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文/柿川鮎子

南北に細長く、海岸から3000m級の高山もある日本の自然は、実に多様で豊かです。野鳥がたくさんいる豊かな国に生まれた日本人だからこそ、野鳥観察をぜひ楽しんでみようではありませんか。

「あまり知られていませんが、日本は他の国に比べると野鳥の数が多く、日本でしか見ることができない固有種がたくさんいます。また、日本列島は春秋に移動する渡り鳥たらの通り道でもあり、季節に応じて一年中観察を楽しむことができます」と語るのは、都市鳥研究家として首都圏の野鳥の観察を続けてきた唐沢孝一先生(自然観察大学学長、都市鳥研究会顧問)。

「明治神宮や皇居にもいるヤマガラ、あるいは多摩川にもいるセグロセキレイなどは、日本人にとっては見慣れた鳥ですが、外国の人にとってはわざわざ日本に来ないと見られない珍しい鳥なのです」(記事参照『野鳥観察は都心で楽しめる!覚えておきたい3種の野鳥とは』)。

そう思って改めて見ると、何となく素敵に見えてくるから不思議ですね。

今回は、唐沢先生のアドバイスから、野鳥や自然観察がもっと楽しくなるポイントを2つご紹介しましょう。

唐沢孝一先生(自然観察大学学長、都市鳥研究会顧問)

■1:観察を楽しみながら深めてくれる「観察手帖」を使おう

自然観察では、いつ何を見たかを蓄積していくことが重要です。しかし、そのままですと直ぐに忘れてしまいます。そこで、「メモやノートに残しておくことがなにより大切です」とは唐沢孝一先生のアドバイス。

メモやノートはどんなものでもよく、最近ではスマホのメモアプリなどで写真付きのデータメモにする人もいるし、ネット上には無料のフィールドノートのテンプレートもあります。また、4月に発売された『季節の生きもの観察手帖』(全国農村教育協会刊)は、季節ごとの見頃の生物が紹介されており、毎日の観察を記録に残すことができます。

『季節の生きもの観察手帖』
(NPO法人自然観察大学/企画・編集、本体2,500円+税、全国農村教育協会)
http://www.zennokyo.co.jp/book/npo/tcho_0.html

「記録を手帖に残すことにより、あやふやな記憶を確かめることができます。また、貴重なデータとなる場合もありますよ。たとえば今年初めてツバメを見たとします。昨年はいつ見たか、見た日が早いのか遅いのか、観察手帖を見ればわかります。また、何年も継続してメモをとることにより、『そろそろツグミが来る頃かな』と、観察の予定も立てられるようになります」と唐沢先生はアドバイスしてくれました。

観察手帖に残す記録で重要なのは、「いつ(年月日)、どこで、何を見たか」です。鳥の名前だけでなく、どんなところにいたか、何をしていたか、何羽ぐらいいたか、鳴いていたらその鳴き方なども記入します。

観察中は簡単に書き留めておいて、後で「観察手帖」などに記録として残します。唐沢先生によると「観察も記録を残すことも、楽しみながらやることが長続きのコツですね」と教えてくれました。

旧暦を活用した観察手帖の記入で野鳥観察はもっと楽しくなる

■2:二十四節気/七十二候で季節を感じながら観察してみよう

観察記録では日付が重要になりますが、これを日本ならではの四季を分割してつくった暦である二十四節気七十二候を使うことで、より季節や自然を身近に感じられると唐沢先生は提案しています。

四季を6分割したものが二十四節気で、約15日の季節からなります。一年は立春から始まって大寒で終わります。節気をさらに3つに分けたものが七十二候で、5日ほどの季節をあらわします。日本の季節は目まぐるしく変化するので、季節を現すのにとても役立ちます。

しかも、表記が特徴的で、「泉水温(しみず、あたたか)をふくむ」「雉(きじ)始めてなく」など、自然を豊かに表現しています。

二十四節気の立秋(りっしゅう)は8月7日~22日ころを指しますが、7日~11日は七十二候の「涼風(れいふう・りょうふう)至る」。12日~17日は「寒蝉(ひぐらし)なく」、18日~22日は「蒙霧升降(のうむしょうこう)す(ふかききりまとう、とも読む)」と、自然感にあふれた暦となっているのです。

葦原のねぐらに集まったツバメの群れ。子育てを終えたツバメは集団で夜を過ごします。

処暑(8月23日~9月6日ころ)は、夕方になるとツバメの大群がねぐらに集まってくるシーンが見られます。数百羽、時には数万羽の群が次々と多摩川に飛んでくるシーンは圧巻です。

ツバメの集団ねぐらは、中央高速道路の談合坂SAでも見られます。数万羽のツバメが、駐車場のケヤキに舞い降りてきます。

「5万羽、10万羽というツバメの大群をみるだけでも感動するし、なぜ河川敷や高速道路を夜のねぐらにえらんだのか、考えてみるのも楽しいものです」と唐沢先生。

ややもすると季節感を失いがちな都会生活ですが、二十四節気七十二候を取り入れることにより、自然の息吹を肌で感じられるライフスタイルに一変させられるのではないでしょうか。

*  *  *

以上、唐沢先生に野鳥や自然観察がもっと楽しくなるポイントを2つ御指南いただきました。

唐沢孝一先生は長年、東京など都心部にいる野鳥の研究を行ってきましたが、自然観察の案内人としても大人気で、現在、NPO法人自然観察大学や品川自然観察会、目黒区の木鳥会などが主催する観察会の講師として自然ガイドに活躍中です。

明治神宮や皇居東御苑、日比谷公園など都心の観察会では、鳥の特徴や生態はもとより、鳥の暮らす環境、あるいは植物や昆虫、クモやカエルなどあらゆる生物にも目を配ります。さらに興味深いのは、江戸東京の歴史や文化と関連させての都会ならではの自然観察は、分かりやすく定評があります。

「みなさん、メジロはね、目は白くないんです。目の周りが白いんですよ」という独特の語り口、漫談を楽しむかのように解説に耳を傾けているうちに、自然の奥深さ、命の尊さを改めて感じさせられます。

野鳥観察をはじめようと考えた時、こうした観察会に参加して、プロの手ほどきを受けるのもひとつの方法かもしれません。

指南役/唐沢孝一
研究者。1943年群馬県生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)理学部卒業。都立高校などの生物教師をへて、現在は執筆や講演、自然観察など多方面にわたって活動している。都市鳥研究会顧問、NPO法人自然観察大学学長。シジュウカラの研究で文部大臣奨励賞、モズの生態研究で日本鳥学会奨学賞。2003年市川市民文化賞(スウェーデン賞)を受賞。都市鳥に関する著作多数。リンク:「カラサワールド」(http://www1.odn.ne.jp/~aab87210/)

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

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