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文/鈴木拓也

一口に徳川家と言っても、じつは8家あることをご存知だろうか。まず、将軍家の流れをくむ序列1位の徳川宗家があり、次いで序列2位の徳川慶喜家、そして御三家(尾張、紀伊、水戸)、三卿(田安、一橋、清水)と続く。

今回紹介する『徳川家に伝わる徳川四百年の裏養生訓』(小学館)の著者は、八代将軍・徳川吉宗直系の、田安徳川家当主の徳川宗英氏。月刊『本の窓』に連載された「長生き将軍 短命将軍」を改題・改稿したものである。

本書のメインテーマは、江戸幕府のトップたる代々の征夷大将軍が、いかに自身の健康を管理していたか。粗食と鍛錬で天寿を全うした家康をはじめ、不老不死の薬を求めた綱吉、質素倹約を励行しつつ健康に気を配った吉宗、旺盛な肉食で歴代将軍最長寿となった慶喜など、各人各様の養生法が解説されている。

意外にも代々将軍のなかで、還暦を過ぎて生き永らえたのはたったの6人。彼らに共通しているのは、自身の健康を気遣うライフスタイルを送っていた点だ。

例えば家康は、天下人となった後も麦飯と味噌を中心とした粗食に徹し、鷹狩りや剣術などで身体を鍛錬し、自分で医薬を調合していたという。今風にいえば、立派な「健康オタク」である。

綱吉は、オランダ商館長付きの医師が拝謁したときに、不老長寿の妙薬が欧州にあるかと質問攻めにするなど、薬で手軽に長寿を実現できないか模索していた。もちろん、そんな便利な薬は見つからないのだが、「日本鍼灸中興の祖」とされる鍼師・杉山和一を召し抱え、暇さえあれば鍼や按摩をほどこしてもらうことで64歳まで生きた。

吉宗は、若い頃は大猪を鉄砲の台尻で殴り倒すほどの強健で、長じて医学・薬学に関心を深め、尊崇する家康にならい自ら調剤していた。食事は、朝は焼いた玄米飯に唐辛子味噌、夕は一汁一菜と酒少々が基本。ただし180cmの体躯ではそれだけでもたず、旬のものをいろいろ食べていたという。また、城内の庭での毎朝の散策も、健康維持にあずかったようだ。

禁門の変で馬を駆って大活躍した慶喜は、「豚一殿」と綽名がつくほどの豚肉好き。また、鳥羽伏見の戦いに負けて大坂城を脱出し、江戸に着いたときに「鰻の蒲焼を買ってこい」と命ずるなど、動物性食品を特に好んだが、著者はこれが超人的なスタミナの素だとしている。そして、30歳過ぎで隠居生活を強いられたことで、釣りや自転車など多くの趣味に開眼したことが、長生きの秘訣であったとも。

こうしてみると、自分にあった食生活とエクササイズが長命の礎であるように見えるが、著者が「大往生のヒント」として指摘するのは、むしろ別の側面。一つは、生きがいになる大きな目標をもつこと、そしてピンチの時もよく食べよく眠ること、頭と手先をよく使うことだという。家康はこれらすべてを実践することで、生涯現役、歴代2位の長命を誇り、著者は「やっぱり家康はすごかった」と評価する。

本書は、単に将軍たちの養生にまつわるエピソードを語るだけでなく、「キレる老人は昔からいた」、「篤姫を救ったペット・セラピー」など、江戸時代の生活史や裏面史にも紙面を割き、サライ世代が関心を持てるトピックが満載の構成となっている。320ページと、結構なボリュームの本だが、面白くてあっという間に読み終えてしまうだろう。

【今日の健康に良い1冊】
『徳川家に伝わる徳川四百年の裏養生訓』
(徳川宗英著、本体1,700円+税、小学館)

文/鈴木拓也
2016年に札幌の翻訳会社役員を退任後、函館へ移住しフリーライター兼翻訳者となる。江戸時代の随筆と現代ミステリ小説をこよなく愛する、健康オタクにして旅好き。

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