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若者の早期退職の要因には「ある現象」があるという。「ある現象」とは一体何か?
マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」から、早期退職の要因である「ある現象」を知り、対処しよう。

* * *

新入社員の8割を襲う「ある現象」、その深刻さと対処方法

若者の早期退職を促している大きな要因として、「ある現象」の存在が指摘されています。「リアリティ・ショック」と呼ばれるもので、8割の新入社員が経験しているといいます。

モチベーションの低下を引き起こすこの現象の実態と、対処方法を紹介します。

「こんなはずじゃなかった」堪え難いギャップ

パーソル総合研究所が全国の18歳から30歳の若者を対象に行なったアンケート調査[1]によると、入社後、なんらかの形で「リアリティ・ショック」を受けた若者の割合は76.6%にのぼっています。

リアリティ・ショックとは、入社前に抱いていたイメージと実際に入社してからの現実の間に大きなギャップを感じ、働くことや職場に対してネガティブな感情を抱いてしまうというものです。

その内容は、「報酬・昇進」「仕事のやりがい」「人間関係」「働きやすさ」といったもので、「こんなはずじゃなかった」と感じ、モチベーションの低下、欠勤の増加、果ては早期離職にも繋がる深刻な問題として捉えられています。

もちろん、就職をすれば学生の時と生活は大きく変わりますし、毎日のように未経験のことに追われるわけですから、多少のギャップは存在するのが当然です。

しかし、堪え難いレベルに達する新入社員もいるとは、何がそんなに「違った」というのでしょうか。

この調査で多く得られた回答内容としては、

・給料、報酬の高さ      37.4%
・昇進、昇格のスピード    31.9%
・仕事で与えられる裁量の程度 31.5%
・仕事から得られる達成感   31.3%
・働きやすさ(残業、休日など) 30.5%
・仕事のやりがい       30.0%

に対して、事前イメージより「悪かった」というものです。

また、このような不満を直接上司の前では口にしない新入社員が多い可能性を考慮しなければなりません。

外からは見えにくいこうした不満をマネジメント側が引き出して、モチベーションを下げないように対処する必要があります。

リアリティ・ショックの種類と深刻さ

さらに厄介なことには、「こんなに厳しいとは思わなかった」という方向性だけではないということです。

「楽観的・非現実的な、キラキラした期待と厳しい現実のギャップ」もあれば、逆に自分の力を過信するあまり「ぬるくてつまらない」と感じるギャップも存在しているのです。

これが個人によって違うのですから、一体どうしろというのか、ますます対処に困ります。

しかしこれを、「わがまま」として放置しておくわけにはいきません。

ソニー生命が社会人1、2年目の若者を対象にした調査[2]があります。

その中で、驚くべき回答を引き出した設問があるのです。

「最初に就職する(した)会社で、どのくらいの間、働いていたいか」というものです。

これに対し、「すでに辞めたい」と答えた若者が、社会人1年目では9.0%なのに対し、2年目になると27.4%と、3倍になっているのです。

1年働いてみて、やっぱり「違った」から辞めたい、辞めるという傾向が、ここに見事に現れていると言えるでしょう。

ところで、筆者の会社員時代に、「配属後2週間で」退職した新入社員がいました。

「やりたいことと違っていたから」という理由です。

しかし、これなら「お互いのため」だとも思えます。傷が浅いからです。

研修を含めても数か月のことですから、本人も若いうちに次の職場を探せますし、会社としても、これだけ早い段階でここまでハッキリ言ってくれれば、逆に楽な部分もあります。

しかし、1年間仕事を教えた結果が「すでに辞めたい」というのは厳しいものがあります。

それまでの教育にかけた労力を考えると、マネジメントとしては肩を落としてしまうことでしょう。

「もう少し我慢すればいいことがあるよ」と声をかけたところで、通用しませんし、時すでに遅し、なのです。

対処方法はあるのか

リアリティ・ショックについては、以前から研究があります。

長く研究に携わっている甲南大学の尾形真実哉教授によると、リアリティ・ショックにはネガティブな効果だけでなく、ポジティブな効果もあるというのです[3]。

個人の性格や、ギャップの内容で変わってくる部分もあるでしょうが、ポジティブな効果を引き出せれば、モチベーションの低下や早期退職を食い止められる可能性が出てきます。

尾形教授によると、リアリティ・ショックの効果は4種類で、ネガティブなものとしては、

1)リアリティ・ショックを自分では克服できないものと感じ、自己否定、無力感に陥る。
2)リアリティ・ショックを会社や上司のせいにして、他者に対する不信感を募らせてしまう。

