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夏目漱石、泥棒に着物を盗まれ、肌寒い思いで手紙を書く【日めくり漱石/4月13日】

『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『こころ』…数々の名作を世に残した文豪・夏目漱石が没して今年でちょうど100年。漱石は小説、評論、英文学など多分野で活躍する一方、慈愛に富んだ人間味あふれる紳士でもありました。そんな漱石の「日常」を辿りながら文豪の素顔が見える逸話を取り上げ、小説、随筆、日記、書簡などに綴った「心の言葉」とともにお届けします。


■今日の漱石「心の言葉」

「盗難にあったのは何時頃ですか」と巡査は無理なことを聞く。時間がわかる位なら何にも盗まれる必要はないのである(『吾輩は猫である』より)

漱石が愛用していた墨紋付着物。菊の花を菱形に図案化した「菊菱」の家紋が白く染め抜かれている。ひょっとすると、これも泥棒に狙われたものだろうか。写真/県立神奈川近代文学館所蔵

漱石が愛用していた墨紋付着物。菊の花を菱形に図案化した「菊菱」の家紋が白く染め抜かれている。ひょっとすると、これも泥棒に狙われたものだろうか。写真/県立神奈川近代文学館所蔵


【1905年4月13日の漱石】

今から111 年前の今日、明治38年(1905)4月13日の朝、38歳の漱石は東京・千駄木の自宅にいながら、少しばかり肌寒い思いをしていた。数日前に泥棒に入られ、愛用の銘仙の綿入れをはじめ衣類の大半を盗まれてしまい、袷(あわせ)一枚の恰好を余儀なくされていたのである。鏡子の衣類も被害にあっていた。

被害にあって警察に知らせると、やってきた巡査から「じゃあ、明治38年何月何日戸締りをして寝たところが、盗賊がどこそこの雨戸を外してどこそこへ忍び込んで品物を何点盗んでいったから、右告訴に及び候なり、という書面をお出しなさい」と申し渡される。その結果、後日、小説『吾輩は猫である』の中に夫婦間のこんな滑稽な会話が書かれることにもなった。

主人「その風(ふう)はなんだ、なぜ帯をしめて出てこん」

奥さん「これで悪ければ買って下さい、宿場女郎でも何でも盗られりゃ仕方ないじゃありませんか」

主人「帯までとっていったのか。ひどい奴だ。それじゃ帯から書きつけてやろう。帯はどんな帯だ」

奥さん「どんな帯って、そんなに何本もあるもんですか、黒繻子(くろじゅす)と縮緬(ちりめん)の腹合わせの帯です」

主人「黒繻子と縮緬の腹合わせの帯一筋--価はいくら位だ」

奥さん「6円位でしょう」

主人「生意気に高い帯をしめてるな。今度から1円50銭位のにしておけ」

奥さん「そんな帯があるものですか。それだからあなたは不人情だというんです」

主人「まあいいや、それから何だ」

奥さん「糸織の羽織です。あれは叔母さんの形見にもらったんで、同じ糸織でも今の糸織とは違うんです」

主人「そんな講釈は聞かんでもいい。値段はいくらだ」

奥さん「15円」

主人「15円の羽織を着るなんて身分不相応だ」

奥さん「いいじゃありませんか、あなたに買っていただきゃあしまいし」

もちろん、作風に合わせ面白おかしく加工はしているだろうが、漱石と鏡子の対話が基礎になっていることを思い合わせると、読んでいて余計におかしさがこみ上げてくる。

さて、この日の漱石は肌寒さを感じながら、漱石は、前年に東大英文科を卒業した教え子、森巻吉へ手紙を書き出した。先日来、巻吉から「雅号をつけてほしい」という依頼を受けていたため、芳(かんば)しいものは思いつかないものの、ともかく一度連絡をしておこうと考えたのだった。

《君の号の事を考えても中々面白い奴は出ない。君の名は巻吉だから巻という字を二字にしたらよかろうと思う。魔奇。馬奇。麻期。磨綺。等いろいろ出来候(できそうろう)》

漱石は続けて、自分の号についてこう記した。

《僕の号は蒙求(もうきゅう)にもある極(きわ)めて俗な出処でいやになってるが、仕方がないから用いている》

中国唐代の書『蒙求』にも出ている「漱石枕流(そうせきちんりゅう)」の故事からとってつけた自身の号を、本人はさほど気に入ってもいなかったらしいのである。

漱石邸に侵入した泥棒は、1週間ほどして警察に逮捕された。戻ってきた漱石と鏡子の衣類は、この間に綺麗に縫い直しなどされていて、夫婦は「こんな調法な泥棒なら年に1度くらいずつ入ってもらいたいもんだ」などと、呑気に語り合った。

嫌な事件も鷹揚(おうよう)に受け流して生きていく。漱石も鏡子夫人も、さすが、なかなかに懐が深いのである。

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夏目漱石(1867~1916)江戸生まれ。帝国大学文科大学(現・東京大学)英文科卒。英国留学、東京帝大講師を経て、朝日新聞の専属作家に。数々の名作を紡ぐ傍ら、多くの門弟を育てた。代表作『吾輩は猫である』『坊っちやん』『三四郎』『門』『こころ』など。家庭では鏡子夫人との間に7人の子を儲けた。写真/県立神奈川近代文学館所蔵

 
特別展「100年目に出会う 夏目漱石」
夏目漱石に関する資料を数多く所蔵する県立神奈川近代文学館では、漱石没後100年を記念して文豪の作品世界と生涯を展覧する特別展「100年目に出会う 夏目漱石」を開催中。会期は2016年5月22日(日)まで、開館時間は9時30分~17時(入館は16時30分まで)、観覧料は700円。

県立神奈川近代文学館
住所/横浜市中区山手町110
TEL/ 045-622-6666
休館/月曜(5月2日は開館)
神奈川近代文学館の公式サイトはこちら

神奈川近代文学館外観_2

横浜港を一望できる緑豊かな「港の見える丘公園」の一画、横浜ベイブリッジを見下ろす高台に立つ神奈川近代文学館。夏目漱石に関する資料を多数所蔵する。

文/矢島裕紀彦 
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『こぼれ落ちた一球 桑田真澄、明日へのダイビング』(日本テレビ)『石橋を叩いて豹変せよ 川上哲治V9巨人軍は生きている』(NHK出版)など多数。

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