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徳川慶喜やペリー提督も愛した伝説の薬酒「保命酒」を飲んでみた

文/鈴木拓也

徳川家の歴代将軍で、最も長命を誇った15代慶喜(享年77歳)。彼が晩年愛飲した酒「保命酒」(ほうめいしゅ)をご存知だろうか? 焼酎の1種だが、高麗人参や枸杞子など16種類もの薬草が漬け込まれて造られている点で、ふつうの焼酎と大きく異なる。

この酒を発案したのは、中村吉兵衛という江戸時代初期の人物。彼は大坂の漢方医の家に生まれたため、舶来の薬草の買い付けに、しばしば海路で長崎まで出かけた。その途次に立ち寄った福山藩の良港鞆の浦(とものうら)で美味な地酒があることを知り、持っていた薬草を加えれば、薬効のある美酒になるやと、いろいろ試して完成したのが保命酒のはじまりである。

保命酒は、福山の人々から高い評価を得て、後に福山藩の御用酒となり、諸大名への献上品に使われるなど、単なる薬酒でなく格上の高級酒として扱われるようになった。そして江戸時代も後期を過ぎると、頼山陽、ペリー提督、そして徳川慶喜といった歴史的著名人に愛好されるなど、名声をほしいままにした。

しかし、明治維新という社会的大変動は、一子相伝で保命酒を造り続けてきた中村家にとって凶と出る。藩の後ろ盾を失い、時代の流れに翻弄されて、中村家はついに没落してしまう。保命酒の製法も断絶するかに思われたが、ごく少数の蔵元がこの銘酒の命脈を保ち、360年の伝統を今につないでいる。その1つが岡本亀太郎本店だ。

同店の初代当主・岡本亀太郎は、中村家から酒造の道具を全て譲り受け、保命酒造りに邁進したというから、保命酒の実質的な継承者といえそうだ。福山市の重要文化財に指定された、風格ある直営店舗の軒をくぐると、「保命酒」と彫られた看板があるが、これも中村家が使っていたものだという。

実際に取り寄せて飲んでみると、その味わいは、これまで呑んだどの酒とも違う独特なものだ。とろりとした甘みが舌に染みわたるようで、美味である。「薬酒」から連想されるような薬っぽさはなく、またアルコール度数は13~14度なので悪酔いはしない。

ストレートやオンザロックだけでなく、カクテル、アイスクリーム、葛湯など様々に応用がきくという。同店の公式サイトにはレシピ集(http://www.honke-houmeishu.com/recipe/index.html)も載っている。

この保命酒のベースになるのは、味醂なのだそうだ。岡本亀太郎本店では、味醂造りにおよそ3か月かけ、そして秘伝の薬味を1~2か月かけてじっくり漬け込む。この手法は江戸時代から変わらず、そしてこれからも「変わらない」ことが大切だと、工場長の沖浦孝弘さんは語る。

品格ある風味と薬効については、過去数世紀にわたるお歴々のお墨付き。健康に気遣う方なら特におすすめの逸品である。

【岡本亀太郎本店】
住所:広島県福山市鞆町鞆927番地の1
電話:084-982-2126
営業時間:9:00~17:00(年中無休)
公式サイト:http://www.honke-houmeishu.com

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

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