という、ここまで紹介してきた内容に当てはまるものです。

しかし、ポジティブな効果も生まれるというのです。それは、

3)リアリティ・ショックを自ら克服しようと考え、学習意欲に繋がる。
4)上司や同僚、あるいは他のところにアクセスし、情報を集めることで克服しようとする。

リアリティ・ショックの根本理由のひとつは「事前の情報不足」と、そこからくる「認識の甘さ」です。

ネガティブ、ポジティブのどちらに向くかは就職前の準備や、そのために何をしてきたかにもよります。

ただ、8割が経験するというのですから、リアリティ・ショックはどの新入社員にも起きるという前提で考えるのが良いでしょう。

そして、どのようなギャップを感じているのか、そしてどのような行動を取ろうとしているのかを早期に発見することが重要です。

適切な時期に面談やアンケートで調べ、なるべくポジティブな効果に結びつけるよう、方向づけする必要があります。

必要な声かけと思考転換の促進

なお、先ほどのソニー生命の調査では、社会人1年・2年目の若者のやる気をアップさせる言葉トップ10が紹介されていますので、紹介します。

・「君がいて助かった、ありがとう」43.0%
・「本当によく頑張った」30.7%
・「何でも相談してね」25.8%
・「一緒に乗り越えよう」24.8%
・「よくそこまでできたね」17.5%
・「次も君に任せると決めた」14.7%
・「失敗なんか気にせず前進だ」14.6%
・「失敗は成功のもとだよ」13.8%
・「次は必ず成功するよ」11.4%
・「ノウハウやコツを教えるよ」11.1%

というものです。

もちろん、これを知ったからといってマネジメントがマニュアル通りの対応をしてはならないのは当然のことで、これはあくまで参考にしていただきたい、という程度のものです。

ただ、ここにはヒントがあります。

リアリティ・ショックをいかにポジティブなものにするか、というところです。

短期的にはまず「褒められた(のでやりがいを感じた)」ということもそうですが、「コツを教えてくれた(ので勉強になった、成長した)」というところが大切でしょう。

リアリティ・ショックのポジティブ効果である「学習意欲」に導くのです。
また、「失敗したくない」「無難でありたい」意識が強い世代ですから、失敗に関してはより強いフォローが必要でしょう。

リアリティ・ショックのポジティブ効果「情報収集」の手助けをして、「自分だけじゃないんだ」と感じさせれば、無力感を与えずに済むでしょう。

また、尾形教授によれば、リアリティ・ショックを克服することは、長期的にも役に立つといいます。

短期的な成果としては、社会人としての入り口である「職場と組織への適応力」がつくことです。
そして、「どのように仕事をしていくのか(=ジョブ・デザイン)」を自ら考え出すことで、本人が納得できる働き方を見つけられるとも考えられます。

成長実感にも繋がるでしょう。

そして、長期的には「キャリア適応力」の材料になる、といいます。

目の前の単独の「ジョブ」ではなく、複雑な経験、それを克服したという自信が社会人生活を長く見たときの「どうキャリアを積んでいくか(=キャリア・デザイン)」に繋がることでしょう。

長期的な目線で接することが必要です。

ちなみに、「やる気をなくす言葉トップ10」も挙げられています。

・「この仕事向いてないんじゃない?」31.0%
・「やる気ある?」25.5%
・「ゆとり世代だなあ」23.7%
・「私が若いころは○○だったのに」22.9%
・「そんなことは常識でしょ?」18.2%
・「学生気分が抜けてないんじゃない?」18.0%
・「前にも言ったと思うんだけど?」14.0%
・「言っている意味わかってる?」13.5%
・「ちゃんと考えたの?」13.3%
・「女(男)だからしょうがないね」12.9%

というものです。

総じて、何事も「若者のせい」にしている気持ちが滲み出ているように感じる言葉です。

リアリティ・ショックがベースにある上にこんなことを言われたら、まさにネガティブ効果の「自己無力感」「他者不信」に繋がることは言うまでもありません。
リアリティ・ショックを彼らだけのものと考えるのではなく、マネジメント自身も、「自分が入社後すぐにそんな気持ちに襲われたらどうだろう」という「自分ごと」として考えるこ必要があります。

マネジメント側にこうした心がけないと、うっかり発した一言でやる気を削ぎ、取り返しのつかないことになってしまうのです。

【参照】
[1]パーソル総合研究所×CAMP「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」
https://rc.persol-group.co.jp/research/activity/files/c6bd0626d11bb6426ca23ad9f6f9724952405458.pdf
[2]ソニー生命保険株式会社「社会人1年目と2年目の意識調査2019」
https://www.sonylife.co.jp/company/news/2019/nr_190418.html
[3]尾形真実哉「新人の組織適応課題-リアリティ・ショックの多様性と対処行動に関する定性的分析-」
http://www.jahrd.jp/files/essay_files/129/0.pdf

* * *

いかがだっただろうか。こんなはずじゃなかった、と感じる「リアリティ・ショック」には、ポジティブな方向に導くように対処する、ということがおわかりいただけただろうか。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

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