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文/小林弘幸

「人生100年時代」に向け、ビジネスパーソンの健康への関心が急速に高まっています。しかし、医療や健康に関する情報は玉石混淆。例えば、朝食を食べる、食べない。炭水化物を抜く、抜かない。まったく正反対の行動にもかかわらず、どちらも医者たちが正解を主張し合っています。なかなか医者に相談できない多忙な人は、どうしたらいいのでしょうか? 働き盛りのビジネスパーソンから寄せられた相談に対する「小林式処方箋」は、誰もが簡単に実行できるものばかり。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説します。

長時間労働が続く時の休息は、

A.勤務中こまめに

B.帰宅後ゆっくりと

小学生の授業が45分間である理由

普通、休息と聞くと、「働き終えた後にとるもの」と思っている人が多いようですが、実はそれをやっていては、いつまで経っても十分な休息をとれた気になりません。

例えば、残業して夜9時まで働いていたとしましょう。疲労困憊です。家に着くなり、カバンを放り投げ、ソファーにドカッと座り込み、テレビのスイッチを入れる。

「ああ疲れた」とため息をついてダラダラ過ごしていれば、もう11時近くになっているはずです。明日のことを考えれば、入浴を済ませ、もう寝なければいけません。

この日常で効果的な休息をとれていると思いますか?

「ああ、もうこんな時間だ。明日も仕事だから寝ないと……」

と焦るのがオチで、明日のことを考えたら、気が重くなるかもしれません。家に帰ってからの2時間、あなたは無為に過ごしてしまったのです。

ではどうしたら、上手に休息をとることができるのでしょうか。それは「こまめにとる」のが労働効率を上げるためにもベターな方策です。

具体的に私は1時間を「45分間の集中+15分間の休憩」というワンセットで働くことをお勧めしています。

医学的にも、生理学的にも、人間の集中力の持続時間は90分間が限界だと言われています。大学の講義が90分間で区切られているのは、そうした合理的な理由からです。

にもかかわらず、休憩もとらずに仕事を続けていれば、当然、時間の経過とともにパフォーマンスはダダ下がりです。

あなたは能力的な問題でダラダラ仕事していたのではなく、むしろがんばって仕事しようとしすぎた結果、ダラダラとした仕事になってしまっているのです。

とはいえ、90分間の集中とて容易なことではありません。

学生時代、集中が続かず、講義中にウトウトしてしまったり、最近ならこっそりスマホをいじったりなんてことがあるでしょう。

歳を重ねればなおさら、特に30歳を超えると、自律神経の働きが相対的に落ちてきますから、90分間の集中は至難のワザです。

そこで45分間。これなら誰でも集中できます。小学生の授業時間も45分間。その代わりあれもこれもと欲張らずに、「これだけはやってしまう」と決め、そこに注力します。

そして次は15分間の休憩。これがポイントです。

この15分間で、それまでの45分間を振り返ったり、冷静に確認したりするのもいいでしょう。次の45分間のための準備時間に充ててもいい。45分間緊張していたはずですから、あくまでリラックスしながら、「休憩」に軸足を置いての準備です。15分間休むことで、45分間の疲労を次に持ち越しません。

この15分間は「調整弁」の役割を果たします。いわゆるバッファ(緩衝体)ですね。作業の進捗状況に応じて調節できますので、60分間というひとかたまりの中で、仕事が延びて45分間を超えてしまったとしても、無理なく消化することができます。

短く区切ればゾーンに入りやすい

「ゾーンに入る」という言い方があります。

最近は、主にスポーツ関連のニュースで頻繁に耳にするようになりました。

「打撃の神様」の異名を持つプロ野球の名選手・川上哲治さん(1920〜2013)が、全盛期、「ボールが止まって見える」と口にしたのは有名な話ですね。

福岡ソフトバンクホークスで活躍する内川聖一選手は、初めて首位打者をとった2008年、ある打席で、「(投手の投げたボールが)目の前でサッカーボールぐらいに大きく見えた」と、のちに語っています。

どちらも、集中力が極限まで高まった、いわゆる「ゾーンに入った状態」だったと言えるでしょう。

私はスポーツドクターとして、多くのアスリートと関わってきましたが、ゾーンに入っている状態は、交感神経と副交感神経がバランス良く、しかもどちらも高い状態に維持されていることが実証されています。

例えばプロゴルファーの横田真一さんとは、長年、ゴルフと自律神経の関係を検証しているのですが、そうした中で挙がってきたのが「朝のおしゃべり」の弊害でした。ラウンド前におしゃべりで交感神経を消耗した結果、プレーにも悪影響を与えていたのです。

逆に言えば、気が散るものをいかに周囲から取り除くことができるか。その時間も考慮するとなると、やはり90分間よりも45分間で区切るやり方がベターだと言えます。

答え   A.勤務中こまめに

1時間を「45分間の集中+15分間の休憩」というワンセットにして働くことで、45分間働いた疲労を次に持ち越さない。また、45分間の集中が常に保たれる状態になるので、仕事のパフォーマンスも上がる。「ゾーンに入った状態」を繰り返すことも可能になる。

『不摂生でも病気にならない人の習慣』

小林弘幸 著

小学館
定価 924 円(本体840 円 + 税)
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詳細はこちら

文/小林弘幸
順天堂大学医学部教授。スポーツ庁参与。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。また、日本で初めて便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」でもある。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説した『不摂生でも病気にならない人の習慣』(小学館)が好評発売中。

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