船』の作者・小林多喜二は、大正10年(1921)に小樽高商に入学しているから、おそらくこのジョーンズ先生に英語を習った。ひょっとすると、英訳の『二百十日』をテキストに使う場面もあっただろうか。

『二百十日』の中で登場人物が、横暴な金持ちどもをいつか打ち倒そうと気炎を上げる姿は、のちのプロレタリア作家に何がしかの刺激を与えたようにも思えるのである。

■今日の漱石「心の言葉」
われわれが世の中に生活している第一の目的は、金も力もない一般の人々に幾分でも安慰を与えるのにあるだろう(『二百十日』より)

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夏目漱石(1867~1916)江戸生まれ。帝国大学文科大学(現・東京大学)英文科卒。英国留学、東京帝大講師を経て、朝日新聞の専属作家に。数々の名作を紡ぐ傍ら、多くの門弟を育てた。代表作『吾輩は猫である』『坊っちやん』『三四郎』『門』『こころ』など。家庭では鏡子夫人との間に7人の子を儲けた。写真/県立神奈川近代文学館所蔵

特別展「100年目に出会う 夏目漱石」
夏目漱石に関する資料を数多く所蔵する県立神奈川近代文学館では、漱石没後100年を記念して文豪の作品世界と生涯を展覧する特別展「100年目に出会う 夏目漱石」を開催しています。会期は2016年5月22日(日)まで、開館時間は9時30分~17時(入館は16時30分まで)、観覧料は700円。

県立神奈川近代文学館
住所/横浜市中区山手町110
TEL/ 045-622-6666
休館/月曜(5月2日は開館)
神奈川近代文学館の公式サイトはこちら

神奈川近代文学館外観_2

横浜港を一望できる緑豊かな「港の見える丘公園」の一画、横浜ベイブリッジを見下ろす高台に立つ神奈川近代文学館。夏目漱石に関する資料を多数所蔵する。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『こぼれ落ちた一球 桑田真澄、明日へのダイビング』(日本テレビ)『石橋を叩いて豹変せよ 川上哲治V9巨人軍は生きている』(NHK出版)など多数。

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